1018.検証
もう一度、踏み込んでみたところ、同じように赤い光が飛んできたが、こちらに到達する前に後方にさがると途中で消えた。何度繰り返しても同じであるため、一定の距離に近づくと赤い光が飛んでくるようである。
(アルカディ、召喚)
リゼはアルカディを召喚してみた。アルカディには事情を説明し、同時に距離を詰めてみると二つの赤い光が飛んできたのですぐに後退して赤い光が消えることを確認する。
「なんだ、今の光は?」
「神による何らかの効果ではないかなと考えていますね……。神聖力の核がマックスありまして、さらに熟練度もそこそこである結界にヒビが入るとなると、並大抵のものではないと思いますので……」
「だろうな。あれは俺にもダメージがありそうだ。俺の結界を張っていても、よもや貫通するのではないか?」
頷くリゼだ。これだけ厳重に守るということはあの一本の木には何らかの意味があるのかもしれない。
「ゲートは使えないのか?」
「あ、はい。この平原エリアでは使えません。エリアル神聖帝国でも使えませんし、レガルナス公国でも緩和されるまでは使えませんでしたので同様の系統ですね」
「面倒だな。百メートルくらいか。あれを出してくれないか? 投石機というやつだ。試しに攻撃してみよう」
「攻撃してみてどうなるのかは確かに気になりますね。ただ、アイテムボックスも使えないのです」
アルカディは木に向かって舌打ちした。百メートルほどの射程距離がある攻撃は現状ない。とはいえ、組み合わせればいけないこともないと考えた。リゼは斜め上に向かってアイスランスを放つと、エアースピアによる突風で勢いをつけてみるが、みるみる木に向かっていく氷の槍だ。しかし、赤い光が氷の槍を完全に粉砕した。こういうこともあるかと思い、ロイスが神器を入手する試練の時に使っていた遠くをみる筒を持ってきているので収納袋から取り出すと木を見てみる。特に変わったところはないのだが、どこからあの赤い光が出ているのかを分析してみることにした。アルカディに少し前進してもらうと、木の上にある空中部分で赤い光が凝縮し、一瞬で射出されている。続いて、木の周りを近づかないように一周してみたが、どのポイントで侵入をしてみても同じような仕様があることが分かった。ただし、先程の真逆あたりで木の横に黒い杭のようなものが地面に突き刺さっているのが分かる。何かしらの模様なのか、文字のようなものが刻まれていて、赤い光が射出される際にはその黒い杭の模様が金色に光っているため、連動していることは判明させた。
「あの赤い光だが、結構眩しく光っているし、そろそろモンスターたちに勘付かれるかもしれないぞ」
「ですね……。今の状況ではなかなかあの木までたどり着けないのですが、最後にひとつだけ試してみても良いでしょうか?」
「あぁ」
リゼは木の方向に前進すると赤い光が射出されてくるが、「スーパーボルト」と詠唱して雷属性魔法の特殊上級魔法を放ってみる。すると、雷を粉々に打ち砕きながらこちらに向かってきたので後退して赤い光を消しておいた。
「今の私たちにはどうしようもないですね。上級魔法のさらに上の攻撃でないとあの赤い光と相殺することは出来なさそうです」
「あれはどうだ? 闇属性魔法に魔法を吸収するのがあっただろう」
「ありますね。神器に記録してやってみたいのですが……アイテムボックスが使えないので今は難しそうです」
「俺の予想ではあれは魔法ではなく神聖力によるものだと踏んでいる。だとすると闇属性魔法の吸収は魔法ではないので吸収する素振りもなく失敗するはずなんだが、そこを確かめておきたかった」
それは検証してみた方が良いと判断したので手間ではあるが一度岩場まで戻り、神器に魔法を記録して、再び平原エリアに戻り吸収を試みてみたのだが、アルカディの予想通りで吸収するプロセスが発生せずに魔法を破壊してきたのでもしかすると神聖力によるものなのかもしれない。
今はどうしようもないので北側に向かうと超上級ダンジョンの扉を開けて転移石を置いておく。せっかくなので扉が閉まらないように固定しておき、階段を降りてみることにしたのだが、ダンジョン特有の肌寒さのようなものはない。なお、ダンジョンマップウィンドウは正常に作動した。階段を降りきると、この階層はダンジョンの道に明かりが灯っている。近くにモンスターはいないようだ。モンスターはというとボス部屋らしきところの周りに集中しているようである。そして、ボス部屋の近くには沢山の小部屋があるようで、全てがモンスターが湧き出てくるようであった。
そして、このダンジョンのこの階層限定の話かもしれないが通路の広さは他のダンジョンの三倍程度あり、高さも三倍程度ある。
(この大きさの通路にはかなり大型のモンスターもポップできるでしょうし、そういうことなのでしょうね……)
今までの神器入手はすでに攻略がされて他の者が使っていた神器を受け継いできたのだが、今後は自分たちで手に入れる必要があり、なかなかに苦戦しそうだ。ボスモンスター級のモンスターが道中にも出てきそうな予感がするからである。




