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悪女は正しい  作者: Dちゃん
第四章「重なるものに、形が見える」

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57/69

第57話 悪役令嬢、三週目の土曜日を歩む

「悪女は正しい」をお読みいただき、ありがとうございます。第五十七話をお届けします。


土曜日、一本の木に、ついにすべての枝と根が揃います。

――――――

 土曜日の朝、帝国からの書簡は、なかった。

 オットーが朝の茶を運んできたとき、その盆の上に、書簡はなかった。

 (――金曜日の夜に出しましたのね)

 (返信は、また、数日後かもしれませんのね)

 (でも――「まだ来ていない」ですのね)

 窓の外を見た。今日の王都の空は、土曜日だった。

 (――また、曜日で呼んでいますのね)

 (先週の土曜日は「戻ってきた光」でしたのね)

 (先々週の土曜日は「着いた光」でしたのね)

 (月曜日は「一緒にいる」、火曜日は「頼れる」、水曜日は「支える」、木曜日は「繋がる」、金曜日は「灯る」に、辿り着きましたのね)

 (土曜日の三枚目は――どこに辿り着きますかしら)

 窓の外の青を、しばらく、見た。

 (――「着いた光」は、初めての場所に辿り着いた驚きでしたのね)

 (「戻ってきた光」は、そこがもう自分の場所だと知って帰る安らぎでしたのね)

 (今日の光は――違いますのね)

 (着くでも、戻るでもなく――もう、ずっと、そこにいた気がしますのね)

 (「ずっと、そこにいた」という言葉が、浮かびましたのね)

 (でも――もう少し、この青の中にいますのね)


――――――

 土曜日には、定例の文官報告がない。

 三十年、休みなく働いた末に、レオノーラが初めて自分のために選び取った日だった。オットーも、朝の業務一覧を差し出すことはしない。

 その代わりに――というわけでもないのだろうが、朝のうちに、来客があった。

 「――お嬢様。南区診療所の医師が、お目にかかりたいと」

 「わざわざ、ですのね」

 「はい。土曜日にご報告することではないと存じましたが、どうしても今日中にとのことで」

 医師は、応接間で、深く一礼した。

 「――突然の訪問、申し訳ございません。実は、西区の診療所から、その後の様子を伝える手紙が届きまして」

 「――ええ」

 「先日、書き写して帰られた医師が、自分たちの診療所で、同じ仕組みを試してみたそうです。ですが――そのまま真似るのではなく、西区には西区の事情があるからと、待合室の声のかけ合いを、少し違う形に変えたと。子ども同士ではなく、長く通う年配の患者同士が、声をかけ合う仕組みにしたのだそうです」

 レオノーラは、その言葉を、しばらく、見た。

 (――「そのまま真似るのではなく」ですのね)

 (渡ったものは、渡した通りにはならない――それは、昨日、周縁部の新しい命に見た形と、同じですのね)

 (「来た」「連れた」「教えた」「お使いで来た」「機能した」「自己判断で来た」「動かした」「感謝を届けた」「円を描いた」「声をかけた」「溶け込んだ」「境を越えた」「型を渡そうとしている」「型が、実際に渡った」)

 (そして今週――「渡った型が、渡った先で、自分の形に育ちましたのね」)

 (十五枚目のページに、なりましたのね)

 「――先生」

 「はい」

 「――「西区の診療所が、型をそのまま真似るのではなく、自分たちの事情に合わせて作り変えた」という事実を、そのまま記録に残していただけますかしら。真似ではなく、自分の形を選んだのですのね。それは、失敗ではありませんのよ。むしろ――それこそが、渡ったものが本当に根づいた証ですのね」

 医師は、少し目を見開いてから、深く頭を下げた。

 「――そのように、お伝えします」

 医師が帰った後、オットーが、静かに、それを書き留めた。

 (――「渡った先で、自分の形に育つ」ですね)

 (お嬢様は、今日、また一つ、実務の言葉を広げられましたよ)


