第4話 新訳鶴の恩返し
時間になるとブザーが鳴る。
開演前まであちこちで聞こえていた話し声も、ブザーが鳴ると静まった。
こうして経徳寺高校演劇部の第二回の公演が始まったのである。
ナレ「鶴の恩返し。都内のマンションに住む若者が外に出ると、一羽の鶴がロープに絡まって暴れていた」
「待ってろ、今助けてやる」と若者が言う。
ナレ「若者が絡まっていたロープを解くと、鶴は若者を見てから空に飛び立っていった」
「気をつけろよ~」と若者が言う。
ナレ「数日後、若者のマンションにドアのチャイムが鳴る。若者がドアを開けると、鶴がいた」
「なんで鶴が!」
「私はこの前助けていただいた鶴です。お礼にやってまいりました」と鶴が言う。
「喋れるんかい」と若者は驚いた。
「はい。私はすごいので」
「そんなにすごいのがなんでロープに絡まってたの?」
「あれは……たまたまです」
「たまたまなんだ」
「では失礼します」と言って、鶴は家に入ってくる。
「えっ?」
「だからお礼をしにきたと」そう言うと冷蔵庫を開け、夕食にと思っていた鰯を丸のみ。
「勝手に食べるんかい」
「お腹が空いていたので」と言うと、鶴は奥の部屋に行く。
そして「絶対にこの部屋を開けないで下さい。絶対ですよ」と鶴が言う。
ナレ「若者は「いよいよ恩返しが始まる」と期待し、そわそわしながら織物を作っているのを待つ。そして数時間後」
「失敗しました」とぐちゃぐちゃなセーターを持っている鶴。
「失敗かよ!」
会場から笑い声がする。
「今度こそは。そして絶対開けないで下さい」と再び言う。
「また失敗しました」と帽子みたいなものを持って鶴が言う。
「今度こそ。あと絶対に開けないで下さい」
ナレ「若者はもはやフリとしか思えず、部屋を開けた。そこでは、鶴がスマホを片手に毛糸で靴下を作っていた」
「開けましたね」
「自分の羽でもないのかよ」
また会場から笑い声が。
「こうなったら責任取って結婚してください」
「なんでだよ」
「だって部屋開けたじゃないですか」
「あんなの開けろって言ってるもんだろう」
ナレ「若者は苦笑するしかなかった。こうして若者と鶴は結婚をした。何もできない鶴だったが、そうめんを茹でたときだけは喉越しがツルツルの絶品の味であった。おしまい」
幕が下りると、会場からはどこか遠慮がちな拍手が起こった。
ナレ「鶴役、杏奈。若者役、康太でした」
2人が紹介されるとお辞儀をする。
会場から、また微妙な拍手が起きて幕が閉じる。
裏方の京志郎は少し落ち込んだ。
こうして第二回公演が終わったのである。




