996.動き出す者たち
法王から合図を受けた皇帝は口を開く。
「それでは大神官ラファティに我々からも一つお願いをしたいのですが、良いですかね?」
「もちろんです。我々は何をすれば?」
「実は非常に嘆かわしいことなのですが、光の神ルーフ様を信仰しない者たちが反乱を起こしまして。近衛騎士も信用できないため、貴国に協力をお願いしたいのです。主にこの城の警備をより強固にすること、定期的にネドラ地区という隣接する地区に対して攻撃を行うこと、近衛騎士の監視という三点です。教会自治区は聖騎士がそれなりにおりますが、この城は少し手薄になっておりましてね」
「内戦とは聞いておりましたが、この聖なる光の国に対して暴挙を働くとは何とも許しがたいですね。私に良い案がありますよ。ネドラ地区なるところに対しての対応についても是非デイラ聖教国にお任せを。それにしても貴国もすべての土地を教会が保持し、全てを光の神ルーフ様に捧げるというフェーズに来ているのかもしれませんねぇ。我が国も元々は、かなり昔にはなりますがくだらぬ王国があったようです。しかし、完全に討ち滅ぼしました。それ以来、安定しておりますよ」
皇帝はラファティに深く頷いていた。
「きっと近いうちにエリアル神聖帝国はエリアル神聖教国に変わるでしょう。逆らう者は生贄に捧げ、真の光の国を作るのです」
「素晴らしい。まずは東と西に光の国を作り上げようではないですか。そして最終的には統一を! ところで神の加護を持つ者はどうしても引かれ合うといいますか、遭遇することが多いみたいなので忠告しておきますよ。邪教である大地の神ルークがフォルティアなどというものに恐らく加護を与えているはずです。ゆめゆめお気をつけください。あなたであれば大丈夫かもしれませんが、念の為ですね」
「そのフォルティアはロプタス様に捧げるのが良いかもしれませんね。強力な者を生贄にすれば、ロプタス様の力はより強くなりますので。大地の神ルークを信仰する国が西の方にあるという噂は聞いたことがありますが、フォルティアという者の詳細についてはゼフティア大帝国を攻める際にも情報を収集してみることにしましょう」
二人はその後も話で盛り上がると教会自治区に転移をし、外に作った転移施設に転移石を置くというイベントを行う。これで両国はお互いに転移できるようになった。その後、皇帝とラファティは城の奥、そして地下に降りていく。ラファティが連れてきた異教徒の者たちも一緒だ。
暗がりには赤い光が灯っている。ロプタスだ。ラファティが口を開く。
「ロプタス様、デイラ聖教国より、大神官ラファティが参りました。本日は生贄を百体ほど連れてまいりました。お楽しみいただければと存じます」
異教徒たちはデイラ聖教国の聖騎士に押し出されてロプタスの方へと連れて行かれる。全員が数珠つなぎになっているのでどうしようもない。やがて全員がロプタスに取り込まれ、そこには何も残らなかった。
「さぁ、聖騎士の皆さん。五人ほどロプタス様の生贄になりなさい」
ラファティが命じるとすぐに聖騎士が前に出たが、全員が前に出たことによりラファティが五人を指名することになってしまう。指名された五人はロプタスに吸収された。
その後、デイラ聖教国からは聖騎士が転移してきて城の防衛に駆り出されることになる。ラファティが指揮官を務めており、ネドラ地区を見て笑みを浮かべるのだった。
「聖騎士の皆さん、どうにもエリアル神聖帝国は国内に秩序をもたらすのに全力を出し切っていません。きっと、光の神ルーフ様を信仰する同胞を殺してしまうことを避けたいのでしょう。異教徒のことはなぶり殺しているということは分かりましたが。しかし、ネドラなる反逆者が教会に対して楯突いているこの状況を鑑みるに、地区民たちは本来はその者をあぶり出し、粛清しなければならないものを、放置しているのですから同罪です。信仰しているとは思えませんね。そういった場合はどう解釈するのが正解ですか?」
「それはもはや信仰心が無いにも等しいですので殺害をしたところで何の問題もありません」
「ですねぇ。では伝えた通りの作戦でお願いしますね。エリアル神聖帝国が素晴らしい国であることに疑いの余地はありませんが信仰度がほぼない者や異教徒が紛れ込んでいるという点では我が国とは異なります。我々の異教徒や半端者たちへの対応をお見せして差し上げましょう」
「御意に」
聖騎士数人はお辞儀をするとネドラ地区に対して動き始める。
それから一部の聖騎士が乗ったデイラ聖教国の船は出港し、デイラ聖教国とは反対側に向かい始めた。新生エリアル神聖帝国の構成国に会合に参加していた国家元首を運ぶのだ。そして、その国の者たちにデイラ聖教国に転移してきてもらってゼフティア大帝国と戦ってもらうことになるのだろう。なお、エリアル神聖帝国の皇帝がデイラ聖教国に城の警備などを頼んだのは光の神ルーフを信仰する者として信用しているからかもしれない。




