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ドラゴンすくらんぶる!  作者: 葉月 都
第㭭章 消滅し人影、再生せし悪夢
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其七十三

お待たせしました!




「な、なんで、軈乃球が、復活してるの!?」

「巴樹ちゃんが、ちゃんと封じ込めたはずなのに!」



巴樹と奈濟さんの叫び声が、リビングに響き渡る。

その声に気が付いた源人と冷斗が、光の速さで窓際へと移動し、二人と同じように言った。



「は……………どういうことだ?」

「ちょ、何が起こってんの!?」



その時。

窓に張り付いていた四人の目に映ったのは、軈乃球だけではなかった。


しゅるしゅるしゅる、と、軈乃球からのばされる蔓………真っ黒な蔓が、伏見町を覆っていく景色だった。


それは、巴樹達にはとてもゆっくりなようで、十秒にも満たなかった。


あっという間に伏見町を囲んだその蔓だけを見れば、まるで大きな植物園のようだ。

傍から見れば幻想的な光景に見えるだろうが、ごく一部の人達には、その蔓は別の意味を持つ。



「…………………行かなきゃ。」



突然、巴樹がぼそりとつぶやいた。



「え?」



そのつぶやきに反応した三人が、一斉に巴樹を見る。

三人はびっくりしたような表情で振り返ったが、一歩後ろに下がった巴樹の顔を見て、一瞬にして心配の色を見せる。


巴樹は、真っ青な表情で、何か恐ろしいものを見つけたような目をしていた。


そして、再びつぶやく。



「…………………………行かないと。」



その一言が、巴樹の体を縛る呪縛を解き放った。


刹那


今までに見たこともないほどの速さで、巴樹は慌ただしく玄関を通り抜ける。

開け放たれたドアからは、生暖かい風が水の香りを運んで、残された奈濟達の鼻孔を擽る。



それは、奈濟達が予感した……………いや、予感"していたはずのこと"を、静かに物語っていた。












「嫌だ…………嫌だ…………嫌だ…………!嫌だっ!!」



一心不乱にどこかへと向かう巴樹の口からは、今起きている事態を信じたくないと逃避する言葉が淡々と述べられている。



「違う…………違う…………違う……………!違うっ!!」



首を振って、自らの考えをどこかへ飛ばそうとする。

あまりにも強くふるので、首が取れてしまいそうだ。



「知らない……………知らない……………知らない……………!知らないっ!!」



走り続ける巴樹の瞳からは、大粒の涙が風に乗って後ろへと運ばれる。

巴樹は、その雫を必死にぬぐいつつ、足は止めない。



「そんなわけない………………そんなわけない…………そんなわけない……………!そんなわけないもんっ!!」



はあ、はあ、はあ、

荒い呼吸は、距離が増すたびに激しくなる。



「違う…………違う…………違う…………!違うからっ!!」



すると。

突如、巴樹の目の前に人影が現れる。



「「!!!」」



だが、巴樹が気が付いたのはまさにゼロ距離。

気づいた時には時すでに遅し、であった。



「っ………………………」

「ったぁ………………」



十字路の真ん中で座り込む二人。

巴樹は、はっと気がつき、急いで立ち上がって頭を下げた。



「ご、ごめんなさいっ………………!」

「………………………巴樹、ちゃん?」



聞いたことのある凛とした声。

びっくりして巴樹が顔を上げると、そこにいたのは見知った姿。



「佳穂、さんっ?!」

「やっぱり巴樹ちゃん!大丈夫?」



途端。

巴樹の体に重力が戻ってきて、ぺたんとその場に座り込む。


そして、突然今まで流したこともないほどの多さで、巴樹は大泣きし始めた。



「えっ…………えっ?!」



突然のことに、いつも(?)冷静沈着な佳穂がおろおろとする。

だが、しばらくして状況を理解しゆっくりとしゃがみこむと、静かに巴樹の背中をさすってあげた。

そして、巴樹が泣き止むまでその場にいた。









「落ち着いた?巴樹ちゃん。」

「…………………はい。ありがとうございます、佳穂さん。」



ハンカチで残った涙を拭く巴樹は、佳穂ににっこりと微笑む。

その顔を見て、佳穂も安心したように笑い返す。


だが、すぐにまじめな表情に戻り、上を見上げる。



「でも、この空、一体何なのかしら………………」



すると、そのつぶやきに巴樹がぼそりと言った。



「…………………黒の御子、です。」

「え?」

「黒の御子の、復活です。」



先ほどの笑顔とはうって変わって、巴樹は再び真っ青な表情に戻って軈乃球を見る。

上空に浮かぶ軈乃球は、巴樹が睦月町で見た時よりも少しずつその大きさを増している。


佳穂は、巴樹のその言葉にぴくりと反応した。



「………………………きいくんが?」



その名前に、巴樹は静かにコクンとうなずく。

そして、悲しそうにその緑色の瞳を細ませた。



「この町を覆っている蔓は、闇結界です。

きっと、私達を閉じ込めるためです。」



巴樹のその言葉には、どこか決意のようなものがこもっていた。

佳穂は、淡々と語る巴樹を、寂しそうに見つめていた。





巴樹ちゃんがむっちゃ怖く見えるのは私だけ?

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