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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
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7-5 死んだ社畜は暴れまわる


「おらぁっ!」

「ぐふっ」


 俺の膝が腹部にめり込み、男は意識を取り戻す。

 あまりの痛みに周囲を見渡し、自分がどういう状況に陥っているのか理解したようだ。

 だが、なぜこんなことになっているのかは理解できていないようで、俺に対して文句を言ってくる。


「おい、はなへ(せ)っ!」


 どうしてこんな状況でそんなことが言えるのだろうか?

 自分がどういう立場なのかを理解させるべきだろう。


「ふんっ」

「がはっ」


 俺の頭突きが男の顔面に入る。

 男は鼻血を出し、歯も数本折れていた。

 もちろん、俺は土魔法で額をコーティングしていたので無傷である。

 だが、男も当然ただただ俺にやられているつもりはない様だ。

 どうにか俺の手から逃れようと四肢を振り回す。

 当然【身体強化】を施した俺にとっては無視以下の動きではあるが、流石に大の大人がこれほど暴れるのは鬱陶しい。

 俺は男の右の手首を左手で掴み、相手の重心を右側に傾けながら右足を相手の右足にかける。


(ふわっ)

「なっ!?」


 男の体が宙に浮いた。

 突然の状況に男は驚きの声を上げる。

 だが、背中から地面に叩き落されたことですぐに悲鳴の声に変わった。


(ドスッ……ブワッ)

「かはっ!?」


 俺の右拳が男の腹部に突き刺さり、男の体がくの字に曲がる。

 さらに、男の体を通った衝撃が地面の砂を思いっ切り巻き上げた。

 巻き上がった砂が舞い降り、周囲を見渡すと男たちの表情には絶望の色が見えた。

 まあ、これだけのことを見せられれば、そんな表情にもなるか……

 俺はそんな男たちの表情を気にせず、リーダー格の男に視線を向ける。

 腹部の衝撃により肺から空気を強制的に吐き出された男はゴホゴホと咳き込んでいた。

 そして、俺の視線に気が付くと、縋り付くような視線で話しけてくる。


「や……やめてくれ……降さ……」


 だが、男は最後まで言葉を紡ぐことはできなかった。


(バキッ)

「がっ!?」


 俺のトゥーキックが男の顔面に突き刺さったからだ。

 そのせいで男は最後まで言葉を告げることが出来なかったのだ。

 まあ、元々言わせるつもりはなかったが……


「ぎゃああああああああああっ」


 男は顔面を抑えながら、その場を転げまわる。

 おそらく鼻の骨が折れ、陥没してしまった痛みに耐えきれないのだろう。

 骨が折れた感覚は蹴った足を伝って分かっていたので、その行動に対して驚くことはなかった。

 だが、ここまで痛がらなくてもいいだろう。

 本当に冒険者なのか、こいつは?

 とりあえず、うるさいので黙らせよう。


「ふんっ」

(バキッ)


 サッカーボールをゴールに向かってシュートするように男の頭を思いっ切り蹴り飛ばした。

 男の頭が蹴られた勢いにつられて、男の体も吹き飛ばされた。


(ドオオオオオオオオオオオオオオオオンッ)


 男の体がぶつかった衝撃で訓練所の壁の一部が崩壊した。

 その光景に周囲の男たちはさらに驚愕の表情を浮かべた。

 俺はそんな表情を見て、そこまで驚くことなのだろうかと疑問に思ってしまう。

 学長が結界を施している学院の訓練所ならともかく、欠陥住宅さながらの明らかに手抜き工事をしているこの訓練所の壁が壊れることなど当たり前ではないだろうか?

 もしかして、この男たちはあの壁を壊すことすらできないのか?

 どこまで弱いのだろうか……

 ちょっとこれ以上は弱い者いじめをしているようで、気が引けてきた。

 いや、もともと弱い者いじめだったかもしれないが……

 とりあえず、あと十数回攻撃したらやめることにするか……


(ブワッ)


 俺は右手を上げ、直径5mほどの火球を作った。

 別になんてことはない、ただの初級魔法【火球(ファイアボール)】である。

 といっても、普通のファイアボールの十倍近い魔力を込めているのでこれほどの大きさになっているわけだが、これは最近では学院の魔法学の授業でも習うようになったことなので驚くことではないだろう。


「「「「「なっ!?」」」」」


 そんな俺の予想とは裏腹に男たちは驚いていた。

 本当に実力がないんだな、こいつら。

 この程度、この知識がなかった時代の魔法学しかならっていない学院生ならともかく、実戦で魔物と戦い続けている冒険者たちがしていいような反応ではないだろう。

 実戦で魔法を使い続けていれば、知識がなくともこれぐらいはできるようになるはずだ。

 少なくともエリザベス母さんやクリス母さんはできていた。

 ……もしかして、俺の買い被りだったか?


「……まあ、いいか」


 俺は気にしないことにして、火球を男に向かって投げつけた。

 火球は地面を抉りながら、男に向かって突き進んでいった。

 その光景を見て、周囲から悲鳴が上がる。

 いや、なんでそんなに驚くんだろうか?


「逃げろっ!」


 男の一人がリーダーの男に叫ぶ。

 だが、気絶している男にはその叫び声も聞こえない。

 そして、火球は無情にも男を飲み込もうと──


(ダッ)

「ん?」


──したその時、黒い影が男と火球の間に割って入った。


「【斬魔剣】」

(ズバッ)


 そして、なんと俺の火球を真っ二つに斬り裂いたのだ。

 真っ二つに斬り裂かれた俺の火球はそのまま二つに分かれて進んでいき……


((ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ))


 訓練所の壁を思いっ切り破壊した。

 そして、そこはどうやら訓練所の天井を支えている壁だったようで……


(ガラガラガラッ)

「「あっ!?」」


 その一角の天井が崩れ落ちてしまった。

 俺と乱入者はその光景に思わず驚きの声を上げてしまった。






ブックマーク・評価・レビュー等は作者のやる気につながるので、是非お願いします。

勝手にランキングの方もよろしくお願いします。


今回、主人公は人が変わったように暴れまわっていますが、基本的にぶちぎれているからです。

自分の身内に対して過保護な面があるので、それを排除しようと行動しています。

あと、相手が冒険者ということもあって、自分より弱い事はわかっているがある程度の実力はあるだろうと考えているので、若干過剰な力で戦っています。

基本的に主人公の性格は変わっていません。

普段は抑えている部分が出ていると言ったところでしょうかね?

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