7-4 死んだ社畜はブチギレる
「はぁ……」
3分後──俺は大きくため息をついた。
その原因は俺の周囲に転がっていた。
「「「「「うぐぐ……」」」」」
俺に襲い掛かってきた男たちは一瞬で返り討ちにあっていたからだ。
もちろん、返り討ちにしたのは俺なのだが……
しかし、まさかここまで弱いとは思わなかった。
冒険者として経験を積んでいるのであれば、俺の最初の魔法ぐらいは簡単に避けてくれると思っていたのだが、決してそんなことはなかった。
俺が炎魔法を暴発させただけで、ほとんどがあっさりとやられてしまったのだ。
本当にこいつらは冒険者なのか、思わずそんな心配をしてしまう。
その後も根性のある男たちが何度も攻撃を仕掛けてきたが、一太刀どころか俺に触れることすらできなかった。
「てめぇ……魔法とは、卑怯だぞ」
男の一人が俺を睨み付けてそんなことを言ってくる。
いや、こいつは何を言っているのだろうか?
「別に魔法が禁止されているわけじゃないだろう? というか、冒険者の半分以上が魔法を使って戦っているんだから、それを批判するのはどうかと思うぞ?」
「うるさいっ! てめぇみてえな新人がこんな魔法を使っているのが生意気だと言っているんだ」
「ははぁん」
「な、なんだ?」
男の言葉を聞いて、俺は思わずにやついてしまう。
そんな俺の反応に男は慄いていた。
「あんた、魔法が使えないだろ?」
「な、なぜそれを……」
俺の指摘は当たりのようだ。
先ほどから明らかにおかしいと思っていたのだ。
この場にいる男たちは全員──俺と一緒のいわゆる人族という種族に当たる。
魔族に比べると魔力は低いし、獣人に比べると格段に身体能力が低い劣等種族と思われがちだが、決してそんなわけではない。
どちらの種族の優れている部分よりかは劣っているかもしれないが、両方使えるというメリットがあるのだ。
つまり、人族には基本的に例外を除いて魔力を有しているのだ。
そのため、人族である以上決して魔法が使えないわけがないのだが……
あのアレンだって、魔力が少ないが身体強化の魔法を使うことが出来ているし……
「おかしいと思っていたんだよ。いくら俺を舐めているからといって、【身体強化】もなしに戦闘を行おうとするなんて……魔法が使えないと言っているようなものだろう?」
「ぐっ……」
「それに魔法が使えないほどの実力だったのなら、俺の今までの感覚も間違いがなかったみたいだな」
「感覚、だと?」
俺の言葉に男が反応する。
一般人であるならばその形相に恐怖を感じるかもしれないが、ある程度の実力を持つ人間ならば実力を見抜けるので怖がることはないだろう。
もしかすると、こいつはその形相で今までやってきたのかもしれない。
「明らかに弱いってことだよ。少なくとも、新人冒険者にちょっと毛が生えたような実力にしか感じ取れなかったんだよ」
「なんだとっ!」
俺の言葉に男がキレる。
馬鹿にされていることが分かったのだろう、怒る気持ちもわからないではない。
しかし──
「悔しかったら否定してみろよ。本来なら冒険者がクエストに出かけているような時間帯にギルドでたむろしていて、新人冒険者が来たら脅しに掛かるような暇な人間──そんな奴が強いはずがないだろう?」
「うぐっ」
俺の指摘が図星だったのか、男は言葉を失ってしまう。
まあ、反論してきたとしても、この状況ならば簡単に論破することが出来ていただろう。
そもそも反論できない時点でこいつらは頭も大したことはないだろうし……
そんなことを考えながら、俺は男に近づいていく。
そして、倒れた男の両頬を土で作った手でガッと掴む。
「なっ、てめへ……ほのほまほふじゃなかったほか?」
「いつから俺が炎魔法しか使えないと錯覚していた? というか、複数属性の魔法を使う奴ぐらい、別に珍しくはないだろう?」
男の言葉に俺はそう問いかえす。
たしかに複数属性を持つ人間は少ないが、決していないわけではない。
100人に2,3人ぐらい入るのではないだろうか?