――――――

 昼前、レオノーラは、自分の足で、周縁部第一区へ向かった。

 巡回ではない。担当者を呼びつけるのでもない。ただ、見に行きたかった。

 新しい双葉から開いた本葉のそばに、しゃがんだ。

 (――先日見たときより、また少し、大きくなっていますのね)

 (丸みの中の、あの尖った先が――今日は、心持ち、色が濃くなっている気がしますのね)

 (「気がする」ですのね。相変わらず、確認できませんのね)

 (でも――もう、それを、不安には思いませんのね)

 誰にも呼ばれていないのに、担当の庭師が、通りかかった。

 「――お嬢様。今日は、お一人で」

 「ええ。土曜日ですもの。今日は、わたくしの用事ですのよ」

 庭師は、少し笑った。

 「――実は、先ほど、葉の付け根のところに、小さな粒を見つけたんです。蕾かもしれません。まだ、何とも言えませんが」

 レオノーラは、その言葉を、もう一度、聞いた。

 (――「蕾かもしれない」ですのね)

 (名前のない命が、今度は、花を持とうとしていますのね)

 (誰の計画でもなく、誰の血筋の続きでもなく、それ自身の意志で)

 「――そのままにしておいてくださいませ。急がず、待ってあげてくださいな」

 庭師は、深く頷いた。


――――――

 昼過ぎ、マリアが昼食を持ってきた。

 「――今日は、どんな空ですか」

 「土曜日の空ですのね」レオノーラは言った。「でも――先週の土曜日とも、先々週の土曜日とも、少し違いますのよ」

 マリアは、トレイを置きながら、少しだけ、目を細めた。

 「――どう違うんですか。先週は「戻ってきた光」でしたよね」

 「ええ」レオノーラは言った。「先々週は、初めての場所に辿り着いた驚きで、「着いた光」でしたのね。先週は、そこがもう自分の場所だと知って帰ってくる安らぎがありましたのよ。今日は――着くでも、戻るでもなく、もう、ずっと、そこにいた気がしますのね」

 マリアは、少しだけ、考えた。

 「……なんか、それって、うちの猫みたいな感じですかね。うちの猫、いつも同じ場所で日向ぼっこしてるんですけど、あの子、そこに「行く」とか「戻る」とかいう感じじゃないんですよ。なんていうか、朝になったら、もう、そこにいるんです。探した記憶も、帰ってきた記憶も、たぶん、あの子の中にはなくて――ただ、そこが、あの子の場所なんですよね」

 「「そこが、あの子の場所」」レオノーラは言った。「――ええ。「着いた光」は、探して見つけた場所でしたのね。「戻ってきた光」は、離れてからまた帰ってきた場所でしたのね。今日は――探すことも、離れることもなく、最初から、ずっと、満ちている場所という感じがしますのよ」

 マリアは、少しだけ、窓の外を見た。

 「……今日の空って、なんか、朝からずっと、同じ温度の日向みたいな感じがしませんか。強くもなく、弱くもなく、ただ、そこにあり続けてる、みたいな」

 「「ずっと、そこにあり続けている」」レオノーラは言った。「――ええ。「満ちている光」とでも、言いますかしら。着くでも戻るでもなく、初めから満ちていて、それが、ただ、そこにありますのね」

 マリアは、それを聞いて、少しだけ、止まった。

 「――「満ちている光」って、なんか、お嬢様の一週間そのものみたいですね。月曜日から今日まで、全部別々の顔をしてるのに、今、こうして揃うと、なんか――最初から、一つのものだった気がします」

 (――「最初から、一つのものだった」)

 (言われて、少し、止まりましたのね)

 (「着いた光」と「戻ってきた光」と「満ちている光」が――同じ土曜日の名前として、三枚、並びましたのね)

 (一枚目は「発見」、二枚目は「安らぎ」、三枚目は――「最初からあったと知ること」ですのね)

