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ドラゴンすくらんぶる!  作者: 葉月 都
第陸章 災いの始まり
54/94

其五十三

遅れて申し訳ないです!

ちなみに、この回は、最初の少しが巴樹目線で、後は通常の三人称に戻ります。


次の日。


「き、きいくん!!」


学校の通学路で、なんとかきいくんに接触することに成功した私は、すたすたと早足で歩くきいくんを呼び止めた。

すると、きいくんがこちらをちらりと振り向き、絶対零度の冷たい瞳で言った。


「……………なに。」

「え、えと、あの…………」


「最近なにかあったの?」とか、言いたいことはたくさんあったはずなのに、他人行儀なきいくんの態度に、頭が真っ白になってしまった。

口をパクパクとさせていると、まったく表情を変えずにきいくんはくるりと前を向いて言い放つ。



「用事ないんなら、呼び止めるな。」

「あ…………………!」


また歩き出すきいくんへ、私は手を伸ばすけれど、その手は空を切っただけ。


なにも掴めなかった右手を見つめ、私はふと思った。



…………消えちゃう………………

きいくんが、消えちゃう…………………


いつか、この手で触れられなくなる…………………



目の前が真っ黒に塗りつぶされていくようだった。


心の中を支配する孤独感を、5月の若葉の香りがのった涼しげな風は運んでいってはくれなかった。



その時。


「……………っ……バカか。あいつっ!!」


学校につき、人気のない階段に座って、一人つぶやくきいがいた。

苦しそうに歪められたその顔は、微かに赤く染まっていた。


「決心が鈍るじゃねーかよ……………バーカ……………」


きつく握りしめられた拳を睨みつけ、きいは再び言った。


「くそっ………………!」


ねこっ毛の黒髪を自分でわしゃわしゃとかき乱すと、きいは静かに立ち上がって教室へと戻っていった。




「あ、おっはよー!巴樹ちゃん!」

「おはよー!鳴海ちゃん。」


教室についた巴樹を出迎えたのは、向日葵のような笑顔を浮かべた鳴海だった。

鞄を肩から降ろすと、さっそく机にやってきた鳴海が、開口一番こう言った。


「巴樹ちゃん、巴樹ちゃんって好きな人いる!?」

「ふお??!!」


がこっ、とすごい音を立てて、巴樹が椅子から落下する。

言葉を発してから落下するまでの速さに、鳴海は驚きつつも巴樹を起こす。


「だ、大丈夫?」

「う、ん…………!」


やっちゃったぁ、と苦笑いしながら、巴樹は椅子を立てて座り直し、改めて鳴海を見上げた。


「えと、どういう経緯でそういうことになるの?」

「あ、そうだった!あのね、うちの学校では学校名に由来して、五月の最終日に、学校でお祭りがあるの!しかも、文化祭とは別なんだよ!!」

「へぇー!」


確かに、皐月学園の「皐月」は、昔の言い方で五月を表している。


「それでね、その皐月祭りの時に、青緑色のミサンガが配られるんだけど…………」


鳴海の話によると、そのミサンガの中には、『早苗結』という特別な物があり、それだけはミサンガではなく、特別な組紐なのだという。

そして、その早苗結をカップルで持つと、永遠の絆が約束される…………

そういうジンクスがあるそうなのだ。


「ほぉ……………」


ぽかーんとして、小さくうなずく巴樹だったが、


(ミサンガと組紐って、同じものじゃなかったっけ?)


と考えているのであった。

そんな巴樹に気づかず、鳴海はうっとりとした目で言った。


「友達同士でデコって、友情の証にしてもいいけどさぁ、やっぱり、


好き人とがいいよねぇ…………!」


「「「「「「「「「「「「ねぇーーーーーー!」」」」」」」」」」」」


「?!」


いつのまにか集まっていたらしい、クラスの女子達が口をそろえて言う。

そして、その全員が全員、熱に浮かされたようにうっとりとしている。


パチパチと瞬きをしていると、鳴海ちゃん+女子全員がぐいっと巴樹に詰め寄り、一斉に叫んだ。



「「「「「「「「「「「「「巴樹ちゃんは!誰か好きな人がいるのっ??!!」」」」」」」」」」」」」



あまりの迫力に、唖然とする巴樹。

しばらく言葉を失っていたが、やっとこさ言葉を見つけ言った。


「あのー、私思うんだけどさ、」


苦笑いを浮かべ、巴樹はつづけた。


「言いたくないことを無理に強制するのは、あんまり良くないと思うな。誰にだって、秘密にしておきたいことはあるでしょ?」


その時。


(え…………?)


一瞬、周りにいる女子全員から、黒い煙のようなものが立ちのぼるのが視界に映る。

そして、その黒い煙が現れたその瞬間、巴樹を睨みつけるかのように、みんなの表情が無表情になる。


だが、それは一秒もなく。


「そ、そうだねっ、ごめん!巴樹ちゃん。」

「無理強いさせちゃったかな?」

「気にしないで!」


謝りの言葉を巴樹に投げかけてくれる。

あの無表情だった顔も、あっという間に笑顔になっていた。


「ううん、大丈夫だよ!こっちこそ、偉そうに言っちゃった。」


自分からも謝りつつ、巴樹は先ほどの光景を、ただの見間違いだと、脳内から抹消させた。








きっと。







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