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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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7-92 死んだ社畜は王女の嫁ぎ先候補に悩む 2


「とりあえず、話を戻しましょう。シャル王女の嫁ぎ先として考えられるのは、今のところ四つですね」

「ああ、そういえばその話だったな」


 モスコさんが話を戻してくれたので、俺の意識もそちらに向かった。

 さて、その四つとやらは一体どこなのだろうか?


「まずは他国です」

「他国か……たしかに順当かもしれないな」


 モスコさんの言葉に俺は納得する。

 たしかに王族の嫁ぎ先としては他国の王族と言う話はよく聞く。

 というか、それを考えれば、貴族への降嫁を考えなくてもいいのでは……

 そう思ったのだが、事はそう簡単ではなかった。


「ですが、ここで一つ問題があります」

「問題? いくら正妃でも、他国に対して影響を与えることは難しいだろう?」


 モスコさんの言葉に俺は首を傾げる。

 ここまでの一番の障害はシャル王女のことが嫌いな正妃のことだ。

 正妃は現状で国で二番目に権力を持っているが、だからといって他国に対して影響を与えられるほどではないと思う。

 そもそも国王ですら、そんなことが出来るとは思わないのだが……

 そんな俺の疑問にモスコさんは首を傾げる。


「そこではないです。シャル王女の母親の出自が問題になってくるわけです」

「母親の出自──子爵家出身、ってところか?」

「ええ。王族の中には伯爵位以上の高位貴族とそれ以外の子爵位以下の下位貴族で扱いを変える人がほとんどです。自分たちの国を支えている者の多くが下位貴族やその領民たちであることを知らずに、ね」

「とんでもない話だな。つまり、シャル王女の母親が子爵家出身だからという理由だけで、嫁に来るのを拒否する、ってのか?」

「そういうことです。そして、万が一嫁として受け入れてくれたとしても、その出自のせいで他の妃と差をつけられることもあるわけです」

「なるほど……それは駄目かもしれないな」


 モスコさんの説明に俺は納得する。

 たしかに彼の言う通り、これはかなりの問題だろう。

 他国の王族に嫁ぐのが一番いい案だと思ったが、案外これは厳しいかもしれない。


「次に二つ目ですが、三つ目と並行で説明します」

「なんで?」

「この二つはどちらも伯爵家ですから」

「伯爵家──バランタイン伯爵も候補、といったところか?」

「流石はグレイン様。その通りです」

「え?」


 モスコの賛辞に思わず驚いてしまう。

 まさか正解を言い当てるとは思わなかったからだ。

 しかし、個々で一つの疑問を感じる。


「たしかバランタイン伯爵家には女性の子供しかいなかったはずだぞ? しかも、全員が嫁いでいるし、しかもすでに30歳を超えているはずだが……」

「いや、流石に女性や30歳を超えた方に嫁がせるわけないじゃないですか。いや、年齢については、後妻とかの話もあるのでないことはないかもしれないですが、王族が嫁ぐには不向きでしょうね」

「だろう? だったら……」

「別に嫁ぐのは子供だけじゃないでしょう。孫の可能性だってあります」

「……なるほど」

「おそらくバランタイン伯爵家は長女の方が嫁いだ方が受け継ぐでしょうし、その方には確か息子さんがいらっしゃったはずです」

「その息子と結婚すればいい、というわけだな?」

「はい、そういうことです」


 話は理解できた。

 たしかに、それならばシャル王女の嫁ぎ先としては問題ないかもしれない。


「ちなみにもう一つの伯爵家とは?」

「マスキュラ―伯爵家ですね」

「ああ、あそこか」


 俺の脳裏に筋肉ムキムキの爺さんの姿が浮かんだ。

 たしかにあそこも伯爵家だったな。


「現当主の孫──次期当主と名高いロイン様がいらっしゃりますから、嫁ぎ先の評価としてもかなり高いでしょうね」

「今までの案の中だと、一番ましかもしれないな」

「ただ一つ問題が……」

「なんだ?」

「マスキュラ―伯爵家は筋肉至上主義ですから、シャル王女にも筋トレを要求する可能性が……」

「知ったことかっ!」


 あまりのどうでもいい問題に俺は思わずツッコんでしまった。

 なんで嫁ぎ先で筋トレを要求されることを問題として話をしなければならないのだろうか。

 他の家の場合は命を狙われる可能性があるのだから、それに比べればかなりどころか圧倒的にましだろう。


「ですが、シャル王女様は【聖女】と謳われるほどに美しい姿をされていますので、それを筋肉と言う鎧で包まれるわけには……」

「いや、ドレスとかを着れば見えないだろう?」

「いえ、意外とドレスの上からでも筋肉がついていることはわかるものですよ?」

「そうなのか?」

「ええ。ちなみにマスキュラ―伯爵家に生まれた及び嫁いできた女性は総じて素晴らしい筋肉をお持ちです。そして、自分たちで痩せるための筋トレメソッドを作って、痩せたい女性たちに大変人気です」

「……そんな情報は知りたくなかったよ」


 女性の筋肉については知りたくなかった。

 別に女性が筋肉をつけてもいいと思うが、余りつけすぎるのもどうかと思っている。

 前世で女性がボディビルをしているのをテレビ番組で映していることがあったが、その姿を見ても女性として認識するのが難しかった。

 かなり怖かった。

 腹筋が6個に分かれ、上腕や肩が膨れ上がっている姿を見れば、「すごい」と言う感情より恐怖の感情が浮かぶのだ。

 

「とりあえず、この二つの伯爵家も候補としては有力なわけです」

「なるほど、な」


 まあ、酷い扱いの受ける可能性のある王族に嫁ぐよりはかなりましだろう。

 両家の当主を知っているので、その二人がシャル王女に対して酷い事をする姿は全く想像できない。

 マスキュラ―伯爵については、世間一般の酷い事をすることはないだろうが、筋トレ強要と言う酷い事をしそうではあるが……

 まあ、シャル王女が受け入れれば、問題はないかな?







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