~第十三章~
「セレス! ……やっぱり此処に居たんだな!」
セレスは一族の男たちと共に島の東側にある洞窟に居た。
勿論、私も同道していた。
そこは島に何かあった時の前線基地であり武器庫も兼ねていた。
シェルより少し遅れてだったがセレスもクンツァイトの動きを察知して、迎え撃つ準備をしていたのだ。
「シェル!」
驚いたのはセレスだけではなかった。
「シェルタイトさ、ま」
一族の者たちも動揺の色を隠せなかった。
まさかシェルがこの場に現れるとは私も思ってはいなかった。
『もう二度と来るな!』
そう拒絶されてから流石に私も西の浜辺には行けなかったし、シェルの姿を見たのは久しぶりだった。
「セレス! クンツァイトと戦うのは無理だ。皆殺しにされる。女、子供は島の外へ逃がした。お前は男たちを連れて“森”へ行け!」
「シェル、それは……」
「その首飾りをカルセドニーから受け継いだのなら知ってる筈だ。この島の正体を! 島を起動させて森にシールドを張るんだ! 島の外壁が破壊された以上、島全体にシールドを張るのは不可能になった」
(島の正体? シールドを、張る?)
私にはシェルの言葉の意味が分からなかった。
「クンツァイトの兵は俺が食い止める! その間に島を起動させるんだ! 分かったな!」
そう言うとシェルは海に向かって走り出そうとした。
東の洞窟はクンツァイトが大砲で破壊した場所から目と鼻の先にある。
「シェル! 一人でなんて無理だ!」
「俺は一人じゃない! 今も俺の配下が戦ってる! セレス、お前は族長だ。今は余計な心配をせずに、一族を護る事だけを考えろ!」
「でもっ!」
「来るな! 足手まといだ!!」
そう叫ぶとシェルは私の方に向き直った。
そして──
「オニキス……さん、頼む! セレスを護ってくれ!」
そう言うと一目散に走り出した。彼はもう振り返らなかった。
(シェル、君は……)
真摯な瞳だった。それが彼の本心なのだろう。
彼は――
「シェル! 待って……」
追いかけようとするセレスを私が止めた。
「セレス! ここはシェルの言う通りにした方がいい。あいつなら大丈夫だ。シェルは強い。俺たちが居た方が却って足手まといになる」
「…………」
セレスはまだ何か言いたそうにしていたが……
「分かりました。シェルの言うように“森”に行きましょう!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「今、この島は最低限の防衛システムしか働いていません。森の中央に神殿があって、この島の中枢である神殿を護る為のシールドと神殿に近づかせない為のシステム。森に入ると方向感覚を失って二度と戻れない…というのが神殿を護るシステムです。この首飾りを持った者は例外ですが……」
「シールド……と言うのは何なんだ?」
「全ての攻撃を遮断する鉄壁の防御壁です。神殿の中にある祭壇の壁にノンマルタス一族の王家の紋章である“双頭の龍”が彫られています。その向かって左側の龍の額にこの首飾りの石を嵌め込めば島の防衛システムが完全に目覚めます。でも、クンツァイトに島への上陸を許した以上……」
「森に逃げ込んで森全体にシールドを張る。……そういう事だな」
「はい」
森へと急ぎながら私はセレスから“この島の正体”についての説明を受けていた。
「それで、この島は一体何なんだ?」
「これは島ではありません。失われた偉大なる文明からノンマルタスが受け継いだ最大の遺産……」
それは、もう直ぐそこに森が見えるところまで来た時だった。
我々の上空に飛来する物があった。
私は咄嗟に
「セレス、危ないっ!!」
そう叫んでセレスを抱えると近くにあった岩の影に飛び込んだ。
その直後!
凄まじい轟音と衝撃が走った。
大砲から打ち出された砲弾三発が我々の間近に着弾したのだ。
「大丈夫か、セレス?」
「は、はい」
衝撃がおさまって岩の影から這い出た時、私とセレスの目に映ったのは信じられない光景だった。
半分吹き飛ばされた森、そして累々と横たわる屍。
まるで地獄絵図だった。
生き残ったのは私とセレスのみ――
「う、うああぁぁぁあああああああーーーーーーっ!!」
セレスの絶叫が響き渡った。