 「――マリア」レオノーラは言った。「今週も、あなたの言葉から出てきましたのね。「あの子の場所」という言葉から、「満ちている光」が生まれましたのよ」

 マリアは、少しだけ、にこりとした。

 「――三週目の土曜日にして、うちの猫の話をしてよかったです」


――――――

 夕方近く、温室に戻った。

 二つの芽が、そこにあった。

 植木鉢の前に、しゃがんだ。

 エーデルローゼの芽は――先週より、わずかに高くなっていた気がした。葉が、三枚のままだった。でも、今日の光を受けて、全体に、探さなくても戻らなくても、最初からそこにあったような、満ちた佇まいがある気がした。

 (――「最初からそこにあったような、満ちた佇まい」)

 (一週目の「落ち着いた深さ」、二週目の「持ち越し」、三週目の「当たり前」、そして「静かな強さ」「揺るがない静けさ」「見なくてもわかる佇まい」「あたたかい気配」の次の、今週ですのね)

 (「気配」の次に来るのは――「満ちていること」ですのね)

 そして――子爵の庭の薔薇の葉の間で、小さな蕾が、開いていた。

 薄い、淡い色の花弁が、一枚、また一枚と、確かに開いていた。

 レオノーラは、その花を、しばらく、見た。


挿絵(By みてみん)


 (――咲きましたのね)

 (葉の枚数だけを数えていた日から、蕾を見つけた日、蕾が膨らんだ日を経て――今日、花になりましたのね)

 (何週も、何も起きていないように見えた時間の先に、確かに、これがありましたのね)

 懐から紙を取り出した。二十八枚目を開いた。

 「――エーデルローゼ。高さ、約三十八ミリ。葉、三枚。探さなくても戻らなくても、最初からそこにあったような、満ちた佇まいがある気がする。今日の光、満ちている光」

 書いて、止まった。

 「満ちている光」

 (――光の名前に、なりましたのね)

 (「着いた光」「戻ってきた光」に続いて、三枚目の土曜日の名前が、揃いましたのね)

 「――子爵の庭の薔薇。高さ、約二十ミリ。葉、五枚。淡い色の花が、一輪、咲いた。今日の光、満ちている光」

 書き終えて、二十八枚の紙を、ぱらぱらと、めくった。

 (――二十五種類に、なりましたのね)

 紙を、丁寧に折って、懐にしまった。


――――――

 夕方、オットーが書斎に入ってきた。

 「――お嬢様。本日の記録についてでございますが」

 「ええ」

 「――診療所の記録に、十五枚目のページが加わりました。西区の診療所が、型をそのまま真似るのではなく、自分たちの事情に合わせて作り変えたという事実でございますね。加えて――子爵の庭の薔薇に、初めての花が咲いたと伺いました」

 レオノーラは、それを聞いて、少しだけ、考えた。

 (――「型が、渡った先で自分の形に育つ」ことと「蕾が、花になる」こと)

 (別のことのようで――同じことを、言っていますのね)

 (渡したものも、育てたものも、いつか、それ自身の形で、応えてくれますのね)

 「――ええ」レオノーラは言った。「十五枚重なって――記録が、初めて「渡った先での成長」を刻みましたのよ。そして、蕾は、今日、花になりましたのね。何週も「変化なし」と書き続けた時間の先に、これがありましたのよ。急がなくてよかったのですのね」

 オットーは、静かに、一礼した。

 (――「急がなくてよかった」)

 (お嬢様が、三十年間、最も苦手とされてきた言葉ですよ)

 「――また、温室の二十八枚目には「満ちている光」という記録が入っております。「着いた光」「戻ってきた光」に続く、三枚目の土曜日の名前でございますね。光の名前は二十五種類になりました」

 レオノーラは、それを聞いて、少しだけ、考えた。

 (――月曜日は「一緒にいる」、火曜日は「頼れる」、水曜日は「支える」、木曜日は「繋がる」、金曜日は「灯る」、そして土曜日は「満ちている」ですのね)

 (金曜日、五本の枝が、一本の木から伸びていると気づきましたのね)

 (では――土曜日は、何ですのね)

