翠葉の願い
「教えて、翠葉。翠葉の願いを」
「……わたしの……願い…………」
その言葉で、翠葉は五歳の時に見た『二つの夢』を思い出した——
五歳の翠葉は、超幻族によって『二つの夢』を見させられていた。
一つは、抗うことのできない決められた未来と運命の夢。
100年後、再び激しく相争う流翻族と登起族。悲劇を繰り返さないためには、この首飾りと、悠凪姫の王家の血を継ぐ翠葉、そして残り二人の王家の血を利用して『滅びの儀式』を執り行わなければならない。世界を一度滅ぼし、再生させることで、より良い世界へと進む。それこそが翠葉に課せられた「役目」なのだと告げられていた。
そして、もう一つは……翠葉の心の底に深く眠る、たったひとつの願い。美並とずっと一緒にいること。特別な役割などない世界で、平凡な日々を過ごすこと。二人で顔を見合わせて笑い合い、何でもない日々を重ねていく——
美並と共に生きること。
それは、翠葉自身の心の底に眠る真実の『願い』だった。それゆえに、彼女はそれを「夢」として認識できず、ずっと気づくことができずにいたのだ。
けれど、翠葉はついに思い出した。
その瞬間、今まで失われていた記憶が滝のような勢いで頭の中へとなだれ込み、同時に瞳からボロボロと涙が溢れ出した。
「……私、世界を滅ぼしたかったんじゃない。ただ、生きたかったんだ。美並と一緒に馬鹿やって、叱られて、遊んで……ただそんな、くだらない一日を重ねて、美並と生きたかった……」




