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「衛生兵ボサっとしてないで、早く行け!」
フランクの怒声で兵達は慌ただしく動き始めた。
外壁はエドの魔法のおかげで何ら異常はない。
だが魔法が解除されると共に
壮絶な光景が兵士達の眼前に広がった。
「なんだよ、これ……」
誰かがポツリと呟く。
先程まで眼前に迫っていた魔物の軍は
元からいなかったかの様に跡形もなく消え去り
代わりに大きなクレーターがそこにあった。
合わせて肉が焦げた嫌な臭いが鼻につく。
魔物の行く末を想像してか
吐瀉する者も少なからずいた。
「ジン……!」
担架で運ばれるジンに撫子達は駆け寄る。
服や髪は煤けているが目立った外傷はない。
「あぁ、撫子か……」
ジンは気を失っていたが
撫子の呼びかけにより目を覚ます。
「どぉ☆楽しかった?
ダモたんは、やっぱり抜けなかったみたいだね」
「おのれ、何……」
「いや、いんだ」
エリーゼの問いかけに
撫子は激怒するが予想外にもそれを
ジンが制する。
「えぇ残念ながら楽しかったです。
ダモクレスに関しても会長の仰る通り。
これは聖剣ではなく魔剣の類ですね」
撫子は気でも狂ったかという様に
ジンを凝視する。
自分を死地に追いやった者と
朗らかに笑って会話しているのだ。
自分の価値観にない世界が
そこには広がっていた。