 「――オットー」

 「はい」

 「――月曜から金曜までが、枝だとするならば――土曜日は、枝ではありませんのね」

 オットーは、少しだけ、目を細めた。

 「――お嬢様は、何だと思われますか」

 「――土曜日は、根そのものですのよ」レオノーラは言った。「文官報告のない日、公務から離れる日――それは、何もしていない日ではありませんのね。枝を支える力が、いつも、そこに満ちていた日ですのよ。着いて、戻って、そして今日――ずっとそこにあったと知りましたのね。根は、見えないところで、いつも、五本の枝を支えていましたのよ」

 老執事は、深く、深く、一礼した。

 (――「土曜日は、根そのもの」)

 (一つの根から五本の枝が伸びるという先週の気づきの、さらに先ですね)

 (月曜日から土曜日まで、六日すべてが、今日、初めて、一本の木として、根と枝の両方を持ちましたよ)

 (三十年間、休みなく働き続けたお嬢様が、今、休むことそのものを、木を支える根であると定義されましたよ)


――――――

 夜、書簡を書いた。

「アドリアン。今日は三度目の土曜日でした。「着いた光」「戻ってきた光」に続いて、今日の土曜日の光を「満ちている光」と名付けましたのね。着いて、戻って、そして今日は――最初から、ずっと、そこにあったと知る形に、辿り着きましたのよ。月曜日は「一緒にいる」、火曜日は「頼れる」、水曜日は「支える」、木曜日は「繋がる」、金曜日は「灯る」、そして土曜日は「満ちている」ですのね。月曜から金曜が枝ならば、土曜日は、根そのものですのよ。今日、初めて、六日すべてが「三度目の」という書き出しで揃いましたの。光の名前が二十五種類になりましたのよ。診療所の記録が十五枚目になりました。西区の診療所が、型をそのまま真似るのではなく、自分たちの事情に合わせて作り変えたそうです。渡ったものは、渡した通りにはなりませんのね。そして――子爵の庭の薔薇に、初めての花が咲きましたのよ。何週も「変化なし」と記録し続けた時間の先に、これがありました。急がなくてよかったのですのね。返信は、また、数日後かもしれません。同じ時刻で。――好意として」

 書き終えて、レオノーラは、その書簡を、しばらく、見た。

 (――「今日は三度目の土曜日でした」から、書き始めましたのね)

 (月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日に続いて、土曜日も「三度目の」になりましたのね)

 (六日、すべて――揃いましたのね)

 封をして、オットーに渡した。

 「――今夜中に」

 「かしこまりました」

 オットーは、それを受け取って、少しだけ、間を置いた。

 「――六日、すべて揃いましたね。三十年間、期限を管理してこられたお嬢様が、今は、期限のないものを、こうして、確かに積み重ねておられますよ」

 「――ええ」レオノーラは言った。「明日は、日曜日ですのね。土曜日とはまた違う、名前のない日ですのよ。でも――それでいいのですのよ。すべての日に名前がなくても、根は、そこにありますものね」

 老執事は、深く、一礼した。

 (――「名前がなくても、根はそこにある」)

 (お嬢様は、今、名付けることの先にあるものを、見ておられますよ)


――――――

 夜、寝室の文机の上に、冊子があった。

 レオノーラは、それを、手に取った。

 最初のページから、ゆっくり、読んだ。

 「今日は晴れ」から始まって、光の名前が並んでいた。「晴れ」「曇り」「薄曇り」「雨」「晴れ(雨上がり)」「まっすぐな光」「穏やかな光」「気合いの入った青」「気合いが馴染んだ光」「流れの中の真ん中」「週末の気配」「週末の入り口」「着いた光」「知っている青」「いてくれる青」「見えている真ん中」「知っている気配」「知っている入り口」「戻ってきた光」「一緒にいる青」「頼れる青」「動かない真ん中」「繋がる気配」「灯る入り口」。

 そして、今日――「満ちている光」が、加わった。

 (――二十五種類に、なりましたのね)