まあ、そんなことを気にしている場合ではないな。
俺は男の顔を掴んだまま、右手を高々と上げる。
男が吊り上げられている状態になった。
「な、なにほ……」
「まだ戦いは終わっていないだろう? 続きをやろうか……」
「なっ!?」
俺の言葉に男が驚愕の表情を浮かべる。
明らかに勝利が確定している状態で、これ以上やることに驚いているのだろう。
まあ、普通に考えれば、必要のない攻撃など時間の無駄でしかない。
だが──
「あんたらはうちの女性陣に言い寄ってくる悪い虫だからな。二度と話しかけられないように徹底的に潰さないといけないんだよ」
「ははへっ!」
俺が本気であることに気が付いた男は逃げ出そうともがく。
だが、一向に抜け出すことはできない。
もちろん、俺に逃がすつもりが全くないからだ。
俺たちがそんな会話をしていると、不意に後ろから声が上がる。
「降参だっ!」
振り向くと、そこには最初にやられた男の一人だった。
ようやく意識を取り戻したのか、リーダー格の男がやられているのを見て、たまらず叫んだと言ったところだろうか?
たしかにこの戦いは降参がありとなっている。
「降参するっ!」
「俺も」
「もう戦意はない」
最初の男に追随するように次々と男たちが降参の意思を告げてくる。
彼らの目には俺への恐怖が刻まれており、もうこれ以上戦おうとする意思はない様だ。
そんな仲間たちを見て、リーダー格の男も──
「俺も降さ……」
「言わせねえよ?」
──降参の意思を伝えようとしたが、俺はそれを許さなかった。
高々と上げた右手を振り下ろし、思いっきり顔面から地面に叩きつけた。
(ドンッ)
「かはっ!?」
地面に叩きつけられた男はその衝撃に情けない声を漏らす。
俺はその表情がおかしくて、思わず吹き出してしまった。
「「「「「「は?」」」」」
そんな俺たちの様子を見て、先ほどから降参の意思を伝えていた男たちが呆けた声を出していた。
何をそんな驚くことがあるんだろうか?
戦いである以上、この程度で驚くことはないと思うが……
「お、おい……俺たちは降参しただろうっ!」
男の一人が俺に向かって問いかけてくる。
その声には焦りの色が見えており、深刻そうな雰囲気が伝わってくる。
そんな彼に俺は聞き返す。
「何がだ? まだ降参が決まったわけじゃないぞ?」
「なにっ! 俺たちはさっきから降参すると言って……」
「たしかにあんたたちは「降参する」と言っているな。その点はしっかりと認識しているさ」
「だ、だったら、どうして……」
俺の言葉に男が困惑の表情を浮かべる。
周囲の人間も同様に俺に向かってそんな表情を向けてきた。
なぜそんな表情を向けられるのか、俺にはわからない。
俺は最初から言っているじゃないか。
「この戦いの終了条件は【相手が全員降参するまで】でしたよね?」
「「「「「っ!?」」」」」
俺の言葉に男たちの表情が驚愕に変わる。
信じられないと言った表情だった。
まあ、自分たちが勝つと信じていたからこそ、細かい事を気にしていなかったのだろう。
だが、こちらは条件を出した側なので、しっかりとその時のことを覚えている。
「つまり、いくらあんたたちが降参したとしても、こいつが降参の意思を告げない限りはこの戦いは終わらないわけだ」
俺は地面に叩きつけたリーダー格の男の体を上げる。
だらんと四肢が力なく垂れさがる。
どうやら、先ほどの衝撃で意識を失ったようだ。
だが、地獄はここからだぞ?
「さて、あんたらはどこまで楽しませてくれるかな? 俺に喧嘩を売ったんだ、そう簡単には逃がさねえぜ?」
俺は口角を上げ、ニヤリと笑う。
そんな俺の心は怒りで激しく燃え上がっていた。
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今作の主人公は10歳、ヒロイン枠の少女たちは12歳(一部、もっと年上)ということになっています。
ですが、この世界観は日本ではなく、どちらかというと外国人ベースのキャラクターで考えています。
つまり、実年齢よりも3,4歳は上の見た目であると考えてください。
まあ、難しいかもしれませんが……
作者は老け顔(とある番長シリーズの1,2作目に出てくるスケールのでかい人、または5作目に出てくる○北高校の番長さんを思い浮かべてください)なので、童顔の日本人のスケールに収まらない人間なのでこんなことを言っているだけかもしれませんね。




