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ドラゴンすくらんぶる!  作者: 葉月 都
第弐章 黒の御子
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其之十五

章の始まりのためか、短いです


「黒の、御子?」



ある、雨の降る月曜日の朝。



「うん。巴樹ちゃんも聞いたこと、あるでしょ?」



18歳の寮員、夢花緑ゆめはなみどりが、柔らかく微笑む。

まだ六時半少し過ぎで、誰もいない応接室(?)に、二人の話し声が響く。



「はい。……私…封じの姫と、唯一互角に戦った、黒亜の少年の呼び名ですよね?」



苦し気の表情で、巴樹が言う。



「その通り。」




今現在二人の話に出ている、『黒の御子』とは、巴樹の言っていた通り、封じの姫と唯一互角に戦い、一度は封じの姫を窮地にまで追い込んだ、一人の少年のことである。

強大な闇の力を操り、日本、いや、世界中が黒亜の手におとそうとしていたのだ。


だが、結局、黒の御子は封じの姫に退治されてしまう。


こうして、龍精が平和を保っているのだ。




緑が天使の笑みでにこっと笑って、巴樹に言った。



「大丈夫だよ、巴樹ちゃん。黒の御子は、君のその力……"封じ込めの力"によって封印されたんだから。」

「…………………そうじゃ、ないんです。」



その時、ほとんど音を立てずに、寝ぼけ眼のきいが降りてくる。

二人は気付いていないらしく、会話を続ける。




「もし……黒の御子が、現世にもういて、私と黒の御子が出会ってしまったら、戦いになってしまうんでしょうか?そうしたら、



私は………戦えるんでしょうか?」




その言葉に、隠れながらきいが下唇をかむ。

そして、悲しそうな瞳をして下を向く。



「それは、どうかな?」



そんな悲しげな雰囲気を、緑の言葉が切り裂く。



「封じの姫だからといって、無理に強要はしないと思う。もしも巴樹ちゃんが、戦おうと決めたとして

も、『封じの姫の戦い方』じゃなくて、『巴樹ちゃんの戦い方』で戦えばいいんだよ。」



ポンポンと巴樹の頭をなでると、緑は立ち上がった。



「じゃあ、僕はそろそろ奈濟さんを起こしてこようかな。昨日、遅くまで起きてたみたいだし。」



小さく手を振って、緑さんは奥へと消える。



「……巴樹。」



話が終わったのを見て、足音を立てないように階段から降りると、きいは巴樹のもとへと向かう。

その声に、びっくりして少し飛び跳ねる巴樹。



「き、きいくん!おはよっ!」

「おはよ。」



きいは、なにかを言おうとしたが、もごもごと言葉を飲み込んで言った。



「なにしてたの?」

「緑さんとお話してたんだよ。龍精のことについて。」



にこっと笑い、巴樹も立ち上がる。



「朝ご飯、奈濟さんが起きてくる前に、下準備しとこぉっと。」



そんな巴樹を見ながら、きいは寂しそうな表情で椅子に座った。










チリン…………………


チリン、チリン……


ニャァーオ……………………


雨の音に混じって、小さな鈴の音と猫の鳴き声が聞こえてくる。







お昼休み。

人気ひとけのない窓に、一匹の黒猫が座っていた。


首には、水色の紐に金色の鈴がつけられているところから、誰かの飼い猫なのだろうか。

ちょこんと座って、誰かを待っているようだ。


そこへ、一人の少年がやってきた。きいである。



「……みゆ……」

「ニャア」



その声に、黒猫が鳴いて答える。


その瞬間、ボンッと煙がして、一人の少女がそこにはいた。


長い黒髪をさらりと垂らし、柔らかな水色の瞳に、同じ水色の鈴がついたかんざしをつけている。


黒い猫の刺繍が端に施された青いワンピースに、紫色のサンダルをはいた、五歳くらいの女の子だった。



「きい様?今日はどぉしたの?」



ふんわりとした声に、きいは答える。



「少し、調べてきてほしいんだ。」

「なにぉですか?」



少し黙り込んでから、きいは言った。




「七橋家について。」












「あっ、きい~。どこいってたの?」


「別に。どこでもいいじゃん。」



いつも通りの明るい鳴海に、冷たいきい。



「もう……。」



ムスッとしながらも、どこか嬉しそうな鳴海に、巴樹が言う。



「鳴海ちゃん、嬉しそうだね。」



ふいをついたその質問に、鳴海がびくりと反応する。



「はっ、巴樹ちゃんっ?なななな、なに言ってるのっ?!\\\\\\」

「なに分かりやすく動揺してんの。」



巴樹の鈍感発言により、鳴海がドキドキとして、きいが冷たく突っ込むという、いつも通り展開している漫才(?)に、教室内の全員が苦笑いしている。


そして、その不思議な雰囲気に、巴樹はきょとんとして、鳴海は一緒に苦笑い、そして、きいはそっぽを向く。


このいつもと同じクラスに、幸せを感じないものはいない。



だが。



クラの活動は、止むことはない。








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