1019.部屋にて
その日は深入りせずに超上級ダンジョンを後にしたわけであるが、この超上級ダンジョンをリゼの中で最初の攻略対象とすることにはした。メレディスを連れてきて難易度について意見を貰う必要もあるだろう。
それからさらに一週間後、近衛騎士の隊長と皇族区で合流した。現在、近衛騎士の隊長の方で信用できる者と裏切りそうな者など、情報をまとめあげている最中のようである。この皇族区から離脱するにせよ、大規模な逃亡となるので、裏切りが途中で発生したら大混乱となってしまう。近衛騎士の隊長は教会のスパイを警戒しているようだ。それぞれの行動などを念入りにチェックしているようなのでそこは継続してもらった方がよいだろう。
そして、城に抜けるためのトンネルが完成したのでそこを使おうかと考えるが、痕跡が残ってトンネルが見つかってしまうのは避けるべきだ。よって、再び機関の仮面をつけて黒いマントを着用し、ヘルで姿を消して城側に侵入した。いつも通りであればラファティは教会にいてネドラ地区との投石の応酬を指示しているはずだ。ラファティの演説以来、ネドラ地区と攻防が続いている。それとまたネドラ地区でのテロ活動が再開もしていた。ネドラはどこから侵入しているのかと頭を悩ませていたが、これも戦争なので仕方ないと考えている状況だ。城壁から堀の方に降りてこないように警戒は強化しているそうであるが、他にルートでもあるのだろうかと考えてしまう。逆にサラシア地区はというと検問所を閉めていることもあるのでテロ集団が暴れることもなくなっている。
教会の方に向かうとラファティはいないようだ。するとヴィズルが『マイマスター、神官の思考を読んでみましたが、ラファティは教会自治区に出かけているようです』と教えてくれた。であれば、チャンスだ。ラファティたち神官たちは以前にレノルド・ハーヴィーが拉致されて尋問されていた広間の付近に部屋を構えているようであり、そこは把握済みだ。審問官もラファティの護衛として教会自治区に行っている可能性が高い。急いで向かってみるが、例の広間付近はシーンと静まり返っていた。足音も聞こえてしまいそうなくらい静かであるので音を立てないように慎重に歩く。そして、広間の目の前を通り過ぎて廊下を歩いていくといくつかの部屋があった。恐らくはこのあたりが神官たちが使っている部屋なのだろう。一番奥にある両開きの部屋が怪しそうである。向かってみるが、何か仕掛けがあるかもしれない。ヴィズルに中に誰かがいるかを見てもらうが特に熱源はないそうであるのでオーガスティンの鍵を使って鍵を開けるとそっと閉じておいた。
中はというと白一色の部屋となっており、ベッドと机、椅子、光の神ルーフを描いた絵画があるだけだ。机に向かうが残念ながら教会自治区に入ることが出来る聖物された腕輪は見つからなかった。もしかするとすでに教会自治区の方に持っていかれてしまったか、ラファティが肌見離さず持っているか、審問官などに渡したのかのいずれかだろう。部屋を見渡すと光の神ルーフを描いた絵画が目に入るが、写実主義的に近い絵となっていた。想像上の神であるが妙にそれらしさがある。しかし、違和感があった。どこに立っても光の神ルーフに見られているような形となるのだ。そのことに気づいた瞬間、金縛りのようなものに襲われて身動きが一切できなくなってしまった。このエリアル神聖帝国ではゲートは使えない。
(まずい……本当に身動きが取れない……ヘルはしまってしまったし、どうすれば……)
そう、部屋に入った際に腕輪を探すため、ヘルをアイテムボックスに入れてしまったのだ。秘剣ミスティアは念じれば手にすることは出来るだろうが、指を動かすことも出来ないので掴むことも出来ないだろう。
無詠唱で結界は張れるものの、打開策が思いつかないリゼだ。ヘルをしまってしまっているので姿を消すことも出来ないし、動けないのでアイテムボックスから神器を取り出すこともできない状態である。スキルの発動には口を動かす必要があるのだが、そこも不可能だ。
(エアースピア)
突風を絵画に向けて放ってみるが、絵画に当たる寸前で霧散していく。続いて、氷の槍を射出してみたが結果としては絵画に当たる寸前で粉々に砕け散った。なお、氷のカケラが地面に散らばることはなく消滅したのでマナに分解されたということだろうか。
(落ち着きましょう……。まず、魔法が当たる寸前で解除されてしまうということは、マナに影響を及ぼす何かがあるのかもしれない。マナに分解されてしまえば魔法は無意味。動けないのは一定時間あの絵を見たりすると動けなくなったりするのかな……。それかどこに立っても見られている状況に気づいたら動けなくなるか……)
仮にこの絵画を経由してラファティに何かの信号のようなものが送られたとしても、駆けつけてくるまでにはまだ時間があるはずだ。魔法もスキルも使えないわけであるが、一つ思いついたことがある。




