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1007.教義の違い

 リゼはレノルド・ハーヴィーに頷いた。


「メサ帝国でしたらお連れできます。ただ、どういうことなのかは教えていただきたいです」

「ありがとうございます。お伝えしたいのですが、口頭ベースの話でも信用いただけますでしょうか? このように証拠は破片となってしまいましたので……」


 紙切れについては考えがある。ポイントを消費して完全に修復してみた。そして、修復後に彼に返すが、驚いて声が出ないようだ。チラッと見た限り、この記録が意味するところは読めないのでよくわからなかったが、予想では何らかの神託について書かれているのではないかと予測してみた。

 レノルド・ハーヴィーは瞬時にして修復された紙を見て呆気にとられていたが、ふと我に返る。


「ちなみにですが、あなた様は……? モンスターを使役するということで只者ではないとは思いますが……」


 リゼは自己紹介しておいた。レガルナス公国の大公であるということが分かり、少し安堵したようだ。


「信用いたします。まずメサ帝国は光の神ルーフ様を信仰していますが、エリアル神聖帝国とは敵対していることをご存知ですか?」

「はい、把握しております。穏健派のような立ち位置だと聞いたことがあります」

「まさに。正確にはメサ帝国とエリアル神聖帝国では教典における原典を何とするのかというところが違います。メサ帝国は光の神ルーフ様による神託を最初に受けたとされる方の教典を原典としており、最終的に光の国を作れば人々が幸せになるという話にはなるのですが、そこは徐々に教典を説くことで広めていこうというものでした。しかし、エリアル神聖帝国については初代の神託を受けた方のものではなく、神の加護を得た、時の法王猊下が自ら解釈を加えた教典を原典としているのです。その教典においては、異教徒は邪教徒として扱い、聖戦を以ってして征服し、教義を広めるというものです。ここまではあくまでも前提です」


 ここで一度話をきったレノルド・ハーヴィーである。正直なところ、光の神ルーフにおける信仰にこのような教義の差があるとは知らなかった。ゲイルも知らないであろうし、これはこの東方未開地を囲む国々にメサ帝国があり、対立していたからこそ把握していた事実なのかもしれない。

 リゼは「前提について理解できました」と答えておいた。


「ありがとうございます。この資料はメサ帝国における神託の内容を盗み出してきたもののようです」

「そのようなものが……」

「はい……。実は光の神ルーフ様は二種類のモンスターをこの世界に君臨させたことをご存知ですか?」

「あれ、ロプタスが四体というわけではなく、他にもモンスターがいるということでしょうか……?」


 ロプタスについては把握しているが、それ以外については知る由もない。


「そうです、この資料にはそのことについての対応検討についてが書かれています。光の神ルーフ様は特段、どの教義にも肩入れしているわけではありません。というのも対立する教義があるとはいえ、どちらにも光の国を作れる可能性があることに変わりはないからだと考えています。我々の信仰についてはロプタス様を君臨されましたが、メサ帝国の教義向けには別のモンスターを君臨されております。東方未開地の中央付近にダンジョンが集まっているエリアがあるそうなのですが、そこに一体はいらっしゃるようです。エリアル神聖帝国のこの資料にはそこに至らせないためにメサ帝国については定期的に小競り合いを起こして、戦力を国に抑え込むべきという考えが記載されておりました。だいぶ古い資料のようですが、法王や国の皇帝はこの方針について理解しているものと思われます」


 これは良い情報であるのは間違いないが、気になることが一つある。


「事情は分かりました。ただ、その事実を知った上でなぜ、メサ帝国に伝えようとお考えになられたのでしょうか?」

「最近のエリアル神聖帝国は同じ教義を信仰する者同士で殺し合いが行われております。これはいかがなものなのかと……。解釈によれば、大神官であらせられる皇帝陛下に対して牙を向いた者たちは大罪人であり、裁きを与えるべきだということなのですが、それは最終手段だとされています。教典にはまず牙を剥くことが間違っているということをよくよく説きなさいと書かれています。説くような動きがいままであったでしょうか? ネドラ皇女が先に攻撃を仕掛けたのは事実ですが、皇族が何人も連続して不審な死を遂げていることを鑑みれば、城に対して不信感がわくことも理解が出来ます。話し合いを行わずにいきなり攻撃を仕返して、同じ教義を信仰する者同士で争い続けるということが果たして正しいのでしょうか? 私は正しいとは思えません。それはどちらかというとメサ帝国の教義に近いです。あちらの教義については武力を以って制することはしないが、仮に攻撃を受けた場合は同胞だろうが、異教徒だろうが、教義を信ずる者が一番多く生き残る選択肢を取るべきだと解かれているようです。そのことを思い出して関連資料を漁っていたところ、この資料を見つけたのでメサ帝国には伝えるべきだと考えました。盗み取った神託の情報を元にした戦略など、正当性があるとは思えませんでしたので」


 そこまで話すとレノルド・ハーヴィーは疲れたのか深くため息をついた。


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