第12話 目玉焼き論争(オリジナル脚本)
次は11月の定期公演なのだが、問題があった。
11月は宿泊研修と体育祭があるので、準備の時間が少ない。
そこで文化祭と同じ形式をとることにした。
会話劇のみで、道具はほとんど使わない。
少ない日数で、セリフを覚えることと立ち稽古だけに集中することになる。
京志郎が2日で脚本を作り、みんなで微調整をして、11月の定期公演に臨んだ。
時間になるとブザーが鳴る。
ブザーの音とともに会場が静かになる。
こうして経徳寺高校演劇部の11月の定期公演が始まったのである。
ナレ「誰でも気軽に作れる料理でありながら、いまだ議論が続く料理がある。目玉焼きである。この卵料理の究極の形とは何か。今ここで熱い議論が行われる」
「目玉焼きでも作ろうかな」と杏奈。
「いいねえ」と康太。
「康太目玉焼きにかける醤油を用意しておいて」と杏奈。
「えっ?今なんて」と康太。
「醤油を用意しておいて」と杏奈。
「目玉焼きにはソースでしょ」と康太。
ナレ「2人の議論に4人が何事かと集まってきた」
「醤油」と杏奈。
「ソース」と康太。
「2人とも喧嘩はやめて。目玉焼きには塩コショウです」とまひな。
「いや、まひな。マヨネーズに決まっている」と黒逸。
「あのケチャップじゃないんですか」とさおり。
「ポン酢だとさっぱりして美味しいよ」と信也。
「なんでみんなバラバラなのよ。アンケートでは醤油が常に1位なのに」と杏奈。
「ソースは中濃派とウスター派に分かれているから不利だと思う」と康太。
「それなら、塩派とコショウ派にわかれているのも」とまひな。
「マヨネーズで食べてみろよ。飛ぶぞ」と黒逸。
「世界的には1番人気はケチャップなんです」とさおり。
「ポン酢だとさっぱりして美味しいよ」と信也。
ナレ「6人はそれぞれ譲らない。ちなみにアンケートだと5位ぐらいに何もかけない派というのもいます」
「みんなにわからせたい。固い黄身に醤油の美味しさが至高だということを」と杏奈。
「杏奈。卵は半熟が基本でしょ」とまひな。
「男はだまって両面焼き」と康太。
ナレ「どうやら焼き方でも、もめはじめたみたいです。この議論は2時間経っても決着がつきません。僕、この後予定があるんだけど」
客席から笑い声がする。
「そういえば赤玉と白玉ってなにが違うんだろ」と康太。
「あれは鶏の品種の違いで、殻の色が変わるんです」とさおり。
ナレ「もはや目玉焼きに何をかけるかから話題が逸れていますね。ちなみに僕はマーマレードジャム派なんですけどね」
「えっ!」と一同が言う。
「ありえない」と杏奈。
「目玉焼きにジャムって」と康太。
「はじめて聞いた」とまひな。
「味の想像がつかない」と黒逸。
「目玉焼きへの冒涜です」とさおり。
「ポン酢だと……さっぱりして美味しいよ」と信也。
「ちょっとまって今、目玉焼き作るから。マーマレードジャムで食べてみようじゃない」と杏奈。
「甘いけど……」と杏奈。
「あれれ」と康太。
「なんで」とまひな。
「むむむ」と黒逸。
「考えてみればトマトも甘酸っぱいし……」とさおり。
「ポン酢だとさっぱりして……同じ柑橘類だからかな」と信也
ナレ「みんな、意外と悪くないという反応だ。だから言ったでしょう」
「試してみようかな」と客席から声が聞こえる。
ナレ「では次の議題です。魚のキスは、なぜ天ぷらでしか見かけないのか」
「もう帰る時間だ」と一同。
「でも気になる~」とまひな。
ナレ「おしまい」
客席から拍手が起こる。
京志郎も満足げだ。
ナレ「出演は経徳寺高校演劇部でした」
みんなでお辞儀をして幕が閉じた。
「ねえ帰りにマーマレードジャム買っていこうよ」
「いやジャムの味は誇張してるだけだって」
「そういえばキスって天ぷらでしか見ないよね」
客席からいろんな意見が飛び交っている。
舞台の終了後にこれだけ会話があるなら成功だ。
次回は12月の年末公演。
いつもよりも長めにやりたい。




