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ドラゴンすくらんぶる!  作者: 葉月 都
第漆章 皐月の組紐と予感
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其五十九


『巴樹ちゃん、封じ込めの力の力量って、巴樹ちゃんの気龍を百として、どのくらいだと思う?』



突如現れたみゆの進言で、風華の話が始まった。

巴樹は、風華の問いにきょとんとしながらぽつりと言う。



「ええっと…………五十くらいでしょうか?」

『ぶっぶー!正解は、九十だよ!!』



手でばってんを作り、風華は笑う。



「えええ!?そんなに、ですか?」



正直そこまでとは思っていなかったので、巴樹は大げさと言われそうなほど驚く。

にっこりと笑い、風華は続けて言った。



『まー、それは"普通"の状態の時ねー。

分龍の儀の"もう一つ"の力のおかげで、巴樹ちゃんは今まで大丈夫だったんだよ。』

「?」



再び意味深な言葉が出てきて、困惑が深まる巴樹。

だが、みゆとゆゆは何か心当たりがあるようで、顔を見合わせ驚きの表情を見せている。



『分龍の儀は、儀式を行った者の魂と意識を分離させるのは知ってるよね。

そして、分離するのはそれだけじゃなくて……その人の【力】も分離されるんだ。』

「力も!?ですか?!」


『うん。

だから、巴樹ちゃんの中にある力は、私の【魂】に宿っている力で、封じ込めの力も二分の一、またはそれ以下なのよ。でも、龍精としての力は【魂】の方が多いから、巴樹ちゃんが病弱ぎみなのもそれが伝わってるのかも。

ごめんね。』


「そ…………そうなんです、か……………」



しょんぼりとした表情で、風華が少しうずくまる。

すると、みゆが補足するように小さく言った。



「巴樹様…………風華様は、来世の封じの姫の負担を少しだけでも軽くしようと、多大な力を使って分龍の儀を行われたんです。そこだけは……………」

「大丈夫だよ、みゆちゃん。ちょっとびっくりしちゃったけれど、風華さんが悪いなんて思ってないから。」



心配そうなみゆに、巴樹はにっこりと微笑む。

嘘でもなにものでもなく、巴樹は本当にそう思っていた。


(封じの姫っていう役目は、とっても重いものだってことが最近分かってきたから…………風華さんは残してくれた大事な力を憎んだりしない…………むしろ、もっと頑張らなきゃって思うよ。やっぱり、体が弱いのが力が強すぎるからっていうのはちょっと悲しいなって思ったけど、それも【運命】なんだろうから)


歯をかみしめ、巴樹が強い意志を改めて持ったその時。



『あ………………もう時間切れみたい…………………』



突然、風華の寂しそうな声が部屋に響いた。

はっとして、三人が風華の方を見ると、風華の体が今にも消えてしまいそうなぐらい薄くなっていた。

もともと幻影なのだから薄いのだが、もう、ガラスに極小の汚れがついているぐらいな感じの薄さだった。



「え…………………」

『力にも上限があるから…………でも……また………会える、よ…………』



そう言う風華の声も、もうとぎれとぎれで。

みゆとゆゆは、静かにその様子を見守っている。



『気をつけ…………こが………ふっか…………きぼ………ちつづけ…………きる!!!』



風華は、必死に巴樹に何かを伝えようとしたようだが、再び緑色の光に包まれ、消えてしまう。

三人は、あの時のように目をつぶる。


瞼を開けると、テーブルの上には巴樹の若草色の扇が、きちんと折りたたまれて置いてあった。


しばらくの間、三人に会話はなかった。







「ダメ…か………」



その日の夕暮れ時。

辺りが本で覆い尽くされている、図書室のような場所で、一人の少女が何冊、何十冊もの本を読みふけっている。

そして、一冊読み終わるごとに、深い深いため息をつく。



「やっぱり…待つしかないの?」



悲痛なその叫び声は、多くの本の間に吸い込まれていく。


手に持っていた本に額をつけ、少女はまたもや大きなため息をついた。






「……………………。」



同じ頃。


茜色に染まった空を寂しげに見上げる一つの影が。

灰色の通学カバンを肩にかけ、澄んだ海色の瞳を空に向ける。



「……………残酷なもの、だな。」



眼差しも声も寂しげで、どこかむなしい。


その影は、カバンを握る拳を強く握りしめ、つぶやく。



「"運命"とは、残酷なものだ……………」



再びそうつぶやくと、その影はどこかへ去っていった。







まったく同じ時。



「綺麗………」



窓から茜の空に見惚れる少女がいた。

窓枠に腕をのせ、口角を自然に上げている。



「………………。」



彼女の後ろには、ふわふわとした毛並みの三毛猫をなでる長い黒髪の小さな女の子。

その女の子の瞳は、少し悲しそうに細められている。



「もっと……………強くならなきゃ…………………!」



彼女の強い志の言葉は、茜空にとけるようで。

神様に、その切実な願いは届いたのだろうか…………








そうして、ときは、通らなければならない"運命のさだめ"の回転の軸を動かす












4月15日 すべての部分を少々改良します。変更点は、


・会話文・解説文の改行数の変更

・あとがきのコーナー入れ

・その他の細かな修正


しばらく時間がかかります。

その間、ドラすく投稿を一時停止します。

デビプリも1~5話辺りの修正をするので、そちらも止まります。

終わり次第、投稿していきます。

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