7-99 中堅冒険者の仲間は語る
この話でグレイン君視点に戻るつもりが、もう一話続きそうです。
「なんだ、その顔は?」
俺は不満げな表情で質問する。
そんな俺の言葉に不味いと思ったのか、ロットが言い訳をする。
「いや、その……俺たちが言うことでもないと思うんですが、あの人に対する信頼度が高いな、と」
「本当にお前らが言うことじゃないな」
ロットの言葉に俺は思わずそんな返事をする。
もともとこいつらがあの二人の嬢ちゃんのことをかなり信頼していたのだ。
そう考えると、俺の信頼を伝えることに文句を言う筋合いはないだろう。
しかし、そんな俺にヴォーパルが聞いてくる。
「いや、俺たちの場合は二人いれば、どうにかなると思っているだけです。ですが、ウォーさんの場合はあの人単体で信じているじゃないですか?」
「……それの何がおかしい?」
「いや、一人でも強い事はあると思いますが、だからといってすべてにおいて強いわけではないでしょう?」
「ふむ」
ヴォーパルの言わんとすることは理解できる。
どれだけ強い奴にでも得手不得手というものは存在する。
俺の場合は、どれだけ固い相手でもダメージを通すことができることに自信を持っているが、逆に物理的なダメージを与えられない相手には途端に弱くなってしまう。
おそらく、彼が言いたいのはそういうことだろう。
「まあ、その点でも心配はないさ」
「どうしてですか?」
俺のはっきりとした宣言にヴォーパルが聞いてくる。
ロットの方も首を傾げる。
俺があまりにも堂々と言うので、気になったのだろう。
そんな彼らに俺は説明してやる。
「俺たちはもうすぐBランクになることを控えているCランクの冒険者だ。まあ、冒険者の中では中堅──ベテランとして、かなり力をつけてきた冒険者パーティーと言ってもいいだろう」
「たしかにそうですね。普通はCランクに上がるか、それまでにやめるかのどちらかと聞いていますし……」
どうやらロットの方はしっかりと説明を聞くタイプのようだ。
彼の言う通り、冒険者というのは生き残って高ランクに上がるか、その前に辞める、もしくは命を落とすかが大半である。
俺たちは前者にあたる。
だが、それにも理由はある。
「あいつ──カロンは俺たちの中では別格でな、単体でならAランク冒険者クラスの実力を持っていると言われている」
「……本当ですか?」
俺の言葉にロットが信じられないとばかりに聞いてくる。
まあ、普通なら信じられないわな。
俺が贔屓目に言っている可能性が高いのだから……
だが、これでも俺は嘘をつかないことで有名なのだ。
「ああ、本当だ。正直、新人の頃から頭角を現していたあいつは他の先輩から引き抜かれそうになることは多々あった。新人なんかと足をそろえるより、自分の実力に合った者と一緒に行くべき、とな? お前らにもそれはわかるんじゃないのか?」
「「……」」
俺の言葉に二人は黙り込む。
先ほどから、二人は女性陣のことをほめていたが、自分たちのことをまったく自慢しなかった。
おそらく、自分たちの実力を彼女たちと比較して、卑下しているのだろう。
まあ、それは仕方がない。
あまりにも実力差があるのなら、そうなるのも当然だからだ。
だが、これは同じ経験のある先輩として、しっかりと後輩を導いてあげないと……
「だが、あいつは言ったんだ。「一人で先に行ってもつまらない。仲間と成長するのが嬉しいんだ」ってな?」
「それはどういう……」
俺の言葉にロットは聞き返してくる。
まあ、これだけではまだあいつのすごいところはわからないか。
これは身の上話もしないといけないな。
「俺たちパーティーはとある田舎出身の幼馴染でな。近所に住んでいたから、小さいころから仲が良かった。だが、8歳のころにあいつの両親が死んでしまって、それからは俺たちの両親が冒険者になれる年齢まで世話をしていたんだ」
「「……」」
「あいつにとってはそれが感謝することだったが、負担でもあったみたいだ。今までは仲良く遊んでいたのに、あるときから一歩引くような位置にいるようになったんだ。その時に俺が聞いたんだ。「どうして、今までと同じように遊ばないんだ」ってな?」
「「……」」
「世話をされている身だから、わがままが言えない」と言いやがった、あいつは。思わず俺はあいつをぶん殴っていたな」
「「ええっ!?」」
いきなりの状況に二人から驚きの声が漏れる。
まあ、そうだろう。
いきなり暴力をふるう話になったのだから、そのような反応は当然である。
だが、これには俺の方に理由はあった。
行動はともかく……
「「俺たちは幼馴染、そこには上も下もない。世話をしているのだって、大事な幼馴染だからそれが当たり前。もし、逆の立場だったとしても、お前なら助けてくれるだろう」と言ってやった。その言葉にあいつは大泣きをしやがったな」
「「……」」
俺の説明に二人は目を見開く。
なんだ、その反応は?
俺がそんなことを言うような人間だと思っていなかったのか?
たしかに見た目の柄は悪いが、これでも面倒見がいい性格なんだぞ?
ここでそんなことを言っても意味はないが……
「まあ、そんな感じであいつは俺たちと成長することに意味を感じるようになったわけだ。だからこそ、俺たちと離れて上に行くことを拒否したわけだ」
「……なるほど。いい話ですね」
「だろ?」
ロットのつぶやきに俺は笑みを浮かべる。
この話を分かってくれる奴に悪い奴はいない。
こいつとは仲良くなれそうだ。
そんなことを考えていると、ふとヴォーパルの方が気になった。
何かを考えているようだが……
「片手剣……カロン……」
「ん? どうした?」
「あの……カロンさんって、【閃剣】って呼ばれてませんか?」
「【閃剣】?」
ヴォーパルの言葉にロットが首を傾げる。
どうやらロットの知らない言葉のようだ。
「ロット、知らないのか? 【閃剣】は片手剣を見えない速度で振るい、その切っ先を視認することができないことからつけられた二つ名だぞ?」
「そんな奴がいるのか? とても信じられないんだけど……」
ヴォーパルの言葉にロットが信じられないとばかりにあきれた声を漏らす。
まあ、聞いている限りは人間の動きとは思えないからな。
信じられないのは仕方がないだろう。
だが、そんな会話をする二人に俺ははっきりと告げる。
「それはカロン本人のことだな」
「「ええっ!?」」
俺の言葉に二人から今日一番の驚きの声が響いた。
ブックマーク・評価・レビュー等は作者のやる気につながるので、是非お願いします。
勝手にランキングの方もよろしくお願いします。




