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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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7-72 死んだ社畜は防具を注文する 1


「ほう……これは……」


 倉庫に着くと、ディフさんは感嘆の声を漏らした。

 それはそうだろう。

 目の前には人間など簡単に丸のみできるほどの大きさの化け物の死体が鎮座しているのだから……

 だが、彼は決して驚いているわけではないようだ。

 これはアブソルシルバーイーターを見た人物の反応としては意外だな。


「驚かないんですね?」

「何がだ?」


 俺の言葉にディフさんは聞き返してきた。

 この人は何に驚くべきかわかっていないのだろうか?


「アブソルシルバーイーターの死体を見て、ですよ。こいつはかなり珍しい奴みたいですよ?」

「ふん、それぐらいわかっておるわい。こやつは魔銀を喰らったメタルイーターだろう?」

「わかるんですか?」

「それぐらい防具屋として当たり前だ。儂らの職業で一番最初に必要になってくるのは素材の目利きだからな」

「ふむ……なるほど」


 ディフさんの説明に俺は納得する。

 たしかに自分たちが商品を作るとき、その素材がしっかりとしたものだと見抜けないといけない。

 その辺は流石職人と言ったところだろうか?


「たしかに魔銀は珍しいが、儂らの業界で扱わないわけじゃない。人生で何度かは扱ったこともあるわ」

「何度か、なんですね」

「珍しい金属だからな。そして、こいつは扱いが非常に難しい」

「扱いが難しい?」


 ディフさんの言葉に思わず聞き返す。

 魔銀を素材にすると難しいのだろうか?

 まあ、かなり硬いから仕方がないのかもしれないが……

 そんなことを俺は考えていたが、ディフさんの次の言葉に考えが甘い事を気づかされる。


「お前さんはこいつの特性を知っているだろう?」

「特性? 魔力を吸収することですか?」

「ああ。こいつが魔力を吸収するせいで、武器や防具を作るときに魔力を使うことが出来ないんだ。つまり、生身の力でどうにかしないといけないわけだ」

「……なるほど。それはきつそうですね」

「きつい、なんてもんじゃないわい。普通の金属よりも数段硬いうえに、溶かすための溶鉱炉も魔法を使えん。魔銀を扱うことのできる職人はこの王都でも片手で足りるほどしかおらんだろうな」

「それは武器、防具を含めて、ですか?」

「すべてにおいて、だな」

「おぉ……」


 ディフさんの言葉に俺はそんな声を漏らした。

 俺の持って帰ってきたものがまさかそれほどの代物だとは……

 そして、モスコさんを通して職人を見つけてもらってよかったかもしれない。

 冒険者ギルドの紹介の職人が魔銀を扱えるかどうかはわからないからな。


「さて、聞きたいことがあるんだが……」

「なんですか?」

「お前たちはこの素材でどんなものを作ってもらいたいんだ?」


 素材を渡されても、どのようなものを作ればいいのかわからなかったのだろう。

 オーダーメイドだからこそ、客のニーズに合わせないといけないわけだ。

 まあ、とりあえず俺から注文しようか。


「とりあえず、俺は二の腕と脛を覆う手甲と足甲を作ってもらいたい」

「ふむ……それだけでいいのか? 見たところ、魔法も近接戦闘も行うことのできるオールラウンダーのように見えるが……」

「よくわかりますね。まあ、俺の場合は基本的に当たらないことを前提に戦っていますし、防御も魔法で行うことが出来ます。とりあえず、不意打ちに即座に対応できるように、その二つを頼みます」

「わかった。じゃあ、次はそこの嬢ちゃんだ」


 俺の注文を聞き終わった後、ディフさんはアリスを指さした。

 指をさされたアリスは最初から考えていたのか、あっさりと答えた。


「私は身体を覆う防具が欲しいわ。といっても、動きが阻害されるのは嫌だから、フルプレートアーマーみたいなのはやめてね」

「なるほど。この坊主みたいな手甲と足甲はいらないのか?」

「そうね、私はいらないわ。攻撃は剣ではじいたりするから、基本的に腕とかには当たらないと思うし……」

「なるほどな。じゃあ、次はそこの獣っ娘だ」


 アリスの注文を聞き終わり、次はティリスの番になった。

 ティリスは少し考えて、ディフさんに質問した。


「アタシは基本的にグレインと同じものでいい。ただ、細かい収納なんかをつけてもらえないか?」

「収納だと? そんなもの、何に使うんだ?」

「アタシは基本的に一つの武器では戦わない。戦う相手や戦況に合わせて武器を変えていくスタイルだ。だからこそ、その時その時で武器を変えられるようにすぐに取り出せる収納が欲しい」

