其六十九
過去バナから入ります
短くなりまし、ごめんなさい!
『ッ?!』
突然のことに、奈濟は驚く。
なぜなら奈濟の幻術の腕は、睦月寮の中でも一番で、たくさんの幻を一度に出すことができるのだ。
奈濟の通り名は、『幻術師』。幻術に特化した龍精だと言われている。
しかも、幻術だけを磨いてきた奈濟の力は、並の龍精には負けない。
だが、その奈濟の幻術を、少年は一瞬で消し去ってしまったのだ。
『え?ど、どうして…………………………?』
思わず疑問の声が口から漏れ出してくる。
その時、奈濟は初めて気が付いた。
彼の水色の瞳が、少し黒く染まっていたのだ。
『…………………………ここ、は?』
すると、ふいに彼が言葉を発した。
その声は、どこか寂し気の混ざった低い声だった。
戸惑いつつも、奈濟は答える。
『ふ、伏見町の、睦月寮、だけど……………………………』
『…………………………そ……………………………』
そう短く答えると、再び彼は口を閉ざしてしまう。
すると。
突然、雨を切り裂くようなお茶目な声が二人の耳に届いてきた。
『まあまあ!!そんなとこにいちゃあ、二人とも風邪ひいちゃうぞ☆とにかく、中に入らなきゃぁ……………』
そして、ふらりと現れた長身の男の姿に、奈濟は絶句した。
『りょ、陵様ッ?!』
それは、今とほとんど姿の変わらぬ、笑顔の陵だった。
もちろん、会などで顔を見ているため、奈濟は反射的に頭を下げる。
『まーまー、そうかしこまらないでよ~。せっかく赤羽に見つからないように来たんだし。はいろーよー』
まるで、睦月寮が自分の家かのように、陵はすたすたと寮の玄関に歩く。
だが、途中で後ろを振り返り、その目に少年の姿を映すと、口元だけの微笑を浮かべ言い放った。
『もちろん、キミもね?』
少年は少しの間の後、静かに奈濟の前を通って、寮の玄関へ向かう。
そんな二人の姿を見ながら唖然としていた奈濟は、なんとか二人の後を追い、続いて寮へ帰って行った。
『ナッ、奈濟さん~~~!!??どどどどど、どういうことですかっ!!』
入ってそうそう、理衣の可愛い叫び声に飛びつかれた。
他の三人も、突然やってきた龍精の現トップと謎の少年にパニック状態。
(まー、そうだよね……………………………)
奈濟は苦笑いしながら、恐る恐る緑が手渡したタオルで髪を拭く少年と、何故かまったく濡れていない陵に向かって問いかけた。
『そ、れで、陵様。この子とは知り合いなのですか……………?』
『んー?まー、そんなとこ?』
なぜか疑問形で返し、陵はぽんっと隣に立つその少年の頭に自分の大きな手のひらをぽんっと乗せる。
が、嫌悪感に満ち溢れた眼差しを向けられながら振り落とされた。
『痛いよぉー』とわざとらしく言っていたが、周りの空気が少々変化しつつあることに気が付き、陵は苦笑いして真剣な顔に戻る。
『ま、それはどうでもいい。
単刀直入に言う。
この子は、"黒の御子"だ。
まあ、今は力が封じられているけど。』
『『『『『………………………………は?』』』』』
突如発せられた、自分達最大最厄の敵の名に、五人の口から異口同音に不思議な声が出てくる。
それもそうだ。
その最大の敵が、今、自分達の目の前にいる、小学生ぐらいの男の子だと言われたら、それは驚くしか方法がない。
いきなりのことに、冷斗と源人と理衣の年下組は口を半開きにして固まり、緑は無表情で目だけ大きく見開いており、奈濟は半分魂が抜けかけている。いや、ほぼ抜けている。
だが、なんとかモアイから解放された源人が、陵に四人の心の声を代弁した。
『まさか、俺達は黒の御子と一緒に暮らさなきゃいけないんですか!?
そんなの、絶対に無理ですよ。いつ復活して、俺達が標的にされるかわかんないんですよ!?』
『もちろん分かっているよ。
分かっている上で君たちに頼みたいんだ。』
『………………………理由を聞かせていただきませんか?』
冷静になった奈濟さんが、陵と源人の間に入り、陵に問いかける。
すると、にっこりと笑い陵は話し始めた。
ちょっと長くなりそうなので、次回も過去バナからになります




