其之十四
少々短めになってしまいました
「まったく、どれだけ私たちに迷惑をかければ済むんですか!公務を赤羽さんがやりくりしてくださったものの、本当に困るんですからね!」
大声で、龍雅会代表をしかる佳穂。
「もー、別にいいじゃ………」
「だめに決まってます。」
陵の異議を即刻取り消す佳穂に、巴樹が言った。
「あのぉ…佳穂さん、一体どういうことですか?」
はっと我に返った佳穂が、固まっていたみんなに頭を下げる。
「すみません。実は、今日ここに伺ったのは、陵様についてなんです。昨日、突然姿を消してどこかに行ってしまったんです。伏見町にいるということは分かったんですが、それ以上は絞り込めず、なので、一つ一つ周って調べていて。」
苦笑いする佳穂は、陵の襟首をガシッと掴み、ズルズルと外へ引っ張っていった。
「ご迷惑をおかけしました!」
「封じの姫さん、ありがとね~。」
と言い残して。
あっけにとられた九人は、二人が去ったあともポカーンとしていた。
「それで、佳穂。本当の理由はなに?」
住宅地の一本道を歩きながら、陵が佳穂に聞く。
身長が180cmある陵を見上げて、佳穂はため息をついた。
「陵様にはほんと、かないませんね。」
一度言葉を切ると、佳穂は言った。
「今回の異変について、分かったことが、少し。」
「うそでしょ!あの小さな陵くんが、龍雅会のトップ?!」
「全然気が付かなかった!」
やっと石化が解けたきい達が、先ほど起こったことをやっと理解する。
佳穂の言っていていた、「雅龍将」とは、龍雅会の代表のことである。
きっと、すべての龍精達の力をかき集めても、雅龍将にはかなわない。
(やっぱり、ね。)
ふっ、と息をつくと、きいは言った。
「クラ退治、行ってきま~す。」
「あ、じゃあ私も。」
返事を待たず、巴樹ときいが玄関から出ていく。
「あいつら、マジで大丈夫?!」という雰囲気が、寮内に漂ったことは言うまでもない。
「ねぇ、きいくん。」
すたすたと前を歩くきいに、巴樹が話しかける。
「なに?」
「陵くん……じゃなくて、陵様って、どうして私たちの目の前に子供の姿で現れたんだろう?」
首をかしげて言う巴樹に、きいは、手を首の後ろで組んで言った。
「さあ?神出鬼没で、楽しいことが好きな人らしいからな。」
小さく笑って、きいは前を見据える。
(まさかねぇ……)
その瞬間、巴樹は、きいの透き通るような水色の瞳に影が差したのに気が付いた。
(きいくん…どうしたんだろぉ?)
きょとんとして、巴樹がきいの方を見る。
二人が二人して、別々の思いを持つ。
結局、陵が帰っていったことで、今朝のようにクラが大量発生することはなかった。
でも、どうしてクラが大量発生したのかは謎のままだった。
時間は飛んで、夜。
「陵様。全員集まりました。」
赤羽が、陵の部屋へと静かにやってくる。
「分かった。」
陵は、朝とは違う、男性の龍精の袴姿に身を包み、大広間へと向かう。
そこには、聖龍士の三人がそろっていた。
赤羽が席に着くと、陵が言った。
「それでは、報告を。」
まず、暦が口を開いた。
「このいへんのげんきょぉだけどぉ、じったいがまったくつかめてないんだぁ。ちからのいどぉがはげしくて、なかなか………。」
とくやしそうに暦が言う。
次に、冷が言った。
「黒玉だけど、全国から、少なくとも一千ほどは集まったかな。でも、その中の80%が、なぜか『悲しみ』の感情だった。不思議なことにね。」
「半分以上が……。」
赤羽がぽつりとつぶやく。
「俺も、黒玉について。」
一度言葉を区切ると、赤羽が言った。
「龍精達が集めてくれた黒玉を分析してみました。その結果、まったく同じ人物、または物体が、様々な人間から感情を取り出して造っていることがわかりました。そのため、暦の追っている元凶を倒せばいいかと。」
最後に佳穂が言った。
「全国でのクラの活動が、徐々に収まってきています。ただし、雑魚クラの出現は活発化しています。しかも、クラが最も多く見つかっている地点が……。」
言葉を区切り、佳穂は広げてあった地図に、くるりと丸を付ける。
その場所に、全員が目を見開く。
「伏見町です。」




