エピソード 8
最初は、どこか気まずい雰囲気の中でのラーメンだなと思ったが、鈴姉のお父さんだけはニコニコとしていた。外国人のグループは、ひたすらそれぞれの外国語で静かに話している。
「いいねえ。若いって……」
「そうよねえ。ウチなんてもう3歳も周りより年上なのよ」
鈴姉のお父さんの独り言に、中国人の女性が愛想よく相槌を打っていた。
「おお、そうかい。ぼくなんて20年以上も年上だよ。それよりも、あんた日本語上手いねえ」
「そりゃ、そうよ。……ウチの学校は日本語科目が必須で、日本語のことになると、先生たちがとても怖いからねえ。はあ、三歳年上が小さくなってきたわね」
「へえ、なんて名前の学校なの?」
「イール大学付属日本語高等学校よ」
「ええー?? 私のこれから行く大学よ。その高校が付属している大学なの。ィール大学ともいわれるけどね。小さなィよ。発音難しいでしょ?」
鈴姉のお父さんが学校の話を中国人と話している間に、鈴姉も興味を持ち始めた。だけど、き、奇遇だ。鈴姉が今日から留学するんだ。そのナントカ大学。あ、ィール大学? イール大学?
「あら、きっ遇ーーー。私は賽男よ。男みたいな名前でしょ。だから、みんなはサイって呼んでくれているの。あ、先輩の名前は?」
「ふっふっふー。いきなり初対面年下先輩になったわね。私の名前は明石 鈴樹」
「へえ、それで鈴姉ねえ。そっちの不良みたいな男の子は?」
「え? 光太郎。梶野 光太郎」
「え? 梶野って、あの茨城県つくば市の山で行方不明になった政府高官の梶野 伸次郎の息子さん?」
「え? どうしてそうれを?」
「学校の先生の一人が詳しいの。あそこに、星降埜神社があるっていわれているの。私は、モーガンよ」
外国人グループの中のもう一人。さっき、ネギ味噌ラーメンを取り違えそうになった可愛らしい女性だ。




