1015.自治区の情報
その後、話を掘り下げてみたが、メサ帝国としてはエリアル神聖帝国を攻撃しなかったそうだ。砂嵐に囲まれている国における籠城戦であれば得意分野なのだろうが、エリアル神聖帝国よりも人口が少ないため、攻め入るというようなことは避けたようである。しかし、今回の新生エリアル神聖帝国については攻めるために軍を出すという話を皇帝がしていたため、いよいよもってして、エリアル神聖帝国には牙を剥くということなのかもしれない。
「他教の方からすると、光の神ルーフ様に問題があるとお考えになられてしまいますでしょうか?」
答えにくい質問を神官がしてきたが、今まで真面目に回答してくれていたのできちんと答えることにした。
「正直、そうですね……。私の祖国がデイラ聖教国という国と隣接しているのですが、その国はエリアル神聖帝国よりもさらに過激、といえるかもしれない国です。その国の法王や大神官の方々がロプタスの巫女に拷問まがいのことをして自我を破壊しようとしたり、他教の方々を問答無用でロプタスというモンスターの生贄にしたりと、そういった方々を野放しにされてしまっている時点でどうなのかなと思うところはありますね。ただ、全てをあらゆる視点、側面で見ているわけではないのであくまでもゼフティア王国人という目線からの印象です……。エリアル神聖帝国の侵略もどうかとは思っていますね……」
「ありがとうございます。そのデイラ聖教国は教義を捻じ曲げている可能性がありますね……。しかし、他教の視点ですとそのように思われるのも無理はないでしょう。なぜ、光の神ルーフ様が何もしないのか……というところは諸説ありますが、そもそもとして神が出来ることは国への加護、人への加護、神託の三つしかありません。神託は人々を導く際に使われるもので、明確な指示については神ごとに回数が決まっていると言われておりますね。上限に達した神はその後は一切の神託を出せなくなるという話があります。指示以外の神託も出せないようですね。よって、光の神ルーフ様も指示と捉えられる神託については慎重なのだと考えております。状況をよくよく観察されてから神託を出されるのではないかと我々は考えております。メサ帝国におりますと、なかなか他教の方々と話す機会があまりありませんので良いご意見をありがとうございました。また是非とも会話をさせていただきたいです」
神官がお辞儀をしてくるので、同じようにお辞儀をすると教会をあとにする。事件の話も聞けたので良い時間になった。神託の指示と捉えられる神託は回数制限があるということでこれは知らなかったことである。もしかすると、他教において指示に関する神託が一定回数に達したタイミングで神託が一切なくなったというパターンが過去においていくつか存在しているのかもしれない。現状、光の国を作るにあたってロプタスの覚醒が大きな助けになるし、やめさせないで観察中ということだろうか。
(どうして光の神ルーフ様はそこまで光の国を作りたいのかな? 人が大勢亡くなる可能性が高い試練についても何とかするようにということを神託で出されていたようだけれど……。少なくとも試練の神アレス様とは敵対関係にあるのか、人を殺させるわけにはいかないということなのか……。いずれにせよ、神託を出されない神については指示をしすぎて回数制限に達してしまった可能性があるということで良い学びになったかな)
城に戻るとレノルド・ハーヴィーと皇帝の会話は完了していたようである。どうやらメサ帝国で神官として迎え入れるそうだ。となると、教会自治区について色々と教えてくれるかもしれない。
「レノルド・ハーヴィーさん、改めまして質問をさせていただいても宜しいでしょうか?」
「教会自治区についてですね。準備しております」
レノルド・ハーヴィーもそのつもりだったのか教会自治区の地図を書いてくれていた。基本的にこの地区は他の地区よりもかなり厳重になっているそうで、教会の関係者しか立ち入りが原則として認められていないらしい。教会自治区は法王が住んでいるところでもあり、ロプタスによる結界が遠隔で張られているようで、聖物された腕輪をつけていなければ入れないそうだ。もしくは、内部の者が入っても良いと判断した者は地区に入ることを許可されるが、その場合はロプタスに結界を解いてもらう必要があるため、ほとんどそういったことはないようである。
(つまり、教会自治区には入れないということね……。レノルド・ハーヴィーさんも腕輪はラファティさんたちに取り上げられてしまったようだし……)
するとヴィズルが『取り上げたものを保管しているところがあるのでは?』と念話があった。有り得そうであるが、ラファティの私室の可能性もあり、難易度は高そうだ。とはいえ、チャレンジして腕輪の奪還に成功すれば教会自治区の中に入れるので諦めるという選択肢はない。




