其之十六
いやぁ、やっとあげられましたぁ。
ちなみに、ここで小紹介しておきますが、なにか番外で書いてほしいお話などがありましたら、こちらの感想一言欄、または、活動報告に書いてください。
できる限りお答えさせていただきます!
その日の放課後。
「ねーねー、巴樹ちゃん。」
雨はすっかり上がって、雲の切れ間から、陽の光が差し込んできている。
部活に行くきいと別れて、帰宅してきた巴樹にレナが話しかけてきた。
「なぁに?」
「今からさ、ショッピングモール行かない?」
「ふへ?!」
突然のレナの申し出に、巴樹がずっこけそうになる。
「い、今から?」
目を瞬かせて、巴樹はレナに聞く。
「うん。そうだよ。」
こくんとうなずいて、レナは巴樹の目の前に二枚の紙を差しだす。
そこには、『商品券 一万円分』と書かれていた。
「こ、この商品券どうしたのっ?」
その商品券をレナからひったくるように取って、凝視しながら驚いて叫ぶと、自信気な表情でレナが言う。
「奈濟さんにもらったんだ♪」
楽しそうにレナが語ってくれたのは、こんなことだった。
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「うわぁ、これどうしたんですか?」
レナが中学から帰ってくると、奈濟さんが2枚の券を渡す。
「たまたま福引で当てちゃってね。そのまましまってたんだけど、朝思い出して。」
よく見ると、有効期限が今日までになっている。
「こ、これ、今日までじゃないですか!」
「だからよ。」
ぽんっとレナの手に置くと、奈濟さんが微笑んで言った。
「私、今日一日用事が入ってて使えないのよ。だから、レナちゃんが使ってちょうだい。ね!」
そう言うと、急いで奈濟さんは駆け出して、どこかへ行ってしまった。
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「っていうことなの。」
にこっと笑って、レナは、巴樹の肩をがしっとつかむ。
「お願い、私一人はいやだし、補導の人とかいても、巴樹ちゃんが入れば問題ないし、一緒に行かないかな!ね、ね!」
私が入れば大丈夫なの?と思わず思ってしまった巴樹だが、そう懇願されると断りきれず、巴樹は戸惑いながらもこくんとうなずいた。
そして、十分後。
「ひっろぉーーーーーい!」
「久々に来たなぁ、ショッピングモール。」
睦月寮から西に進んだ七倉というところにある、大型ショッピングモールにやってきた二人は、中に入って、小さく悲鳴をあげていた。
「それで、どこにいくの?レナちゃん。」
隣で目を輝かせるレナに、巴樹が問いかける。
はっと我に返り、店内のマップを見上げながらレナが言った。
「えっと、地下1階の食料品売り場と、六階のおもちゃ売り場と、三階の本売り場の一部商品には使えな
いんだって。あと、おつりは出ないってさ。
私は、とりあえず二階と三階の百円均一で爆買いしよっかな。」
レナの説明を聞きながら、巴樹は考えていた。
(それじゃあ、最近私服のバリエーションが少ないから、服でも買ってこよぉかな……)
「じゃあ、私は、四階の服売り場にいるね。」
「了解しました!じゃあ、五時に出入り口で待ち合せましょう。」
「じゃあ~」と言って、レナはエスカレーターに乗って上へと行ってしまった。
(さてと。どんな服買おっかなぁ~。)
そんなことを考えながら、巴樹もエスカレーターに乗って、四階へと向かった。
そして、それから十分。
巴樹は、服売り場をはしごして、お気に入りの服を探した。
途中で、「これも、これもかわいいっ!」と服をたくさん買っている女の人を見かけて、苦笑いしながら通り過ぎていった。
「う~ん、それじゃあ、これにします。」
散々迷った挙句、白っぽいノースリーブのワンピースと、ハートがついた赤い服と、黒いセーター、そして、ジーパンをお買い上げした。
「ありがとうございまぁーす。」
店員のお姉さんが、笑顔でそう言った。
と、その時。
グオオオオオオオオオオオオ………
巴樹の耳に、聞き慣れた唸り声が響き渡る。
驚いて振り向くと、ちょうどモールの真ん中に開いている吹き通しのところに、真っ黒な化け物……クラが。
「キャアアアアアアアアアアッ!!」
大きな悲鳴を上げて、店員のお姉さんが逃げていく。同じように、いたるところでたくさんの悲鳴が上がっていた。
四階にいる巴樹には、首の真下が見えている。
(ど、どれだけおっきいのっ?!)
ポカーンとあっけにとられていると、突然巴樹の後ろから一本の矢がクラの胸に突き刺さる。
「乱砺紅葉」
すると、その矢が色とりどりの葉っぱに変わり、またクラに四方八方から突き刺さっていく。
「ええ?」
あっという間にクラは祓われてしまった。
あの葉っぱ達も消えている。
一瞬の出来事に、巴樹はまったく頭が付いていかない。
風華を一応構えていた巴樹に、ぽんっ、と誰かが後ろから肩をたたく。
「こんにちは、小さな龍精さん。」
振り向くと、そこには、さっき服を買いながらはしゃいでいたあの女の人が立っている。
「ううん、違うな。えっと…
封じの姫様?」
巴樹は、その茶色の瞳に浮かび上がった、真面目な表情に、またまたあっけにとられてしまっていた。




