其七十五 風華目線
今回は、風華達の時代、平安時代に焦点が当たり、巴樹の前世、風華が主人公となります!
「祇夕さん!こんにちは!」
「………………………ああ。」
私ー風華ーは、目の前に現れた人影に笑顔で挨拶をする。
祇夕さんは、たまに都で会う行商の方で、すごくいい生地の反物や髪飾りを売っているの。
私も祇夕さんのお店のお得意様で、顔見知りなんだ。
「祇夕さんは、また仕入れですか?」
「いや、散歩。」
私の問いに、祇夕さんは即答で答える。
思わず私は苦笑いしていしまった。
すると、後ろから聞き馴染んだ明るい声が聞こえてきた。
「風華ぁ~!」
「雪華!どこ行ってたの?!」
私はくるりと振り返って、人をかき分けやってくる幼馴染に手を振る。
「ごめんごめん………………………南ちゃんをちょうど見かけたから………………………………」
南ちゃんは、私と雪華より二つ上の茶屋娘。
雪華とは、何かのお稽古事で同じらしい。
「そっか。」
「風華はなにしてたの?」
「それは、祇夕さんと………………………あれ?」
私が「祇夕さんとお話してたんだよ」と言いつつ振り返ると、そこにはもう黒髪の男性はいなかった。
あれ?どこ行っちゃったのかな?
私はきょろきょろと市中を見渡すが、どうやらいないようだ。
「風華?」
「………………………ううん。なんでもない。」
私はにっこりと笑って雪華に向き直る。
そして、予定通り雪華と共に、私の神社から少し離れたもう一つの神社へ向かった。
「こんにちはぁー、霊泉!」
「こんにちは!」
「ん………………………あ、ふうかちゃんにせっかちゃん。どうぞ。」
文神社の巫女である霊泉とは、巫女つながりでも仲良しであり、ここの神社を借りて行われているお稽古事の仲間でもある。
「あとわぁ………………にじほしちゃんだけだね。」
「あれ?まだ来てないの?」
「おっ、遅れてごめんなさぁい!!」
私と霊泉が少し話していると、そこで話題の主が境内に飛び込んできた。
虹星ちゃんは、十歳の陰陽師の女の子。
少しのんびり屋さんなんだ。
「おっ、揃ったね。」
「始めるよー。霊泉も風華も虹星も入ってー。」
本殿の中から、先生二人が顔を出す。
白拍子の紅黄様と、同じく白拍子の桃花様だ。
二人は、この辺りの貴族のお屋敷で舞っている、すごく有名な方達で、私達みたいな子に舞を教えてくれているの。
「はぁい………………」
「「はい!」」
元気よく返事をしてから、三人は一緒に本殿の中へ入っていった。
私と虹星、霊泉が本殿へ入ると、雪華と紅黄様と桃花様、そして、横笛の得意な紅赤ちゃんが座っていた。
私達も、急いで自分の席に座る。
「それじゃあ始めます。皆、扇を持って。」
「「「「はーい!」」」」
まず、二人がお手本を見せてくださってから、私達も舞い始める。
舞は、体の全神経を集中させて行うから、その分疲労感がかなりある。
「よし!じゃあここまで!」
「「「「ありがとうございました……………………………」」」」
だから、初めの挨拶と終わりの挨拶の違いは一目瞭然なの。
「つーかーれーたぁーーーーーー」
「雪華、大丈夫?」
帰り道、へとへとの雪華に、普段仕事で体を動かしている私は苦笑いしながら言う。
雪華は、「だいじょ、ぶ………………………」、と、今にも昇天しそうな弱々しい声だった。
私は、「なにかあったらちゃんと言うんだよ?」と一応言っておいてから、近くの茶屋の長椅子に雪華を座らせてあげて、頂いたお茶とお団子を雪華と共に食べ始めた。
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「祇夕、遅いぞ。」
「すまないな。少し町中で知り合いと話していた。」
「ったく…………自由人だな」
「だが、優輝、準備は整ったのだろう?」
「お前のその目は千里眼か?」
「落ち着け優輝。いつものことだろ。」
「分かっているさ、闇祓。いつものことだな。」
「じゃあ、はじめるか。」
黒き闇夜の宴を
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私が雪華を家に送り届け、神社に帰っていた時のことだった。
突然、明るかったはずの空が少しずつ陰っていく。
「………………………なに?」
警戒した声を出し、私は扇を取り出す。
黒く染まっていく空は、あっという間に都中を覆ってしまった。
わたしは瞳を細くさせ、姿の見えぬ敵を待つ。
その時だった。
耳障りな高い音が辺りに響き渡る。
「っ?!」
耳を背け、目を閉じる。
だが、その音はすぐに消えてしまった。
だけど。
私は目を疑った。
そこには、
都中を覆う真っ黒な蔓と
同じ色彩なのに栄えて見える大きな球体が浮かんでいた。
私は思わず息をのんだ。
「大変、だわ…………………………」
次回は現代に戻り、御子戦です。




