其四十一
少し短くなっちゃいました。
でも、やっと出てきますよーっ!?
「ん~………」
巴樹は、まだ眠たげな瞳を開き、少しだけ頭を上げる。
肩にかかったフリースが、ぱさりと床に落ちた。
「あ、れ?」
一瞬記憶がなくなっていたが、すぐに戻ってきた。
(そ、そうだ……私、あのままきいくんの部屋で…………。)
ボヤ~とした部屋の風景を見ながら、巴樹は思う。
パチパチと何回か瞬きをしていると、だんだん景色がはっきりとしてきた。
きょろきょろと辺りを見ていると、巴樹の目に、窓辺に手をついて眠るきいの姿が映った。
(ふふっ………なんだか子供みたいっ。)
微笑ましく見守っていると、そこで初めてきいの肩に何もかかっていないことに気が付く。
ゆっくりと近づくと、掛けてくれていたフリースをきいの肩に掛けてあげようとする。
すると、ふんわりと、どこか甘ったるい匂いが巴樹をまとう。
その香りに、ぶるるっと身震いをして、巴樹は思った。
(っ………な、なんだか、思考がとろけそぉ………。)
一度かいだら、頭から離れなくなりそうなその匂いに半分負けつつ、巴樹はフリースを掛けてあげた。
すやすやと眠るきいを見て、起こさないようにゆっくりとベットから降りる。
音を立てないよう、最小限の動作でドアを開け、巴樹は小声で言った。
「お休み、きいくん」
一階に降りると、何か利人と佳穂が真剣な顔で話し合っていた。
寮員達は、それぞれの部屋に戻っていったようだ。
トントントン、と足音を立てて近づいていくと、二人がびっくりしたようにこちらを振り返った。
「っあ………なんだ巴樹ちゃんか。びっくりした。」
「なに?」
「え、いや、別になんでもないんですけど………。」
そこまで言って、一つだけ気になったことを思い出し、なんとなく二人に問いかけてみた。
「でも、なんであんなにきいくんは眠ってるんですか?まるで術にかかったみたいに。」
二人は顔を見合わせ、なにか目くばせした後、利人が口を開いた。
「じゃあ、これだけなら言ってあげる。
あんたの読み通り、きいは、
術にかかってるんだよ。
というか、体が疲れたんじゃないの?」
意味深な利人の言葉に、首をかしげる巴樹に、苦笑いしながら佳穂が付け加えた。
「まあつまり、あの昏睡状態は、術の副作用みたなものだよ。」
「へーぇ………。」
ほうほうとうなずく巴樹。
「利人さんは、言葉が足りなすぎるよ、どっかの誰かさんみたい。」と佳穂は利人をにらみながら言う。
その時。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……………………!!!
ものすごい地響きがして、食卓の上の調味料や、キッチンのグラスやお皿が大きく揺れる。
三人は辺りを不安そうに見渡して、誰からということもなく外に飛び出す。
「利人さんっ!割れ目はどこっ?!」
「あっちだ!!」
いまだ鳴りやまない地面の鳴動に揺れながらも、三人はあの空地へと歩みを進める。
「どこへっ!?」
声を響かせて巴樹が聞くと、佳穂が焦ったように叫んだ。
「軈之球のある場所!!!!」
「っ?!」
その言葉に驚きながらも、一生懸命着いていく巴樹。
すると、ふと空を見上げた巴樹は、あるものを目にした。
「あっ、あれっ、て!?」
その声に気付いたのか、前を走る二人も空に目をやる。
真っ青な青空に、見覚えのある紫と黒の勾玉が二つ合わさった形をしたあの球体………
しかも、尋常じゃない大きさの。
軈之球
が、出現していた。
一瞬で、青かった空が赤黒く染まる。
そして、どこからかクラの声も聞こえてくる。
「っ………仕方ないっ!!」
悔しそうにそう吐き捨てると、佳穂は黄色の符を取り出し、叫んだ。
「全体個別結界開放!光龍っっっ!!!」
苦しそうな表情を浮かべ、黄色い光を放つ佳穂。
すると、佳穂の中から、一匹の金色の龍が現れ、天高く上っていく。
上空で、その龍がはじけた。
そして、伏見町全体に散らばっていく。
バタリ
地面に崩れる音がして、巴樹が視線を移すと、
コンクリートの道に、佳穂が倒れこんでいた。




