~第十一章~
「父はクンツァイトの屋敷からの帰り道に落石事故に遭いました。供をしていた者も全員事故に巻き込まれて亡くなったので、真相は分かりません。ぼくたちはクンツァイトの仕組んだ事だと思っているのですが、残念ながら証拠がありません。……悔しいです」
セレスは本当に口惜しそうだった。
しかし、気を取り直して――
「すみません、今はその事は置いておいて……。その時、実は父はまだ生きていたんです。意識はなかったと思いますが。その父を誰かが医師のところまで運んでくれたんです。ドアを叩く音がして外に出てみたら父が倒れていて、傍には誰も居なかったそうですが、父が一人で歩ける筈はないし。もし、それが……。 父を運んでくれたのがシェルだったとしたら……?」
そうなのかもしれない……と私は思った。
「でも、だったら何故シェルはあんな態度を取るんでしょう? ぼくたちをずっと見守っていてくれたんだとしたら、何故?」
それは私にも分からない。
私もずっとシェルは一族を憎んでいるのだと思っていた。
あの冷たい瞳と態度だけを見ていた時は。
その頃シェルもまた、“あの日”のことを思い出していた──
カルセドニーがクンツァイトとの和解の為にクンツァイトの屋敷に出向くと知った時、瞬間的に『罠だ!』と思った。
多分カルセドニー自身もその危険がある事は承知している筈だった。
それでも行くのか?
そういう男だという事は知ってはいるが……。
気取られないようにこっそりと後をつけた。
何かあったら何時でも対応出来るように、陰から護ろうと思っていた。
宴も無事に終わり、帰途に着いた。
それは一瞬の出来事だった。――突然の落石!
「父上っ!」
思わずそう叫んで駆け寄っていた。
護れなかったっ!
痛恨の想いだった。
だが、カルセドニーは絶命してはいなかった。
意識はなく、もう助からない事は分かっていたが――それでもカルセドニーを背負い、医師の許まで運んだ。
自分の姿を人に見られる訳にはいかない!
断腸の想いでカルセドニーから離れ、身を隠そうとした瞬間!
「……シェ……ル、すまな……かっ、た……」
そう聞こえた。
意識はない筈なのに……
話す力など残っている筈はない。
……なのに……!
気がつくと、涙が頬を伝っていた──
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「不味い事になりましたね」
「ああ。島の連中がカルセドニーの死の真相を探っているのは知っているが、まさかコーラルまでがな」
クンツァイトとその腹心アンバーは流石に焦っていた。
アンバーは常にクンツァイトの傍にいて、陰の部分を一手に引き受けていた。
強欲で狡賢く血も涙もない男だった。
「クンツァイト様、コーラルは兎も角……この際、島の連中には消えてもらいましょうか」
「おいおい! ……それは流石に不味いだろう!」
「いえいえ、理由なら後でどうとでもなります。死人に口無しですよ。フローライト王への謀反を企んでいた……とでも。証拠の捏造はお任せを」
「うう、む」
「それに、以前から小耳に挟んでいた事があるのですが……。どうやらあの島には“海人の遺産”が眠っているようなのです」
「海人の遺産、だとっ!?」
「はい。それを手にする事が出来れば世界を支配する事も可能だとか。それは流石に眉唾ものだと私も思いますが、あの島の連中は元々アクアオーラの王家一族。アクアオーラの隠し財宝があるのでは、と」
「…………」
「島の連中を皆殺しにして、アクアオーラ王家の財宝を手に入れられませ」
悪魔のような囁きだった。