「ふむ……なるほど。お前さんのような戦い方なら必要になるものだな。やったことがないからできるかどうかはわからんが、やるだけのことはやってみよう」

「ありがとう」


 自分の注文を受けてくれたことにティリスは感謝の意を伝える。

 ティリスの戦い方は近接戦闘を行う冒険者としては非常に珍しい。

 近接戦闘をする冒険者は基本的に一つの武器を使って戦うことが多い。

 複数の武器で訓練すると、一つの武器を扱うことに比べてうまくなりづらいからだ。

 だが、ティリスは獣人の種族性と本人の努力でどの武器もしっかりと扱えるのだ。

 しかし、そのせいでティリスの思う防具がなかったのだ。


「そこの娘はどんな防具が良いんだ?」


 ディフさんは次にリュコに質問する。

 しかし、リュコから返ってきたのは予想外の答えだった。


「私は別に……」

「む?」


 リュコから返ってきた答えにディフさんは首を傾げる。

 まさか注文すらされないとは思わなかったのだろう。

 俺はリュコの性格からある結論に辿り着き、命令を下した。


「リュコ、お前もしっかり注文しろ」

「で、ですが……」

「お前も大事なパーティーメンバーだろう? それなのに、一人だけお揃いの防具がないのもおかしいぞ」

「そ、それはそうですが……私はメイドですし……」


 俺の命令にも食い下がろうとするリュコ。

 やはりメイドと言う立場でこのような高価な素材を使った防具を受け取れないと思っているのだろう。

 そんなことを遠慮しなくてもいいのに……

 俺に対して文句を言うときみたいにはっきりと注文してもらいたいが……


「なら、俺がお前に合わせた防具を注文するぞ? それでいいのか?」

「え?」


 俺の言葉にリュコが驚きの声を上げる。

 だが、そんな彼女の反応を無視して、俺はいろいろと提案してみる。


「そうだな……とりあえず、体を覆うような防具が良いかな? だが、機動性が落ちるのは駄目だから薄目で、体のラインが分かるぐらいが良いかな?」

「なっ!?」

「スカートと足甲の間、手甲と肩の間に肌を見せる部分を作ってもらいたいな。覆われている体の一部がちらりと見える、そこに色っぽさが……」

「やめてください、グレイン様」


 俺が次々提案するのをリュコが遮った。

 その表情は普段の冷静な雰囲気から想像できないぐらい真っ赤になっていた。


「しっかりと注文しますので、グレイン様は黙っていてください」

「はいはい、わかったよ」


 リュコがはっきりと意見を言ってきたので、俺はあっさりと引いた。

 ふぅ、やっとか。

 普段からもしっかりと意見を言ってくれればいいのに……

 そうすれば、俺もこんなことをしなくて済むのだが……

 俺は一仕事を終え、力を抜く。


(ガシッ)

「ん?」


 そんな俺の肩を誰かが掴んだ。

 振り向くと、そこには笑顔のアリスとティリス、レヴィアがいた。

 笑顔を浮かべているが、どことなく怖い雰囲気があった。

 なんだ?


「さっきの内容について、後で聞かせてもらうわよ? 私たちの知らないところで、子供らしからぬことでもしていたんじゃないでしょうね?」

「あ……」


 アリスの言葉に俺は自分の失策に気付いた。

 いくらリュコを焚きつけるためとはいえ、子供らしからぬことをしてしまった、と。

 そして、そのせいで女性メンバーからよからぬ誤解を受けてしまった、と。






ブックマーク・評価・レビュー等は作者のやる気につながるので、是非お願いします。

勝手にランキングの方もよろしくお願いします。


主人公がセクハラ発言をしていますが、これは本心ではないので悪しからず……

とんでもない装備を提案する→リュコが嫌がる→仕方なくリュコに装備を注文させる、の流れですので勘違いされる方はおられないと思いますが……

流石に主人公は女性キャラにセクハラをして楽しむような屑キャラには設定していません。

ちなみに性的な表現は難しいと作者は感じてしまいました。

直接的な表現は駄目だし、曖昧な表現でうまい事伝わるように書くのはかなり難易度が高いですね。

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