1012.模擬戦
皇帝の息子は頷いてくる。
「はい、もういつ戦いになるかわかりませんからね……。あの場にいて皇帝の異常性についてはよく分かりました。光の国を作るという意義については私も光の神ルーフ様を信じているので分からなくもないのですが、やり方があまりにも過激すぎますね。目的のためには正しい過程を踏む必要があるというのが我々の見解でして、無理やり侵攻したところで恨みや怒りの感情を抱かれるだけですからね。光の神ルーフ様への印象が悪くなる一方というのもありますので、エリアル神聖帝国とは戦わざるを得ないでしょう。それにランドル大公様がいらっしゃらなければ我々も死んでいた可能性が高いです。何しろ父、皇帝陛下は思ったことを口にするタイプですからね……。新生エリアル神聖帝国に組み込まれたくないとはっきりと主張したはずでその場で殺されていた可能性すらあります」
彼の意見には同意である。その後も少し話したが、話の流れで騎士と戦ってもらえないかという話になってしまった。ある程度戦える相手でテストをして実力を測ってみたいらしい。メサ帝国とは共闘する可能性があるので協力することにした。ということでリゼはというと模擬戦用の剣を持ってフィールドに立っている。連携した動きをテストしたいそうで、相手は三人だ。あちらは魔法やスキルをまだほぼ使えない者たちのようであるが、剣術の腕には自信があるらしい。こちらは魔法やスキルをどんどん使ってほしいというオーダーを受けている。
試合開始の合図があり、三人はうまく陣形を組み、少しずつ距離を縮めてくる。正面と左右に位置どっているが、視界の範囲に全員がいる状況だ。
きちんと戦わないと彼らのためにならない。魔法石をつけているのでダメージはないはずであるし、期待されている通りに魔法やスキルを使うつもりである。ただ、特殊上級魔法などはすぐに決着がついてしまうので使わない方針としてみた。
(剣術が得意ということで接近してなんとかするつもりでしょうね)
まずは牽制だ。デストロイレイを発動し、指の先に光を滞留させてみた。すぐに撃たないのは攻撃が来るということを察知できるような状態にすれば避けようという心理が働くはずで避ける練習にもなるだろうからだ。とはいえ、単純に撃ち込んでもそれはそれで芸が無い。リゼは右側面からスライドする形で左方向まで光線で攻撃する。右手にいた人物は素早くかかんで避けることに成功したが、真ん中の人物は驚いた表情をしているが、当たってしまった。左の人物もかわしたので無事だ。まだ真ん中の人物は魔法石の残数があるのだが、実戦であればやられたであろうという判断で審判がリタイアさせていた。
左右から騎士が迫ってくるが、「マーキネスアイ」と詠唱して二人の動きを一瞬止めると、「エアースピア」と詠唱して右手にいた一人を後方に吹き飛ばした。左手の人物は一瞬動きが止まったが、素早く前進してきて上から剣を振り下ろしてくる。結界を展開し、剣を受け止めるとすぐに結界を解除した。
そして、手を向けるとその騎士はバックステップで下がるとライトスラッシュを放ってくる。他の騎士よりは戦闘の感覚に優れているようだ。ライトスラッシュはウィンドプロテクションで弾くと「ウィンドカッター」と詠唱して風の刃を向かわせる。軌道は甘めにしてみた。騎士は二つの風の刃を見て一つをかわすと、もう一つは剣で打ち払う。
「スノースピア」
近づかれては厄介なので続いて氷の鏃を沢山射出してみる。これはジャンプしてかわそうとしたが、いくつかはかすめたようだ。
騎士は転がりながらも器用に他の騎士の剣を拾うと投げつけてくるが、「アイスランス」と詠唱して氷の槍を二本射出し、剣にぶつけ、もう一本は騎士に向けた。騎士は前進してこようとしていたが、また下がらざるを得ない。魔法を複数使う相手には接近戦は不向きであるとそろそろ分かってくれたと感じている。騎士は体勢を立て直して警戒しているようだ。リゼはというと「ライトスラッシュ」と詠唱するが、軌道を操作してカーブするように放ってみた。騎士はギリギリまでまって素早くかわし、ここぞとばかりに前進してくる。勇気ある動きだ。とはいえ、まだまだ攻撃の手数が少ないのが致命的である。
冷静にアイスレイで動けなくするとホーリーレイで撃ち抜いて終わりとした。
騎士は悔しそうにしているが、お辞儀をしてくる。すると皇帝の息子が口を開く。
「見ましたね、皆さん。ランドル大公様のように魔法の扱いに長けた人物と戦う場合、数で上回っていてもどうしようもありません。今回は位置取りも悪かったです。必ず正面と側面、それから背後を取るようにして気を引きつつ死角から攻撃をするのです。座学では学んだでしょうが、ただ実戦ではなかなか立ち位置を取るのも難しいということも分かったでしょう。今回の模擬戦を参考に自身の動き、仲間との連携について改めて考えてみてください」
騎士たちは神妙そうに頷いている。




