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1週間後フランクの執務室に
集まった情報は目を疑いたくなるもの
ばかりであった。
報告書のどれを見ても
“4歳半ばの子供が禁書に類似した書物を
読み漁っている”という事実だった。
まさか、魔族か何かが娘に取り憑いているのか。
フランクは悲嘆に暮れる中
執務室のドアを叩く音がした。
「……入れ」
正直、今日は何も仕事をしたくなかった。
もしかすると
愛娘を殺さなければいけない。
もしくは王都から逃げ出し
世界の果てまで逃げ伸びなければ
ならないかもしれない。
そんな中、仕事に従事出来る者が
いるのだろうか。
彼は頭を掻きみしりぐうぅと唸りながら
項垂れていた。
「失礼致します」
結論から言えば
突然の来訪者たちによって
フランクの悲嘆は驚愕へと変化した。
「騎士団長、どうすれば
団長の娘様の様な子供に育てることが
出来るのですか!?」
「……へ?」
フランクは素っ頓狂な声をあげ
顔をあげた。
職務中にこんな声をあげたことに
自分自身でも驚き羞恥する。
来訪者たちは
リリスの警護と図書館へと調査に
向かわせた者達だった。
どこか彼等も興奮気味で
食い入る様に質問をしてきた為
フランクの威厳は保たれることとなった。
まずはイリスの警護に
付けた者達からの報告によると
娘は時間が空けば図書館へ行き
ある時は
聖騎士団の訓練所を覗き
自前の木剣で隠れてこっそり
兵士達と同じ様に剣を振っており
またある時は
魔法訓練所に行けば魔術書を
片手に魔法の練習を行っている
というのだ。
次に図書館へ調査に
向かわした者達からの報告によると
娘は高学な司書を見つけては
質問攻めにしているのだそうだ。
諜報魔法を使い内容を確認すると
ハッキリ言って何を話しているのか
難解過ぎて意味が分からないらしい。
リリスが図書館を去った後、
その司書に聴き取りを行うと
自分が今まで学んで来たことは
何だったのかと自信をなくしていたそうだ。
「まあまあ諸君落ち着きたまえ」
フランクは平然を装いながら
兵士達を宥めると
下を向き、手を組んで己の表情を隠した。
混乱し過ぎて頭が痛い。
自分の知らない所で話が勝手に進み
罠にでも嵌められたかのような
錯覚にフランクは襲われていた。
少しの間を置いた後
フランクが出した答えは
「今は特務を受けている為
その質問はまたの機会にしてくれないか」
逃げの一手であった。




