7-93 死んだ社畜は王女の嫁ぎ先候補に悩む 3
※シャルロット王女のことをずっと「第一王女」と書いていたそうですが、元々は「第二王女」という設定でした。
指摘されて気付いたのですが、どこに「第一王女」と書いているのかがわからないので、誤字脱字で報告した抱けると幸いです。
ちなみに、本来の第一王女は側妃の一人(侯爵家出身)の子供で、キース王子の一つ下という設定でした。
影が薄いので、ほとんど出てこないですが……(忘れていた、とも言います)
「まあ、とりあえず三つ目までは理解できたよ。それで、四つ目は?」
「もちろん、カルヴァドス男爵家ですよ?」
「うちか……」
あっさりと告げられた事実に俺はため息を吐く。
薄々そんな気がしていたが、まさかそんな予想が当たるとは……
そんな俺にモスコさんは説明を続ける。
「なんせ、伝説の【巨人殺し】の家ですからね。いくら男爵家と言えども、王族が嫁ぐには申し分ないでしょう?」
「まあ、たしかにそうかもしれないな。だが、それはあくまで父親の偉業だぞ?」
「グレイン様はよくそう言いますが、そういう伝説は子孫代々に受け継がれていくものですよ? 後世になっても、「あの伝説の一族~」なんて恐れられると思いますよ?」
「そういうものか?」
モスコさんの言葉に俺は少し驚く。
言わんとすることは理解できないでもないが、それでも素直に受け取ることはできない。
その【巨人殺し】の異名を持つ男を間近で見ているせいだろうか?
そこまですごい事に思えないのだ。
「それに候補が二人いますからね?」
「二人? シリウス兄さんと誰だ?」
「もちろん、グレイン君ですよ。わかってるでしょう?」
俺の答えにモスコさんが肩をすくめて告げてくる。
「御冗談を」みたいな反応であるが、俺は別に冗談で言っているわけではない。
「いや、俺が候補になることはないだろう。ありえない」
「どうしてですか? 私としては、むしろシリウス様より候補に近いと思いますが……」
「なんでだよ」
ちょっと言葉が荒くなってしまう。
モスコさんの言葉の意味が理解できない。
どうして俺がシリウスよりシャル王女の相手にふさわしいのだろうか?
「年齢的には同い年のシリウス様に軍配が上がると思いますが、たかが二歳差ではそんなに差はないでしょう」
「そうだろうな」
「カルヴァドス男爵家の次期当主候補としても、どちらが成るかは現状わからないので、そこでも差がつけられませんね」
「ああ、そうだ」
モスコさんの言葉に俺は頷く。
現状、ほとんど差がない状態──いや、むしろシリウスに軍配が上がっているように思える。
それなのに、どうしてモスコさんは俺に軍配が上がるようなことを……
「ですが、勉学・身体能力・魔法技術など学院で習う項目については圧倒的にグレイン君の方が上です」
「圧倒的、は言いすぎだろ?」
「貴族として、社交はつきものです。他の貴族と交流することも、グレイン君に軍配が上がりますね」
「いやいや、なんで」
なぜかわからない評価に俺の言葉が崩れる。
どうして、そんな評価になるのだろうか……
そんな俺の疑問にモスコさんはあっさりと答える。
「現に、グレイン君は貴族の当主もしくは次期当主の人たちとコネクションがあるじゃないですか?」
「まあ、爺ちゃんの付き合いで交流することがあったからな。だが、それはシリウス兄さんだって一緒だと思うが……」
モスコさんの言葉に俺は戸惑いながらも答える。
たしかに彼の言っていることは合っているが、それはシリウスも同様だ。
兄弟で差をつけるわけにもいかないので、全員が連れていかれている。
ちなみに、アリスについては言わずもがな、だ。
圧倒的に社交能力が足りておらず、どこの家に嫁いだとしても心配されること請け合いである。
バランタイン伯爵夫人であるリナリアさんがどうにかしようとしているが、うまいこと行っていないようである。
「ちなみに、シリウス様に対する他家の当主及び次期当主の評価は知っていますか?」
「いや」
「正妻・後妻・愛人として欲しい、と」
「……」
あまりの評価に俺は声を失う。
女性よりも女性らしく、幼い時の可愛らしさから年を重ねるごとに綺麗さへと変化していったシリウスの評価は一体どこまで行くのだろうか?
今まで冗談っぽく言ってきたが、これからは冗談で済まない気がする。
現に他家の男から狙われているわけなのだから……
そんなことを考える俺にモスコさんは追加情報を告げる。
「ちなみに女性からも同様の評価を受けています」
「へ? 普通は旦那や息子を誑かした女狐?として、怒るところだと思うが……」
「あの綺麗さは男女共通で心を奪われるようで、婚約の申し込みがカルヴァドス男爵家に大量に届いているみたいですよ?」
「おおぅ」
知らなかった事実に俺はどう反応していいのかわからなかった。
本当にシリウスがかわいそうに思えてしまう。
美しすぎるがゆえに、このような事態を引き起こしてしまったわけだ。
弟としてどうにかしてあげたいと思うが、残念ながら俺にどうこうできる話ではないようだ。
残念ながら、俺にもできないことがある。
「というわけで、シリウス様よりグレイン君の方がシャル王女の婚約者の候補としては評価が高いですね」
「う~む……」
モスコさんの言葉に俺は納得する。
だが、それでも受け入れることはできない。
そんな俺の反応にシャル王女が不安げな表情で話しかけてくる。
「私では嫌ですか?」
自分が拒否をされていると思われたのだろう。
まあ、俺の反応はそれほど失礼なものだった。
ここは素直に謝ろう。
「すみません。別にシャル王女が駄目なわけじゃないんです」
「私が駄目じゃない? どういうことですか?」
俺の言葉に彼女が反応する。
俺の言い方が気になったのだろう。
自分が理由ではない、ということと、王女である自分を拒否する理由ならたしかに知りたいかもしれない。
「現に俺はリュコとティリス、レヴィアといった婚約者がいますからね」
「ついでに言うと、私もよ」
俺の説明にイリアさんが割り込んできた。
そんな彼女の乱入に俺はため息をついた。
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