其六十四
お待たせしました!
次回は、元の時間に戻り、巴樹の部屋で利人&佳穂の話しが終わった頃です
ーーーーー【佳穂・悠ペア】ーーーーー
(あれ……………この気配と力………………)
ふいに。
佳穂は、目の前のクラを見上げて思った。
先ほどの悠の技によって撹乱させられ、クラは逃げようと、もがいていた。
「でも……………特に気にしないでいっかな。」
ふふっと笑うと、佳穂は言った。
「南光龍聖龍士」
すると、佳穂の周りを黄色と金色の混じったような色の光がまとい出す。
そして、その光は徐々に黄色の龍へと変化していく。
すーはーと息を吸ってから、佳穂は、自分と同じような光をまとう光輝を見つめて、こうつぶやいた。
「さ…………久々によろしくね…………。」
すると、光輝をまとう光が、佳穂のつぶやきに答えるようにゆっくりと一度点滅する。
その点滅を見て、佳穂は優しく小さく微笑み、金色の矢先を黒い物体にむけて言った。
「神想大封印【天照大日 光】」
矢が放たれると同時に、まるで、ロケットが発射するときのような爆風が辺りで巻き起こる。
そして、弾丸のようにクラの頭の真ん中を突き抜け、更なる爆風が学校を襲う。
だが、しばらくして風が収まると、屋台を荒らしていた巨大怪物は、跡形もなく消え去っていた。
「っ………………………!」
その瞬間。
がくっと膝から地に落ちる佳穂。
はあ、はあ、と荒い息遣いで、佳穂は土に手を置く。
いつのまにか、佳穂を纏っていた金色の龍は消えてしまっていた。
「………やっぱ、無理しちゃダメだね……………」
真っ青な空色をしたアリスの衣装は、土埃で汚れてしまって、所々破れている部分もあった。
だが、そんなことなど気にもとめず、あはははは…………と静かに苦笑いして、そうつぶやいた。
その頃。
「………………黒亜の、斎賀か。……」
「良くお分かりで。さすが、二十七族生一の“情報屋”」
「…………その呼び名、ムカつくからやめろ。」
木の上で疲れ果てていた悠のもとに、黒っぽい肌とは逆の真っ白なタキシードを纏った一人の男性が現れていた。
悠は、静かに体を起こすと、その男性………黒亜・斎賀に向かって言った。
「何の用だ。なぜ、俺の前に現れた。」
警戒心を解かずに問いかけると、斎賀は優雅に一礼してからこう続けた。
「先ほどの素晴らしいショーに、我等が主人に代わりお礼を述べに参りました。」
「“ショー”だと………………?」
悠が、眼光を鋭く細めて斎賀に殺気を放つが、それを気にももとめずに、彼は続けた。
「それに差し当たりまして、こちらでパーティを開きますので、そのパーティに、二十七族生の龍精の方々二十八名……いえ、今は“二十七名”でしたね。………皆様をお招きいたしたいと、主人より言付かってまいりました。」
にやり、と口元に気味の悪い笑みを浮かべ、丁寧な口調で斎賀は言う。
「………パーティ……………」
「はい♪」
嬉しそうな黒い笑顔で、斎賀は悠のつぶやきに答える。そして、得意げな表情で続けた。
「【約一ヶ月後】、
また改めて招待状を送らせていただきますので、少々お待ちいただきます。それまでに極上の
刃と命を
ご用意願います。
こちらも、最高級のおもてなしを、誠心誠意させていただきます。」
再度、斎賀は優雅な礼をすると、霧のように空気へ溶けてしまった。
残された悠は、ギリッと奥歯を噛みしめ、奥に立てかけていた黒天の柄を掴んでつぶやいた。
「く、そ…………………っ!」
力を強めれば、黒光りのする柄が壊れてしまうのではいなかと思うぐらいの圧力で握りしめ、悠は悔しそうにもう一度叫んだ。
「くそぉ…………………!!」
キラキラと輝く槍の先は、木漏れ日の日光を微かに反射し、枝葉で隠された暗闇を、静かに小さく照らしていた。
ーーーーー【??】ーーーーー
「っ………どこいったんだ………!?」
そう悔しそうにつぶやきながら、彼は敷地の中を駆けまわる。
もう、かれこれ二十分ほど探し回っており、それに加えて五月だがこの猛暑。
彼の額には汗がにじんでいた。
と、その時。
彼の脳裏に、ある一つの建物が思い浮かんできた。
簡素なプレハブ小屋。
この学校の中で、唯一昔からある建物…いや、"小屋"だ。
黒ずんだような青色をした屋根に、それ以上黒ずんでいる灰色の壁。
約四年ほど見ているその小屋の形、色、そして場所は、瞬き一度で思い出すことができる。
「まさか、な………………」
嫌な予感を胸に、彼はその場所へ駆けていった。
ーーーーー【利人】ーーーーー
「っ…………どこ行ったんだ…………?」
あの巨大クラが佳穂によって祓われ、人々の避難も無事終わり、利人は消えた巴樹を探していた。
あの時。
ふとした瞬間に、反対側で避難誘導をしていた巴樹が消えてしまっていた。
探しに行こうにも、人波が速く、どうあがいても戻されてしまう。
利人は、巴樹がこの人混みでどこかへ流されてしまったのだろう、落ち着いてきたら自分で帰ってくるだろう、と考えたのだ。
だが、あれから約三十分。
一向に姿を見せない巴樹に、利人は心配になって、こうして捜索しているのだ。
(ったく……………世話の焼ける姫……………)
内心、誰かさんのように毒づく利人だが、きょろきょろとさまよわせる視線は、ずっと巴樹を探している。
「おーい…………………ん…………………?!」
声を上げて、巴樹の名を呼ぼうとすると、その青い瞳に見覚えのある二人の少女が映った。
(は……………な、な、なん、でっ、お前がいるんだよっ!?)
その中の一人の姿に、利人は気が動転した。
そして、その少女に慌てて駆け寄り、肩を揺さぶる。
「おま……なんでいるんだよっ?!"柴"っ?!」




