獣人の少年
「あ、ニル、リン、そこに居たのか...」
話が終わって、偶然(笑)入って来たエル。手には、「魔法陣」の描かれた紙を持っていた。リンはそれを見ると、首をかしげた。
「それで、魔力共有とかするの?」
「あぁ、この『魔法陣』は、この森に古くから住む『ドラゴン』の血液で描かれてるんだ。これに魔力を流し込むと、この森が修復される。ちなみに...リン、ドラゴン倒してないよね?」
「大丈夫。私は基本的に襲って来た魔物しか倒してない」
だって「正当防衛」だから☆ 無闇に生き物を殺すのはいけない事です、とおばあちゃんがハエを叩きながら言っていました。
あ、ちなみに、倒した魔物は「無限バック」の中に入れています。クロノさんのローブと一緒にあったもので、「無限魔法」がかかっている為色々とものが入れられる。おまけに保存状態も良いらしいので、魔物はそのまま中にインしている。ちなみに「無限バック」は、ローブの中に入れられますので両手は空いてます。
「うん、彼は人は襲わない主義だからね」
ニルはニコニコしながら、「魔法陣」の描かれた紙をエルからぶんどると、ツクエの上に置いた。
「まぁ、水晶玉は良いね。人とか滅多に入って来ないから大丈夫だよきっと」
「もし人が居たら、どうなるの?」
「えっとね...その人の時間が10年くらい巻き戻りますー。そして原因不明の高熱に襲われまーす」
「え...」
さいですか...というか、復元するのに時間が巻き戻る...あぁ、元に戻すって事は、過去の姿に戻すという事か。それなら納得だけど...
「私達は大丈夫なの?」
「あぁ、エルフと一緒なら大丈夫だと思う」
「...」
何かもんのっすごく心配になってきた!! 魔法陣に魔力入れるの躊躇うんですけど!!
「ほら、責任とってやれよ」
「そうだそうだー! ビビるな若者よー!!」
エルとニルに背中を押された私は、渋々ツクエの前に立った。ただの紙に、青い血で描かれた細かな魔法陣。これに触れ、魔力を流し込む。
体から、何かエネルギーのようなものがどんどん吸い込まれて行く気がするが、大して気にも止めなかったし、疲れもしなかった。
しばらく、魔力を流し込む状態が続き、エルとニルは驚きと興奮で目を輝かせていた。魔法陣が青く光ると、ニルは「もう手ぇ離して良いよ〜」と言った。
「もーぅ、何でこんな魔力あるのかなぁこのこの〜」
「ちょーー止めてよニルったら...」
ニルは、魔力注入が終わると、私を小突いて来た。エルは、どうも納得いかないという顔をしていた。
「おい、お前...何者なんだよ」
「そうだね...君は、知る必要のないものだよ? エル」
「馬鹿言え。ニルには話してただろうが」
「女子同士の会話を盗み聞き? 良い趣味してるねー」
「バーカ、俺は...そんな趣味じゃねぇよ」
若干目を明後日の方向に向けるエル。私は優しく微笑むと、ニルに話しかけた。
「さて、そろそろ私はお暇しようかな」
「え、もう行っちゃうの?!」
ニルは絶望の表情を浮かべ、私に詰め寄って来る。私は急いで弁解した。
「ごめんね...私は、やらなきゃならない事があるから」
「うぅ...もう少し居てほしかった...」
エルは、ニルのように悲し気な表情は浮かべていない。ただ、目を瞑って唸るだけだった。私的には、あまり引き止めてほしくないので、エルの言動はありがたかった。
喚くニルは置いておいて、私はツリーハウスの外に出た。続いて二人も出て来る。
「わー、リン行かないで〜!」
「ま、また来るから...」
「うぅ...」
「リン、言ってなかったが、魔力をこの森と共有したという事は、この森から加護も与えられた事になる。だから、この森から出る道順は、森が教えてくれるはずだ」
「そう、なんだ...うん。分かった。じゃあね! 色々ありがとう!!」
私は、二人に別れを告げると、とりあえず勘で真っ直ぐ進み始めた。
もう既に、二人の姿は見えない。私が歩く度に、木が動いて道が作られる。おかげで迷う事は...というか、この道が合っているのかも分からない。とりあえず進んだ。森を信じて。
しばらく進んでいると、何か光りが見えた。眩しくて目が開けられなかったが、私はその光に向かって走った。もしかしたら、外かもしれないーー。
「うわぁ!」
途端、何かにつまづいて転けてしまった。光は当におさまり、続くのは木の道のみ。森の外ではなかった。だったらあの光はなんだったというのだろう。
私は急いで、何につまづいたのか確認するべく、後ろを振り向いた。そこには、7,8歳くらいの銀髪の少年が横たわっていた。
頭からはオオカミのような耳が生え、ズボンからはしっぽが出ている。顔をパーツがとても凛々しい少年は、将来きっともの凄くカッコいい人になるだろう。
「息はあるけど...もしかして、光ってたのはこの子かな...? 傷とかは...ないみたいだけど...」
気絶してるっぽいね...。いや、もの凄くこの子熱い!
私は急いで少年を抱えると、何処か水辺がないかキョロキョロと辺りを見回した。すると、木がゴゴゴゴゴ...と動いて新たな道が開けた。その道の先には、大きく美しい湖が広がっていた。日の光に照らされ、湖面はキラキラと光り、風で少し波打っている。周りには紫色の奇妙だが可愛い花がたくさんあった。
私は湖にかけよって、綺麗な芝生の地面に少年を降ろすと、「無限バック」の中からハンカチを取り出して湖の冷たい水に浸した。
「あぁ...冷たい」
ハンカチを絞ると、私は畳んで少年の額に乗せた。少年は現在、顔を真っ赤にし、喘いでいる。熱が上がってきているようだった。
私は心配そうに首をコクッと傾けると、少年の胸に手を当てた。
「『治療』」
すると、少年の体は光りだし、息も落ち着いてきた。私は、少年の目が覚めるまで魔法をかけ続けた。しばらくすると、少年はゆっくりと目を開けた。エメラルドグリーン色の澄んだ目だった。
「此処は...」




