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ドラゴンすくらんぶる!  作者: 葉月 都
第拾章 蒼い記憶
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其八十四


無事月見町に着いた巴樹と葵。

そして、二人を駅前に出迎えたのはとある人物で…………?



ーーーーー


「驚かしちゃってごめんなさい!覚えてないですか……っていっても覚えてないっか………。」

「モモの記憶力がいいだけでしょ。」




こげ茶色のセミロングヘアのその少女は、一人で一気に話を進める。

隣に立つ長身の彼は、眼鏡の奥から冷たい視線でその少女に突っ込みを入れる。


あまりの急展開に、巴樹と葵は呆然とそれを眺めることしかできない。




「でも、大河も記憶力いいでしょー?私より先に二人見つけてたし。」

「あんたの視野が狭いんじゃない?」

「……………あ、あの……お取込み中申し訳ないんだけど…どなたですか?」




とうとうこらえきれずに巴樹が口を開いた。


その言葉に二人ははっ、と正気に戻り、巴樹と葵の方に向き直った。

先ほどまでの口喧嘩からのきり変わりは、本当に見事なものだった。




「あ!申し遅れました!私、桃沢千歳といいます!中学一年生です。」

「俺は笹沢大河。モモとは同級生です。」




こげ茶の少女……千歳と黒髪眼鏡の少年……大河は、笑顔でそう自己紹介をする。

ふむふむ、と分析していた巴樹は、こちらも名乗っていないことに気がついて慌てて自己紹介を返した。




「え、えと、私は七橋巴樹といいます。高校一年生です。あ、葵君、一応自己紹介っ!」

「あ、はい…!………あの、華波葵、です。12歳です。」




巴樹の後に続き、そう葵も言う。


瞬間。

千歳と大河の目が変わった。

瞬きの間に一瞬にして葵の前へ行き、同じ目線にしゃがむ。


そして、ほぼ叫びに似た言葉を漏らした。




「わああ!やっぱりあお兄だっ!」

「名前も苗字も同じ……同一人物に間違いないな。」

「……………んんん??」




千歳のキラキラと輝く瞳に押されかけた葵。

だが、どうやら何かを思い出したようで、千歳と大河の顔をまじまじと見つめて呟いた。




「……………もしかして、ホントに千歳と大河?」

「お、おおお……!」

「…泣くな、モモ。……やっぱりあお兄か。」

「え?ホントに?……でも、僕の記憶の中の二人はもっと小っちゃかったような…………?」




ひしっ、と抱き着く千歳と、ほっとした表情で葵を見つめる大河。そして、何か考えるようなそぶりを見せている葵。

完璧に、巴樹は状況を読み込めていなかった。



ーーーーー


巴樹達四人は、駅から少し歩いたところにある一本の大きな坂【月見坂】にあるカフェ「カナウ」にやってきた。なんでも二人はカナウの常連らしく、働いている男の子に「やっほー」と声をかけてそのまま窓際の一番端にある席に座る。




「竜斗、いつもの。」

「あー、はいはい。………そちらの二人は?」

「あ、私は別に大丈夫です。」

「僕も大丈夫です。」




少しして注文を取りに来たさっきの男の子に大河はそう注文する。

巴樹と葵が遠慮してそう言うと、竜斗と呼ばれた彼は葵の顔をまじまじと見て不思議そうにつぶやいた。




「……え?あお兄………?」

「あ!竜!?……おっきくなったなぁ…………」

「えっ、葵お兄ちゃん?!嘘うそっ!」




すると、竜斗の声に反応した一人の黒髪ロングの少女が駆け寄ってくる。

どこかあどけないほんわりとした顔立ちの彼女は、目をぱちくりとさせて葵の顔を覗き込んだ。




「わぁ!ほんとに葵お兄ちゃんだ!」

「御代、いたんだね!さすがっ!」

「も、もう!さすがってなあに、ちとっ?」

「そーゆーお前らも『さすが』だな(笑)」

「…………なんか言った?竜斗。」




にこにこと笑顔で話し始める四人。

その姿を、巴樹は呆然と。葵は微笑ましく見守っていた。



ーーーーー



「巴樹さん、ほんと身内ごとですみません………」

「だ、大丈夫だよ!気にしないで!」




しばらくして、二人加わったカフェの席で、正面にいる千歳が巴樹に謝っていた。

苦笑いとともに巴樹は顔の前で手を横に振る。


すると、大河が静かに口を開いた。




「……それで、元の話戻るけど、あお兄は………華波葵さんは俺達の知り合いです。」

「うん。やっぱり……じゃあ、葵君は元はここに住んでいたの?」

「そーだなー………あお兄は月見坂より少し離れたところに住んでて、よく俺たちと遊んでくれたんですよー。」

「葵お兄ちゃんは、ほんとに私達のお兄ちゃんみたいに接してくれてすごく楽しかったんですよ!」

「でも………四年前、突然あお兄は消えてしまって………………」




千歳がそう呟くと、他の三人も寂しそうな表情を見せる。

その表情を見た葵も、悲しそうに呟く。




「…………ごめん…ごめんね心配かけて。」

「………じゃあ、葵君の記憶はここで終わりなんだね……でも、なんで最初の頃、月見町のこと思い出せなかったのかな?」

「分かんない…………ただ、千歳や大河の名前や顔は思い出せるのに、周りの情景だけが真っ白な世界で………風景は思い出せないのになんで顔や名前は思い出せるんだろ。」




カナウの店内が静寂に包まれる。

ほかにお客がいない店内は、やけに物静かで、それが逆に不気味だった。


不思議そうにつぶやいた葵に、ふと千歳がつぶやいた。




「ただ単に、この場所を思い出してもらったら困るんじゃないかな?」

「いや、それぐらいは誰でも分かるでしょ。」




だが、その呟きに大河が鋭いツッコミを入れる。

だけれども、六人には考えても仕方ないことぐらいわかりきっていた。




「あー、やっぱ、考えても仕方ねーよ。分かる訳ないって。」

「うん……」

「でも、葵君は千歳ちゃん達と無事会えたんだし!よかったんじゃないかな?」

「巴樹さんの言う通りだと思う。僕も久々に皆とあえてよかったよ。」




にっこりと微笑む葵。

その笑顔はまさに天使の微笑み。


巴樹は軽く悩殺されていた。




それから、巴樹と葵はお昼ご飯もごちそうになってから、四人とたわいない話をして睦月寮へと帰っていった。




その夜。

部屋へと帰ってきた葵を、とある人物が待ち構えていた。




「やあ!葵君。久しぶりだね!」

「………?!?!」




お風呂から帰ってきた葵は、数秒前まで暗かった部屋に明かりがついた瞬間、いきなり十二単姿の男性が正座してちゃぶ台の前にいたことに、声にならない叫びをあげた。


謎すぎる不法侵入者は、中性的な高音ボイスでこう言った。




「実はキミに提案があってきたんだ!」

「な、なんで裏声?」

「気分さッ!!」




キラリーン!とキメ顔をすると、不法侵入者基幸末陵はどこからか大きな扇を取り出し、口元に当てて()()をした。




「葵君、また、二十七族生に戻らないかい?」





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