1010.情報収集
ラファティはというと法王に向けて言葉を続ける。
「それと、お耳に入れておいたほうが良いことがあります。ケラヴノス帝国の邪教徒がスパイ活動を行っているようです。もしかしますと、ネドラを焚き付けたのもケラヴノス帝国かもしれません。対峙した者はそれなりに戦える相手でしたので、本気度が伺えます。恐らくは東方未開地側にも進出したいのでしょう。地図を見ましたが、レガルナス公国という夜の神ルアを信仰する異常な国の隣にベーテル連合王国という詳細不明の国があり、その隣がケラヴノス帝国です。今はゼフティア大帝国側の支援で忙しいのでしょうが、頃合いを見て東側にも仕掛けていくのかと。そうなりますと、東方未開地の盟主たるエリアル神聖帝国が邪魔になるので今のうちに混乱させたいということかもしれません」
「ほっほっほ。それでは、ロプタス様に最初に滅ぼしてもらう国はケラヴノス帝国ということに。その時が来たら大神官ラファティに任せるとしようかの。ケラヴノス帝国は建物も、人も、植物も全てを燃やし尽くし、焦土と化すように」
ラファティは恭しくお辞儀をした。法王は血走った目を見開きながら素早く何かを書き始め、ラファティは音を立てないように再度お礼をしてから部屋を後にする。扉の外には審問官がいるが、法王の護衛だ。ラファティがつけた護衛である。
「ゼフティア大帝国などという国はトップを消せば自然と消えるような国です。まずはケラヴノス帝国とうまく分断するように行動をお願いします。私たちはエリアル神聖帝国にてネドラなどの主要人物をどうにかしますので。これは光の国を作るにあたり非常に重要な内容ですので素早く行動を開始してください」
ラファティは独り言のように呟くとその場を後にしていった。審問官は何も口にしないがラファティが歩いていく後ろ姿にお辞儀をする。
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翌日、リゼはレノルド・ハーヴィーをメサ帝国まで連れてきてみている。事前にアポは取ったので現在はメサ帝国の城における広間で皇帝を待っていた。一度来たことはあるが、そのときは素早く離脱をしたのでこの国のことは詳しくはわかっていない。なお、メサ帝国はというと東方未開地の中にあるが、周りを砂漠で囲まれており、周囲は酷い砂嵐が吹き荒れているようである。メサ帝国の国の中には砂嵐がなぜか入ってきていない。まるで国を守る壁のように砂嵐が機能していた。ただし、一箇所だけ砂嵐がひどくないポイントがあるようで、そこを行き来することで他の国と貿易をしているようだ。
現在の広間には光の神ルーフを崇めている国ということだけあって、床と壁、天井は白を基調としたものに統一されている。あまり待つこともなく皇帝は姿を表した。
「ランドル大公、ようこそ。メサ帝国はあなたをいつでも歓迎しています。それからエリアル神聖帝国の神官レノルド・ハーヴィー。あなたのことも歓迎しましょう」
相変わらずそれなりに歳を重ねているにもかかわらず丁寧に喋る人物だ。リゼはレノルド・ハーヴィーを紹介し、あとは二人で話してもらうことにした。自身はというとこの国を少し見回ってみるつもりだ。外出してもよいし、城のどこへでも立ち寄っても良いという許可をもらったのでせっかくの機会であるので観察してみるつもりである。立ち入りが難しいのは教会の神官のみが入れるフロアのみだそうだ。
向かうのは禁書庫である。帝都も見てみたい気持ちはあるのだが、そこは後にするつもりだ。
禁書庫には案内をしてくれる人物がいたので迷うことなく到着できた。見たいのは神託の記録である。なお、案内人の話では相当前に火事があり、神託の一部は完全に焼失してしまったそうだ。
(もしかすると燃えた時に例のロプタスと対になるようなモンスターに関する神託は失われてしまったのでは? あ……まさか燃やしたのはエリアル神聖帝国の盗みに入った人ではないでしょうね……。有り得そう……)
エリアル神聖帝国が神託の記録を盗んだ際に放火したという説を予測してみる。残っている神託はそこまで数があるわけではなかった。内容を見ると『南を目指せ』というようなものが多い。この国から南方向にいくと実のところかなり遠いが小国乱立地域があるので、そこを目指せということなのだろうか。
エリアル神聖帝国と連動するようにというような神託が出ていないかどうか気になっていたのだが、そういう内容の神託はなかった。なお、光の国を作れというような神託はやはりあったが、あくまでも布教活動を続けよというような内容で侵略してまで実施しろというような内容ではない。
(やっぱりあれかな、光の国は最終的に作ってほしい。でもアプローチの方法は穏健派とエリアル神聖帝国の二パターンがあって、どっちが成功するかわからないから可能性を残しておくために過激なことはこの穏健派の方にはさせないようにしているということなのかもしれない? えっと、最後の神託は……もう百年前くらいなのね)
このメサ帝国の啓示石板にもたらされた神託はもうだいぶ前のものが最後であるようだ。デイラ聖教国などにはゲイルがあの国から逃げる直前辺りにも神託があったということを彼が話していたため、だいぶ対応に差があるようである。




