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リンリムの戦い(前編)

やばいです。1年が早いです。


路地裏で仕事をサボっていた商店の雇われ男。

そこに激しい金属音が響き、近づく。

男の眼前を2人の少女が風の様に通り過ぎた。


「! な、なんだあ!?」


男は音の先を見るが、2人の姿は既にない。


刀と刀。


既に何十と打ち合っているが、刃がお互いの体に触れることはなかった。

ルミが建物の壁を蹴る。変化を付け、地上戦から立体的な攻撃へとシフトした。

が、バトルノートも、ルミの変化にすぐに適応する。

家々の壁を蹴りながら剣戟を繰り返す内、いつしか壁の無い屋上にまで飛び上がっていた。

最後に一際耳に残る斬撃を結ぶと、ルミはいくらかの距離を取った。


「っ……ふうー。あーあ、もうちょっと余裕あるかと思ってたけど、やるじゃん」

「……」

「でもさ、なんか変。あんた、本気じゃないでしょ。かと言って戦いを楽しんでるって感じでもない。つまんないならさっさと本気出せばいいのに、いったいどういうつもり」

「……」

「少しはなにか言ったら?」


だが、応えはない。

溜息まじりに、髪をかき上げるルミ。

ルミは幾ばくかの苛立ちを覚えていた。


(手加減しないって言ったけど、相手が本気じゃないと調子でない。殺気もないし。こいつなんで戦ってるんだろ。……もしかして無理矢理戦わされてるとか? いやでもシアを殺そうとしんだし。あーもうめんどくさ!)


深呼吸。

決心が鈍った訳ではない。ないが、自分といくらも変わらぬであろう見た目の少女を前に、どうしようもなく切っ先が鈍る。

殺そうとするでもなく、逃げるでもなく、ただ構っているだけ・・・・・・・・・

その不可解な敵の動きに、ルミが戸惑うのも無理はなかった。


(正直、こうしてグダってるのは都合がいい。下手な動きされて周りを巻き込みたくないし。でもこいつがこうしているのにも何か理由があるってこと? ……いや、考えてもしょうがない。あたしはあたしの仕事する。小細工は通用しなさそうだし、その時が来たら一気にカタをつける) 





























霊符を持ち、結界を張るサクヤ。

それを上空から見下ろす十三使徒の1人、鈍牢のダリー。


「ふぉっふぉっふぉ。どうした、ヤマトの姫よ」


髭を遊ぶダリーは余裕の表情を見せた。


「わしの術を防ぐとは大したものじゃが、守っているだけでは勝てんぞ?」

「あなたこそ、これで本気ですか? こんな攻撃じゃ私は倒せませんよ?」

「……ならばこれならどうじゃ!」


ダリーの得意とする重力魔術。その出力を引き上げた。

結界外の地面が悲鳴を上げて陥没していく。

だが、サクヤの結界に大した影響はない。


「ぬう!?」


ダリーは面を食らう。

まだ本気ではないものの、出力は8割方だった。

防がれたとしても、サクヤの顔を濁らせることはできると踏んでいたのだが、当てが外れたのだ。

むしろ顔が濁ったのはダリーの方で、本気を出したとしても結界を突破できないかもしれないと言う観念にとらわれる。


「くの!」


石の槍ストーンエッジ】が地面から突出する――が、結界に接触すると同時に砕け散った。

サクヤの結界は自らを中心に展開された球体状。地中からの攻撃も通用しない。


「無駄です。その程度の術では破れません」

「こ、小娘があ」

「次はこちらから行きます!」


霊符を放つ。

と、発光と同時に折り紙の鶴へと変化した。

数羽の鶴が空を切り、ダリーに迫る。

ダリーは意趣返しと言わんばかりに結界を張ってみせた。

サクヤのなめらかな球体とは違い、亀甲柄の結界。

亀に鶴が衝突する。


爆発。


包まれた煙の中から、焦げかけた亀が落ちてくる。


「くはっ……」


ダリーはそのまま地面に突っ伏した。


「こ、こんな馬鹿な、このわしが、こんな小娘にっ」


よろけながら立ち上がるダリー。

信じられないと言った面持ちだが、なんてことはない。

ただ認識が甘かったのだ。

ヤマトは長きに渡り女神の眼から逃れ、その使徒達ですら容易に手の出せない力を維持してきた国。

それは初代勇者タケルヒコの尽力が大きい。

が、それだけではない。

タケルヒコの子孫を初めとする、ヤマトの実力者達の働きがあってこそだ。

そしてサクヤはタケルヒコの直系であり、ヤマトの姫と言ういずれは国を背負う者。

当然ヤマトならではの英才教育を受けており、それはこの世界で最先端の技術を学んだと言っても過言ではない。

そして、努力を惜しまなかった。

人の身を捨て、天寿を超える時間を生きたとしても、この2人では密度が違った。

実際ダリーはある領域を越えられずに、学ぶことを、強くなることをやめていた。

師と呼べる者もなく、友と呼べる者もなく、ただ自らの快楽の為に生きる日々。

そんな両者では、この有り様は必然と言えよう。


「降参して下さい。そうすれば命までは取りません」

「……降参? 降参だと? わしが……わしをなめるな!」


再び飛び上がるダリー。魔力が膨張する。


「昏き底 這いずりたるは愚鈍なる闇 酔って逆巻き 白き鳥を蹂躙せよ 内包する獣 破壊の使者 暴食の王!!」


詠唱。

それは、集大成とも呼べるダリーの切り札。

超級魔術。


「【強欲なる黒き月ソウルグラットン!!】


ダリーの頭上に、巨大な漆黒の球体が現出する。


「ふぉっふぉっふぉ! この術をくらってはひとたまりもあるまい! この街ごと屠ってくれるわ!」


ダリーの言葉に呼応するように、球体が作動する。


手始めに塵がなくなった。

次に路傍の石が、屋根の破片が、軽い物から順に黒き月の飲み込まれていく。


「ほれほれどうじゃ!? こいつはありとあらゆる物を吸収する! 抵抗レジストできるのはわしだけじゃ! どうじゃ? 降参するか? わしのペットになるなら考えてやってもいいぞ!? 服を脱げ! わしの足を舐めろ! 跪いて命乞いをしろ!」


血管を浮き出させ、興奮するダリー。

勝利を確信した、憐れな敗北者。


超級魔術。


「【触れられざる光輝フェイクアトモスフィア】」


黒き月を覆う光。収縮する。

それは黒き月と接触してもなお変わらず。

みるみるうちに月は小さくなり、消滅した。

























「ほあ?」


間の抜けた。

理解の及ばない物を見た。そんな声がした。

そして。


「ぎゃっ!?」


ダリー挟む光の壁。

甲羅がみしみしと軋む。


「んなっ、どうじて、どうやっで」

「あなたの詠唱を黙って見ていると思いましたか? 私も超級魔術を使わせてもらいました。触れたものを魔力分解する結界です。それにあなたの魔術を閉じ込め、収縮させて打ち消しました」

「まりょぐを、ぶんがいい? まじゅつが、づうじないとい、うごとかあ? そんな、ぞんなことが」

「できるんですよ。魔力の性質さえわかれば」

「わ、わじがとうたつでぎなかった、ばじょに、こんな、ごんなごむずめがああああ」

「……さようなら」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?!?」


光の壁が寄せ合い、妨げるものを押し潰した。

壁が消えると、何かの塊が地面に落ちた。

サクヤは少し悲しそうな目でそれを見つめると、吹っ切る様に視線を切って歩き出した。




戦いは続く。

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