997.状況の変化
それから二週間後のことだ。この二週間の間は特にこれといって目新しい動きはなく、ネドラ側と皇帝側に別れて内戦が続いているという状況であった。逆に遠く離れたゼフティア大帝国においては、異常事態となっている。ゼフティア王国の旧王都であったり、様々な街で無差別に攻撃を繰り広げる異常者が頻繁に出てくるようになったのだ。彼らは平民と同じような出で立ちで特に重武装をしているわけでもないので見分けがつかない。ゼフティア大帝国をクーデターにて建国したルイはこの状況に手を焼いていた。
さらに問題は他にも起こっている。ゼフティア大帝国の騎士の格好をした人物が応援に駆けつけてくれているケラヴノス帝国の騎士に斬りかかるといった事件も起きているのだ。これについてはケラヴノス帝国側から説明するようにという要求があがっており、皇帝であるルイと実質的に国を支配しているカステナ公爵は怒り心頭であった。しかも、捕らえようとすると魔法石を爆発させて確実に自害をすることもあり、真相は闇の中だ。ブルガテド帝国が何か仕掛けてきているのかという予測を両国は立ててみたものの、そういったやり方を過去にしてきたことはないので疑問が増すばかりであった。
対してデイラ聖教国はこの状況にほくそ笑んでいる。旧王都で問題が生じており、地方領域の警備が手薄になり始めているのだ。現状、ゼフティア大帝国の騎士とケラヴノス帝国の騎士たちの間には緊張関係がある。そのため、地方領域からもしもの場合に備えてルイとカステナ公爵は騎士を呼び戻したりしており、手薄になってきていた。また、国境線にほど近い村や街からは人々はデイラ聖教国の無慈悲な攻撃や拉致を恐れて旧王都に退避をし始めており、何の問題もなく再度占領をしている。一度はゼフティア大帝国の攻勢に押されて撤退を余儀なくされたが、再占領したのだ。
なお、ブルガテド帝国に自ら取り込んでもらったゼフティア貴族はそこそこの数になるが、ローラの父が治めるスプリング侯爵領などには亡命希望者が押し寄せていた。守ってくれないゼフティア大帝国よりブルガテド帝国の国民になりたいということだろう。とはいえ、全員を受け入れるのが難しい状況である。そこでスプリング侯爵の話を聞いたローラがリゼに相談を持ちかけた。リゼとしてはレガルナス公国の貴族を招集し、各領地で受け入れる余力があるか否かを聞き取り、一定数の難民を受け入れることにしたのである。とはいえ、レガルナス公国の本土ではさほど仕事があるわけでもない。フォンゼルに管理を委任している東レガルナス共和国においても同様だ。よって、シスア大陸側の開拓事業の方に着手してもらうことにした。泥人形たちも作業をしてくれているが、人の手による街があっても問題ない。それにシスア大陸は非常に広大であるため、人々に開拓を任せるエリアがあってもよいだろう。
また、大地の神ルークの教会の一部がレガルナス公国に移転が完了したこともあり、ゼフティアから逃れてきた者たちはありがたがっていた。シスア大陸にも作るべきかもしれない。幸いなことに大地の神ルークと夜の神ルアは悪い関係ではないので大きな問題もない。
それからさらに一週間後。リゼはというとサラシア地区でルブやアルティアなども含めてお茶会をしていた。サラシアが開催してくれたのである。ルブはまだ光の子である皇太子と会っていないのだが、もう少し精神的に成熟してから会いたいそうだ。
そんな最中である。屋敷の目の前の道の方角から悲鳴などが聞こえてきた。すぐにヴェーラの手下が駆けつけて状況を報告してくれるが、ネドラ地区との検問所を強引に突破した数人の男たちが光属性魔法を乱れ打ちしながら暴れているそうだ。リゼたちはすぐに立ち上がった。
屋敷の前に向かうと道や家などに黒い焦げ跡が所々についており、街の人々の話では男たちは分散して様々な方向に向かったようである。
「ヴェーラさん、問題が発生したので部下の方々に対応に当たるようにお伝え下さい」
「かしこまりました。すぐに対応します」
「騎士の皆様、私たちの方もヴェーラさんと連携してことに当たってください」
「サラシア皇女殿下、承知いたしました」
リゼとサラシアはすぐに指示をするが、道を見ると倒れている人などもいるようだ。すぐに駆け寄ると意識があるようなのでキュアは使わずにポーションを飲んでもらう。
「大丈夫ですか? 一体何があったのでしょう?」
「ローズ様……あっちの方から走ってきた連中が魔法でめちゃくちゃしてました……何かを狙っているというよりも暴れている感じでした……。あ、四人でした!」
「情報、感謝いたします。ご安心ください、サラシア皇女殿下と対応します」
分散している以上、ここは頭数がいるヴェーラたちに任せておくべきだ。
「リゼ、僕たちは旧市街地に向かう。もしかしたら一人くらいはそっちに行っているかもしれない」
「分かりました。またメッセージで連絡を取り合えればと思います」
「あぁ!」
ルブとアルティアが走っていくのを見送りつつ、まずは検問所へと向かう。ここ最近、ネドラ地区と城の攻防が落ち着いていることもあり、多くの人たちがサラシア地区に逃げようとしてきてはおらず、検問所の対応者を減らしていた中での出来事のようであった。人が増えすぎた旧クリストセルベル地区の方の治安維持のための人員を配置したのだ。




