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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
神の世界

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老いぼれ

 お菓子を準備して、ヴェルディーゼとユリが訪れた場所。

 そこは、広大な自然が広がる世界にぽつんと建てられた、木造の小さな一軒家だった。

 ヴェルディーゼは興味深そうに周囲を眺めながらユリの手を引き、一軒家の扉をノックする。


「ガルフィールド、いる?」

「おうよ。待ってたぜ、後輩。挨拶が遅かったじゃァねェか」

「……僕に、君にわざわざ挨拶に行く義理があるって? そもそも僕がこの地位に君臨することになったのも、全部君のせいで、僕は巻き込まれただけ」

「悪い気はしねェだろ? こんな別嬪さんとも出会えたんだからよ」


 ガルフィールド、という名の人物がユリに視線を向けたので、ヴェルディーゼはユリを庇うようにその前に立った。

 それにユリは苦笑いすると、くいっとヴェルディーゼの袖を引いて前に出て、丁寧にお辞儀をする。


「お初にお目にかかります、ガルフィールド様。私、主様の眷属のユリと申します。以後、お見知りおきくださいませ」

「ユリ、喋らなくていい、いるだけでいいから……」

「……挨拶もしないのは流石に無礼すぎませんか……」


 ヴェルディーゼの要求にユリは呆れた顔でそう返し、咳払いをした。

 そして、ヴェルディーゼに向けて何かを要求するように手を差し出すと、ヴェルディーゼは渋々といった様子で贈り物であるユリのお手製お菓子を出してくれる。


「ささやかながら、贈り物をご用意させていただきました。お受け取りください」

「おう。……ふむ、これは菓子か。どこのだ?」

「ユリが作ったに決まってるでしょ。ユリが作るお菓子より美味しいものとか無いから」


 ヴェルディーゼがユリを抱き締めながらそう言い、笑みを浮かべた。

 本当に、ユリが作るお菓子はとても美味しいから、それに勝るものなどあるはずがないと思っていそうなヴェルディーゼにユリは困った表情を浮かべる。

 そうしている内に、ガルフィールドは興味深そうに包みを見た後、しっかりと玄関の扉を開けて家の中へと二人を招き入れた。


「ほら、入れ。ちと狭いが、勘弁してくれよ。俺様は茶ぁ淹れてくるから、先座っててくれ。あっちだ」

「ん。ユリ、行こう。手は繋いでいようね」


 甘ったるい声でヴェルディーゼに言われて、ユリはじとりと不満そうな目をヴェルディーゼに向けた。

 ガルフィールドに万が一にも恋愛対象として見られないようにとか、色々考えていそうだがその対策が子どもを甘やかすような態度で接するということには不満を抱かずにはいられなかった。

 独占欲を抱いてくれることそのものは、ユリとしては嬉しいのだが。


「……主様、主様。私、子どもじゃないんですからね」

「知ってる」


 短く返事をするヴェルディーゼにユリは息を吐き出すと、お茶を淹れているガルフィールドへと視線を向けた。

 彼は巨躯の大男で、見てくれだけならヴェルディーゼよりもずっと強そうだ。

 服越しでもわかる筋肉質な身体に、ユリは格好いいとは思いつつ、若干の苦手意識も抱く。

 オタクとして、ああいう強者感のある外見は好きではあるが、現実となるとああいった人とはあまり接したことが無いユリは、傍にいられると落ち着いてはいられなかった。

 見慣れていないが故のことなので、きっとその内慣れるだろうが。


 ユリがどうにか苦手意識を解消しようと四苦八苦していると、ガルフィールドがこちら側に近付いてきた。

 その手元には可愛らしい柄のカップがあり、紅茶の香りがそこから漂ってくる。


「待たせたな。茶は淹れたから、これ飲んでもうちっと待っててくれ。お菓子を皿に盛ってくる。一緒に食いながら話をしよう」

「ご丁寧にありがとうございます。あの、手伝いま――……、……主様」


 手伝います、と言おうとしたユリの袖を、ヴェルディーゼがぐいっと引っ張った。

 少し腰を上げていたユリは、引っ張られたことでソファーに引き戻されつつ、少し低くなった声でヴェルディーゼを呼ぶ。

 その瞳には、若干の怒りが籠もっていた。

 そもそも、ヴェルディーゼがまともな対応をしないから、ユリが頑張っているのである。

 だというのに、それすら妨害されるのは堪らないというものだ。


「はっはっはっ! 若いってのはいいものだなァ。どうせ手伝いは断るつもりだったんだ、今は見逃してやってくれ」

「……お、お見苦しいところをお見せしました……えっと、じゃあ……家主さんがそう言うなら」


 はっと肩を揺らしたユリが、ガルフィールドの言葉に頷き、おずおずと座り直した。

 ヴェルディーゼが勝ち誇った顔をしているので、ユリはその足を強めに蹴り飛ばしておく。


「……ユリ、僕への遠慮がどんどん無くなってるよね。僕、君の主なのに」

「ええそうですね、主様が日々自ら威厳を削ぎ落としているので。別にそこ含めて愛おしいからいいんですけど」

「ユリは可愛いね……」


 結局のところ、愛している気持ちは揺らがないらしいとヴェルディーゼが嬉しそうに笑った。

 そうしていると、お菓子を盛り付け終えたガルフィールドが戻ってきた。


「よぅし、これで準備は整ったな。じゃ、本題に入るとするか――ヴェルディーゼ、この老いぼれに何の用だ?」


 ガルフィールドは視線を鋭くして、圧を掛けながらそう訊ねた。

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