自称王子
「此処は...」
少年は、エメラルドグリーンの瞳を私に向けた。8歳くらいにしてもの凄い美少年です。銀髪、エメラルドグリーンの瞳、耳としっぽーーケモミミもふもふが大好きな私は、抱きついてもふもふする衝動をじりじりと押さえつけていた。
少年は私を見ると不思議そうな顔をした。
「貴様、俺をどうする気だ」
「え...?」
少年はまるで大人の真似をしようと、まだ声変わりのしていない声を低くしようとがんばっているようだった。
「えっと...道に倒れて、凄い熱を出してたから...」
「貴様、俺を子供扱いするな。貴様か! 俺を誘拐したのは」
「え? 誘拐?」
「フッ、『一瞬拘束』!」
私は少し間の抜けた声を出した。すると彼は嘲笑うように素早く起き上がると、私に魔法をかけてきた。水に濡れた少し体温を感じるハンカチは、地面に放り出された。
そういえば、「一瞬拘束」の魔法は「無属性」でないと使えない”上級魔法”のはずだ。到底子供が扱えるものではないんだけど...。
「...『魔力解放』」
私のつぶやきと同時に、辺り一帯が紫色の煙に包まれた。この紫色の煙が、私の魔力。「魔力解放」は、一定の魔力を解放させる事によって、通常よりも強い攻撃を繰り出す事が出来るが、周りに放出されるので、相手もそれを上手く使えば敵を倒せる。
魔力が無くなるなどと少なからずリスクはあるが、私の場合は「魔力無制限」なのでそこら辺なあまり気にしない。
「魔力解放」の煙によって、少年の出した「一瞬拘束」の魔法と少年は弾き飛ばされた。そう、これは上手く使うと魔法と相手を弾き飛ばす事も出来る。
「ごめんね...『睡眠』」
解放された魔力は強力だから、少年はしばらく起きないはずだ。「睡眠魔法」の効力は一時間くらいだから、この場合は二時間くらいかな。
途端、私のお腹がぐーとうなりを上げる。あー、お腹減ったな...。
そういえば、「無限バック」無限なのに食料全然入れてなかったわ。「厨房から取るのはちょっと...」って何で遠慮してたんだろう!
「魔物って食べれるっけ?」
えっと...本によると、ちゃんと調理したら食べられるものもあるらしいけどなー。うーん、出来れば売りたいからなー。
「仕方無い。食料を探そう」
うん、此処は探すよ。確か、探索系の魔法があったっけな。
「『探索 食料』」
ただし魔物を除く。しばらく目を閉じていると、森を第三者視点で見ているような感覚が起こった。目の内側に、空中から森を見る絵図。ただ、森は白黒で所々に光る点が見える。きっとこれが、食料の在処だろう。
私は少年の周りに「守り」を張ると、食料を取りに行った。果物や野菜、キノコなどがあった。勿論、魔物ではない動物ーーヤギなどーーも何故か居たが、我は、無駄な殺生はしないのである...と何となく言いながら見逃した。
まぁ、私は肉も魚も大好きなんだけど、自分の手で殺すとなると...うん、ちょっとやだな。←魔物殺しまくってた私が言える事じゃないけどね☆
「今何時くらいかな? お腹減るって...あー朝ご飯食べてないからかー」
体内時計的には、今12時くらいですな。
私はリンゴ...であると信じている果物を齧りながら言った。まだ食料はたんまりあるぜ。魔法で便利。本当に便利です。
私がそんな事をブツブツ言っていると、少年は目を覚ました。もう二時間たったのか...。
「大丈夫かい少年よ。リンゴいる?」
私は新しいリンゴを取り出して、少年の顔の前に突き付けた。すると、少年は強い警戒を私に示した。
「この誘拐犯め! 俺をどうする気だ」
「どうする気かってね...えっと、お腹減ってるでしょ? リンゴあげる」
「っ! 体が...!!」
動かすとまた攻撃してくるので、私は「圧力魔法」をかけて少年の動きを抑えた。ただ、強くしすぎたのか苦しそうだ。
「あ...ごめんね」
少し魔法を緩くすると、私は少年に話しかけた。
「ねぇ、名前は?」
「お前...俺を誘拐したんだろ? 何で知らないんだよ...」
「だって誘拐してないもん。君が言わないのなら私から言うね。私はリン・ヘビナ、道中に君が倒れて高熱出してたから...此処に連れてきた」
「...」
少年は一旦考え込むように目を閉じると、私に真剣な眼差しを向けた。
「俺はもうお前を襲わない。自己紹介をするから、魔法を解け」
「ありがとう。『解除』」
私が唱えると、少年はゆっくりと起き上がり、私と同じく地面に座った。少し長い銀髪が目をかかり、彼はそれを撫で付けた。
「俺はアーレイ・リバス。『獣大陸』の第一王子だ!」
「...へ?」