 (土曜日の光が、三枚、並びましたのね。「着いた光」「戻ってきた光」「満ちている光」)

 (月曜日も三枚、火曜日も三枚、水曜日も三枚、木曜日も三枚、金曜日も三枚、そして土曜日も三枚――六本の枝と根が、一本の木として、初めて、すべて揃いましたのね)

 患者の書簡が、挟まれていた。十五枚のページが、並んでいた。

 (――十五枚のページが、並んでいますのね)

 (一枚目の「来た」から、今日の「渡った先で、自分の形に育った」まで――一人の物語が、遠く離れた場所で、また新しい形を持ちましたのね)

 (次のページには――何が来るでしょうかしら)

 「エーデルローゼ。高さ、約三十八ミリ。葉、三枚。探さなくても戻らなくても、最初からそこにあったような、満ちた佇まいがある気がする。今日の光、満ちている光」

 「子爵の庭の薔薇。高さ、約二十ミリ。葉、五枚。淡い色の花が、一輪、咲いた。今日の光、満ちている光」

 (――どちらも、確かに、ここにありますのね)

 (一方は「気がする」ままで、もう一方は――初めて、確かな花という形になりましたのね)

 (気がすることも、確かなことも――どちらも、同じ根から、来ていますのね)

 冊子を、静かに、閉じた。

 窓の外に、夜の王都があった。今夜は、穏やかだった。

 南の診療所は今夜も機能しているはずだった。西区でも、今夜、誰かが、渡された仕組みを、自分たちの形に作り変えながら使っているかもしれなかった。周縁部の名前のない命は――今夜も、蕾を抱いて、静かに育っているはずだった。

 温室には――二十八枚の記録を持つ、二つの芽があった。一方は、探さなくても戻らなくても、そこにあったような満ちた佇まいがある気がする。もう一方は、今夜、初めて、淡い色の花を、静かに開いている。

 帝国では――今夜、殿下が、「三度目の土曜日」という言葉を、読んでおられるだろうか。

 (――月曜日の根、火曜日の根、水曜日の根、木曜日の根、金曜日の根、そして土曜日の根が、冊子の中で、今日、初めて、すべて並びましたのね)

 (一本の木に、五本の枝と、一つの根が、揃いましたのね)

 (――これが、三度目の一週間の、形ですのね)

 冊子を、文机の上に、戻した。

 今日の土曜日を、思った。「三度目の土曜日」という言葉で書簡を書き出した夜。西区の医師が「型を自分たちの形に作り変えた」と知った朝。自分の足で見に行った、蕾かもしれない小さな粒。「満ちている光」という光の名前が生まれた昼。薔薇が初めて花を咲かせた夕方。「土曜日は、根そのもの」という感覚を持った、その夜。

 (――これが、今日の「あったこと」ですのね)

 (三度目の土曜日の、積み重ねですのね)

 (明日は日曜日ですのね。名前のない、ただの一日ですのね)

 (でも――名前がなくても、この一日も、根の一部になりますのね)

 (そして――四度目の月曜日が、また、来ますのね)

 (一本の木が、また、新しい年輪を、重ねていきますのね)

 (――それを、楽しみにしていますのね)

 (以前は、なかった感覚ですのよ)


――――――

(第五十七話 了)

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


今回は、二つの積み重ねが実を結ぶ回でした。何週も「変化なし」と記録され続けた薔薇に、初めての花が咲いたこと。そして、月曜から土曜まで、六日すべてが「三度目の」という言葉で初めて揃ったことです。「月曜から金曜は枝、土曜日は根そのもの」——レオノーラがそう言い切る場面は、彼女自身の変化そのものでもあります。


光の名前は「満ちている光」で二十五種類に。診療所の記録は十五枚目、渡った型は、渡した通りではなく、その土地なりの形に育っていました。


もしよろしければ、感想やブックマークをいただけますと嬉しいです。次回(水曜12:00予定)は、名前のない日曜日を経て、四度目の月曜日へ。どうぞお楽しみに。

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