其七十八
頑張って、やっと書き終わりましたぁ……。
お待たせしました、本当に。
『…………………【朧霞】』
戯れによってできた霧を吹き飛ばすように風を巻き起こし、龍風巴が形を変える。
闇、ただ闇だけが広がる草原に、一筋の光が差した。
太陽の光を受けて輝く細い片刃の刀身と深緑色の柄。
それを構える風華の緑色の瞳は、何かを楽しむように笑っていた。
『私、刀も得意なの。』
『ほう。気が合うな。』
黒光りのする龍闇伊を構え、祇夕もにこりと黒い笑みを浮かべる。
その笑みが二人きりの試合を開始する鐘の音の代わりだった。
キインッ
鉄と鉄のぶつかり合う心地よい音が草原へ響き渡る。
それから、幾度となくぶつかり合う光と闇
そのたびに光る刀
絡み合う視線
風華も祇夕も攻防ともに互角で、まるで時間を寄せ付けないようだった。
キインッ、キインッ、キンッ…………………
時折、風華が後ろへ跳び太刀をよけたり、祇夕の袴が揺れ白刃が横をかする。
『よくやるな、お前も。』
『………………………』
祇夕の言葉に、風華は何も答えなかった。
ただ、苦しそうに顔をゆがめただけだった。
『だが』
これで終わりだ
『光暗聖飛 黒霊』
祇夕の形の良い唇から、静かに流れる六文字の名。
少し離れた位置にいた風華にそれは半分しか聞こえなかったのだが、それだけで風華は理解したようで。
『霊弾幕……………あなた、霊弾幕が使えるの?』
『それはこやつのおかげだ。』
祇夕は自らを指し示す。
風華は巴樹の記憶をたどり、それがきいのことを示しているという結論に至った。
『だけど……………なぜ彼が霊弾幕のことを…………』
『ああ、我もよくわからぬが、こやつはどこかで霊弾幕を見たことがあるようでな。我はそれに少々手を加えただけのこと。………………それよりよいのか?』
『………………ッ!………………』
祗夕の周りから、風華をめがけて真っ黒な霊魂がとんでくる。
咄嗟ではあるが、そのまま横へ横へと転がりながら避ける。
『あなたが使うのなら、私も、使っていいのよねっ?!』
『霊弾幕の本流、見せてもらえるのならば光栄だな。』
『………………じゃあ、ご要望のままに!!』
風華の緑色の瞳がキラリと光り、彼女はつぶやいた。
天地聖風 白霊
風華の周りで鮮やかにまわる白い霊魂は、祗夕の放つ黒霊とぶつかり爆風を生む。
(う……やっぱり巴樹ちゃんの身体じゃ…本来の弾幕が出せないっ……………!)
額に脂汗を浮かべ、風華は霊弾幕の速度を上げてみる。
が。
(ダメッ……!体がもたないっ!)
速度をあげれば威力が落ち、威力をあげれば速度が落ちる。
なんとも言えない公式だ。
『どうした。先程までの威勢はどこへ消えた?』
ふいに、祇夕が言った。
その瞬間。
ほとんど一瞬だけ、祇夕の攻撃の手が緩いだ。
風華は見逃さなかった。
風龍唯一の龍術を使い、風華は祇夕との間合いを詰める。
そして、形を変えた風花【朧霞】の刀身を、祇夕の腹部へと、横滑りに当てる。
ここまでの動作は、わずか2秒にも満たなかった。
祇夕の周りから弾幕が消え、彼の口から血が垂れる。
それを見届けた風華は、祇夕の額に手を当てて、最後の作戦を実行しようと、右手に力を込めた。
だが、
それはできなかった。




