~第十五章~
弾丸はシェルの左わき腹を貫いていた。
それは猜疑心の強いクンツァイトが何時も護身用に懐に入れていた短銃だった。
一瞬の躊躇い、それが最悪の結果を齎した。
(致命傷じゃない、けど……)
クンツァイトの銃口は見えた。……が避けきれなかった。
致命傷を外すのが精一杯だった。
「カルセドニーの息子か? あまり奴には似てはおらんな。……母親似か? 緑がかった碧い髪と瞳。見るのは初めてだが美しいものだ。殺すには惜しい気もするが、その傷では助かるまい。今、楽にしてやろう。仇を討とうと思えば出来たものを……何を躊躇ったのか知らんが、父親と同じで甘い事だ」
そう言いながらクンツァイトはシェルの額に向けて短銃を構えた。
(殺られるっ!!)
「シェルタイト様ーーーっ!!」
シェルの腹心たちの絶叫が響く!
助けに行きたい! 己が命に代えても!
……けれど、間に合わないっ!!
ズドォォオオオオーーーーーンッッッ!!
銃声が響き渡った。
シェルは死を覚悟した。
だが――
弾丸はシェルの額当てを割っただけだった。
何かが弾丸の威力を弱めたのだ。
「……シェル、良かっ……た。……君を護れ、て…………本当に……良かっ、た……」
「……セ、レス?」
そう言うと、セレスはシェルの腕の中で、事切れた。
「…………」
シェルはその一部始終を見ていた。まるでスローモーションのように。
そう! 瞬き一つ出来ずに。
セレスが自分を庇って撃たれる様を。
でも何が起こったのか理解出来なかった。
(一体何が起こった? 何故こんな事になったんだ? 俺が護りたいものはセレスだけだったのに!! ……何故っ!?)
それはシェルの心が凍りついた瞬間だった──――
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「双子の兄弟だと!?」
クンツァイトとアンバーは驚きを隠せなかった。
しかし、次の瞬間!
クンツァイトの短銃は弾き落とされ、クンツァイトとアンバーはシェルタイトの側近たちに後ろから羽交い絞めにされていた。
「クンツァイト殿、お命が惜しければ下手に動かれぬ方が宜しいかと」
「わ、分かった。お前たちも手出しはするな!」
主人を人質に取られ、クンツァイトの兵たちも動きが取れなくなった。
「シェルタイト様!」
もう一人の側近がシェルに駆け寄ろうとした時!
シェルはセレスを抱き上げながら、ゆっくりと立ち上がった。
「シェルタイト様! そのお身体では無理です! セレスタイト様は私が……」
「触るな! ……セレスは俺が、連れて行く」
ちょうど、その時だった。私がその場に辿り着いたのは。
「セレス! ……シェルっ!?」
セレスを抱いたシェルの姿を見て私は思わず叫んでいた。
銃声は私の耳にも届いていた。
(セレスに何かあったのか? ……ま、さかっ!?)
私の声を聞いて一瞬シェルは私の方を振り向いた。
その時のシェルの瞳を私は一生忘れない。
深い深い……怒りと哀しみと絶望と、そして決意を秘めたあの眼差しを!
「……シェ、ル」
その瞳を見た瞬間、私は何も言えなくなってしまった。
「俺はこれから神殿に向かう。道を開けさせろ!」
クンツァイトとアンバーを人質に取られている兵たちは黙って道を開けるしかなかった。
「俺は自分の本来の使命を果たす。俺が神殿に着いたら、クンツァイトとアンバーを解放して、お前たちは島から離れろ!」
「シェルタイト様!?」
「……これが王としての俺の最期の命だ!!」




