7-100 中堅冒険者の仲間は発見する
ようやく別人視点が終わります。
次回からグレイン君視点です。
「え? 本当なんですか?」
「あの人が? とても信じられないんですが……」
ロットとヴォーパルの二人が興奮しながら詰めよってくる。
まあ、たしかに男としてはそんな有名な冒険者とは知り合いになりたいわな。
俺としては、幼馴染であることからそんな気持ちは微塵もないが……
とりあえず、そんなことよりも次の行動に移そう。
「その話はあとでいくらでもしてやる。こんなところで話せるほど、短い話じゃないからな」
「「ええ~」」
俺の言葉に二人が不満気な表情を浮かべる。
いや、話を聞きたいのはわかるが、この状況でその表情は駄目だろう。
いくら俺たちが落ち着いているとはいえ、仲間が行方不明になっているんだぞ?
すぐにその報告に戻らないといけないだろう。
「後で絶対に話してやるから、今はダンジョンから出るぞ」
「「……はい」」
俺の言葉に渋々頷く二人。
おい、本当に状況を理解しているのか、こいつら。
この状況で自分の願望を優先させるなよ。
まあ、まだまだ若いから仕方のない事か?
とりあえず、頷いたことでよしとしよう。
俺はこちら側の仲間たちに視線を向け──
「おい、リンとサリー。帰るぞ……って、どうした?」
──様子がおかしい事に気が付いた。
先ほどまではサリーが暴れていたはずなのだが、なぜか静かになっていた。
カロンのやつが魔法陣に吸い込まれたせいで正気を失っていたはずだが、いつの間に落ち着いたのだろうか?
しかし、それにしても様子が変だ。
落ち着いたにしては、異常に静かすぎる。
多少は話をするのが普通のはずだが……
「「……」」
二人はじっと壁を見つめていた。
どうした、見えない何かでも見えているのか?
それはまずいかもしれない。
あまりのショックに何か幻覚を見ているのであれば、今すぐにでも治療をしないといけない。
「おい、大丈夫か?」
俺は近づいて、声をかける。
そんな俺の声にサリーが振り向く。
その表情は引きつっており、全身は震えていた。
一体、どうしたんだ?
「う、ウォー?」
「おい、どうした?」
尋常じゃないほど震えている姿は本当に心配になる。
カロンがいなくなっても平常心を保っていた彼女らしくもない。
一体、どうしたんだ──と思ったが、すぐに彼女たちが先ほどまで見ていた壁の方を向く。
そこには小さな穴があった。
といっても、人や魔物が通ることができないぐらい小さいと言うだけで、覗き込めばその先を見ることができるぐらいの穴だ。
おそらく、二人はこの穴を見ていたのだろう。
俺は穴の先を確認する。
「……ふむ。これはまずいな」
穴の先を見た瞬間、俺は思わずそうつぶやいてしまった。
穴の先にはとんでもない光景が広がっていたからだ。
おそらく、穴の向こうは広場のようになっているのだろう。
小さな穴からでもその広さをうかがえることができた。
ダンジョンというのは様々な形で構成されているのだが、個々のダンジョンのような洞窟や遺跡などから発生したものは通路と広場で構成されているものが多い。
俺たちがいるのは通路でこの穴の先には広場のような場所があるのだが……
「どうしたんですか?」
そんな俺の様子にロットが話しかけてきた。
その後ろには心配そうな表情でヴォーパルもついてきた。
俺は二人に穴を見るようにジェスチャーを出す。
もちろん、叫ばないように口を押さえる指示も出して、だ。
そんな俺の指示に怪訝そうな表情を浮かべながらも、指示通りに穴の先を見つめる二人。
そして、一瞬体を震わせたかと思うと、サリーたちと同じように体を震わせながら俺の方に向く。
そして、口から手を放し、ロットが言葉を発する。
「あ、あの……あれって……」
穴の方を指さし、ロットは震える声で言葉を紡ごうとする。
だが、あまりの驚きに言葉になっていない。
そんな彼らのために俺ははっきりと告げる。
穴の先には大量の──数百、数千では片づけきれないほどの魔物たちの軍勢がいた。
おそらく、ダンジョンの魔素によってこれほどの数まで膨れ上がったのだろう。
この現象の名前は──
「【大量発生】だな」
「「「「っ!?」」」」
俺の言葉にその場にいた4人が一斉に体を震わせる。
はっきりと言われるまで、信じられなかったのだろう。
だが、俺の言葉が四人に現実を突きつけてしまったようだ。
まあ、あの光景を見て、信じられない気持ちも理解できる。
見て見ぬふりをしたくなる気持ちも理解できないわけではない。
だが、あの光景は現実である。
とりあえず……
「これは本気で急がないとまずいな」
俺は斜め上を見ながら、そんなことを呟いた。
これは流石にあいつでもまずいのでは?
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