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ドラゴンすくらんぶる!  作者: 葉月 都
第漆章 皐月の組紐と予感
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其六十二


「な、な、なんでまた、学校に……………」



巨大怪物を見上げて、巴樹は真っ青な顔でつぶやく。



「この学校、呪われてないよね?」



あはは…………と自分で言っておいて苦笑いする佳穂。

その他二名は呆れた顔で、クラを見上げている。



「って!大変だよ!!ここでぼぉーっとしてる場合じゃないっ!」

「「「!?」」」



そんな空気を破り、突然巴樹が大きな声で叫んだ。

その声に、三人がビクリと肩を震わせ巴樹の方を見る。



「急がないと、皐月祭りに来ている人達が危ないよっ!!」

「ん。確かに!………………じゃあ、私と悠はあのクラを祓いに。巴樹ちゃんと利人さんは皆さんの誘導と、結界の発動を!!」

「了解っ!」

「「了解」」



佳穂が迅速に役割分担を言い渡すと、四人はそれぞれの場所へ走り去っていった。







ーーーーー【巴樹・利人ペア】ーーーーー


「こっちでーす!」

「早く、校舎の中へ!」



大きな声で、二人は数百人を誘導する。

騒めきで聞こえにくくても、人の流れに身を委ねていれば校舎の中へ嫌でも入らなければならないだろう。


その時。



「うわぁーんっ!!」



どこからか、小さな女の子の泣き声が聞こえてきた。

その声に、巴樹のレーダーがピクンッと反応する。


とっさに辺りを見渡すと、巴樹は先ほどまでいた第一体育館のスロープへ駆けて行った。

「あ、ちょ!」という利人の制止も聞かずに。



「だいじょぉ…………………………むぐっ!!」



慌ててその子に駆け寄ろうとすると、突如、誰かに口をふさがれる。

そのまま、巴樹の抵抗もむなしく、どこかへ口をふさがれたまま引っ張られていった。









ーーーーー【佳穂・悠ペア】ーーーーー





巴樹と利人と別れた佳穂と悠は、全速力でクラの元へ走る。

と、突然悠が佳穂につぶやくように言う。



「お前、この前の傷、まだ完治してねーだろ。」

「………………やだな。もう大丈夫だって!」



いつもと同じ無表情で悠は問いかけるが、佳穂は、少しの間の後、笑顔で答える。


実は、悠の言ったことは本当なのである。

軈之球の事件の時、利人が佳穂に行った儀式【仮華龍けいかりゅう】の副作用は一週間なのだが、その後佳穂が無理して動き回ったせいで期間が延び、佳穂は走るので精いっぱいなのだ。


それを気づいていた悠が、心配して言ったのだが、佳穂の優先事項は「クラを祓うこと」。聖龍士になった時に、佳穂は決めたのだ。祓うことに、自分の事情を挟まない、と。



「…………………そ。」



悠は、それ以上深くは問わず、立ち止まった。

いつの間にか目の前にはお目当てのクラが。



「言っておくけど、後でぶっ倒れても知らないから。」

「なにきいくん化してんの。」



佳穂は、悠の言葉に苦笑いしてから、光輝を取り出し矢を番える。



「久々にやるから、当たらなかったらごめんね。」

「間違えて俺に当たらなければ、それでいい。」



悠も黒天を取り出して、その先をクラに向ける。



「もう一度言うが、俺の技はあくまで撹乱だ。力貸してやるから、久々に暴れろ。」

「お気遣い感謝」



そう言い残して飛び上がった悠に、佳穂は小さく笑って言う。

だが、その言葉はクラの嘶きによって消えていった。







クラの目の前までやってきた悠は、にやりとチェシャ猫のような顔で言った。



「言っておくけど、うちの幼馴染はすごいからね。」



服は劇の時のままの執事服だが、悠はそれを優雅に着こなしていて、まったく動きにくくないようだ。


悠の言葉に答えるように、クラは地を揺るがすような大きさで叫ぶ。



「悪いけど、これ以上あの映画のパクリ描写はダメだから。」



黒天の先を突き出すと、その槍先に真っ黒な靄のようなものの球体が現れる。

しかも、それは徐々に大きくなっていく。






「【黒波優輝】」






何もかもをのみこんでしまうブラックホールのようなその球体は、ぐるぐるぐるぐると渦を巻き、クラをあっという間に覆っていく。



「っ、はあ……………………。」



放った球体の爆風の反動で、少し後ろまで飛ばされる。

悠は、またもやにやりと笑い、つぶやいた。



「なぁんだ………………"あいつ"の力が入ってんのか………………」



いまだ精神統一中の佳穂を視界にとらえると、悠は自分の龍符を取り出すと唱えた。



「結界開放」

(俺の今の力じゃ護り切れないかもしれない。でも………………こっちには、"あの子"がいるし)



放った龍符は徐々に光に変わり、悠の後ろの校舎を囲うように広がっていく。

大きなメタセコイヤの木の太い枝に立つと、悠は安堵したように笑った。

次回は、巴樹・利人ペアの話から始まります。

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