~第十二章~
「クンツァイトがっ!?」
「はっ! クンツァイトは島の人々を皆殺しにして、アクアオーラの隠し財宝を手に入れるつもりです。尤も、クンツァイトの真の目的は前者でしょうが」
「財宝が欲しいのはアンバーの方か。それでクンツァイトを焚き付けたんだな。奴のこの島への遺恨を利用して。此処に財宝などありはしないのに。此処にあるのは……」
シェルは唇を噛んだ。
「もう一刻の猶予もありません、シェルタイト様!」
「分かっている! 後は俺一人で何とかする。お前たちは(ノンマルタスの都へ)帰れ!」
「シェルタイト様……っ!?」
「これは、事此処に至るまで決断出来なかった俺の咎だ。ノンマルタスは地上の人々に干渉出来ない! 帰れっ!!」
「それは貴方も同じ事でしょう、シェルタイト様! 貴方はノンマルタス一族。既にアクアオーラの人間ではないのですよ!」
「分かっている!」
「いいえ、恐れながら申し上げます。我々はずっと貴方にお仕えし、お護りして参りました。貴方のお気持ちも、決断を遅らせた理由も痛いほど分かっているつもりです。ですからご命令を! ノンマルタスは地上の人々に干渉しない――それは確かにノンマルタスの掟。このアクアオーラ一族のノンマルタスの血が既に失われている事は存じております。ですが、この島の人々がカイ様の、王家の血を継ぐ方々である事は紛れもない事実。我々が王家の方々をお護りするのに何の不都合がございましょう」
「お前たち……」
シェルは心底嬉しかった。
「ご命令を! シェルタイト様!!」
「……分かった。ノンマルタスの次代の王としてシェルタイトが命じる! 島の人々を護れ! そして島の外へ非難させるんだ! だが、決して地上の人々を傷つけるな! 俺はセレスと共に“あれ”を起動させる!!」
「御意!」
シェルはセレスの屋敷へと走った。
しかし事態はシェルが思っていたより早く、最悪の方向に向かっていた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
『シェルタイト。アクアオーラ一族のノンマルタスの血は既に失われています。貴方がノンマルタスの王家の血を継ぐ証である碧い髪を持って生まれたのは、先祖返りと言うより……カイの生まれ変わりであるからだと私は考えます』
それはノンマルタスの女王の言葉だった。
『そして、貴方たちが双子で生まれた事にこそ大きな意味がある!』
屋敷にセレスは居なかった。
「セレス、何処に居る?」
セレスを探しながらシェルは女王の言葉を思い出していた。
そう! 代々ノンマルタスの王が受け継いできた二つの首飾り。
その片方がカイの手に渡り、首飾りは長い間――地上と海とに分かたれた。
俺とセレスが双子だったが故に俺は海に流され、ノンマルタスに救われて……そして、この首飾りを手にした。
カイの首飾りはセレスが受け継いでいる。
二つ処に分かたれていた首飾りを一つに戻す。
それこそが、俺たちが双子で生まれた意味。
そして……
ドオオォォォオオオオオーーーーーン!
その時、凄まじい轟音と共に地面が揺れた。
シェルは衝撃で倒れそうになりながら音のする方向を見た。
島を護るように周囲を囲んでいた岩礁の一部が破壊されていた。
「大砲!? あんな物まで持ち出してきたのか!!」
「シェルタイト様!」
シェルの腹心たちが集まって来た。
「半数の人々は島から脱出させました。しかしこれ以上は無理です。クンツァイトの軍に島の周囲を囲まれてしまいました」
「まさか、クンツァイトがここまでやるとは! お前たちはクンツァイトの島への上陸を食い止めろ! 俺は残った者たちを森へ誘導するようセレスに伝えてから合流する!」
「シェルタイト様、それはっ!」
「非常事態だ! 已むを得ない。後の事は現状を打破してから考える! ……行けっ!!」
「御意!」
島の外壁の破壊、それはシェルにとって想定外の事態だった。
「シェルタイト様もう一つ。逃がしたのはほとんどが女、子供です。島の男たちは多分……」
「分かった、そういう事か。……多分セレスも其処に居る!」
この章のイラストはアナログです。
色紙に鉛筆で一発描きして水彩色鉛筆で塗ったものです。




