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集合!

 駅はクリスマスというだけあって、混んでいた。

 構内でさえ、ざっと見渡すだけで手を繋いでいるカップルや親子連れが多くみられる。

 もちろん一人で電車を待っている人たちもいるが、そういった人たちにこそ鬱陶し気な顔をしていることが多い。

 当然、リア充爆発しろ! みたいなことを考えているのだろう。

 電光掲示板には前々駅が明滅しており、電車はあと5分もすれば到着するらしい。

 俺は何をしているかというと、ボーっとしている。

 志崎も居るのは居るのだが、彼女は熱心にスマホを操作している。あの感じは誰かにメッセージでも送っているのだろう。

 こんなに早くゲーム友達の一人――Yuuこと志崎に出会ってしまって拍子抜けしていたのだが、あとはArataと合流しるだけ。

 ……Arataまでも女子だったらどうしようなどと頭を過るが、Yuuの中性的だった声に対して、彼の声は低めだったし、あれで女子ならだれも信用できないだろう。

 どんな顔で、どんな雰囲気なのだろう。リアルで会わない限り正確なことはわからないし、そのことだけで頭はいっぱいだった。

 要するにドキドキとソワソワが抜けきらないで緊張しているのだ。

 うっすらとのどが渇いている感覚があるし、何より心臓の鼓動が大きく聞こえるのがその証拠だった。

 そんな考えが俺の心を支配している間、5分経過していたのだろう。電車の接近アナウンスが響き渡り、乗客に向けた注意喚起が促された。

 到着した電車は案の定人が多い。

 通勤ラッシュよりかは少ないのだろうが、座席には座れそうにないし、壁際にも多くの人が立っている。

 服が触れ合うほどぎゅうぎゅう詰めな密着感はなさそうだが、やはり少し居心地が悪そうだ。


「やっぱり混んでるね。ごめんね、今日にしちゃって」


 志崎は小声になって申し訳なさそうにしているが、そこまでのことでもないだろう。


「いや、もし明日とかなら三人とも揃って当たってなかったかもしれないので、結果オーライですよ」


 スマホを操作するのを止めて俺のとなりに立って電車のドアが開くのを待っていた志崎を、先に入るよう促す。

 志崎は小さく「ありがと」と言うと、車内へ足を踏み出した。

 俺もその後に乗ると、喧騒とまではいかないが、やはり浮かれた雰囲気はあるようでカップルや女性同士の会話がちらほらと。

 目的地まで三駅乗る必要があるが、この感じだともう少し混みそうだな。

 そんなことを考えていると、やはり懸念は当たるものだ。

 二駅目から混み出した。降りる人も少なく、他の乗客と身体が触れそうなほどには狭い。

 俺はショルダーバッグを体の前に回して抱え直し、身を縮ませる。

 コートの裾に僅かな違和感を覚えた。

 ギリギリの可動域で顔を動かして下を見ると、志崎の指が俺のコートを掴んでいた。


「こっち」


 志崎は連結扉の前に陣取っていたらしく、そこに引っ張られる。


「ありがとうございます」

「どういたしまして」


 二人での会話は特に長くは続かず、静かになる。

 電車での会話はあまり推奨されてはいないが、つい会話を考えてしまう。

 ゲーム中、Arataが離席したり参加が遅かった時、何度も二人で会話していたはずなのだが……気まずさは拭えない。


「……ね、そんな緊張しないでいいのに」

「えと……」


 そんな俺の内心を見破っていたのか、迷惑にならない程度の小声で篠崎は呟く。


「あと、いつもみたいにタメ口にしてよ。あたしたちの仲じゃん」

「まあ善処はしま、する」


 慣れないことをするせいで、語尾がこんがらがって変なことになった。

 それを志崎は面白そうに含んだような笑い声を漏らす。


「うんうん、そっちの方がいいよ。Arataと会う前にマスターしないとね」

「……善処は、する」


Botみたいな会話しかできないのかと、我ながらツッコミを入れたいが、内心かなりキツキツだった。




「着いた……」


 どっと疲れた。

 学校は徒歩圏内だし、買い物に行くにしても近所に大きめのスーパーがあるしで、ほとんど電車に乗らない俺にとって、満員電車はまさしく苦行そのものだった。

 横を見ると篠崎は余裕そうな表情を浮かべ、スマホで時間を確認している。

 入場時間まで二十分ほどあるが、先に集合場所に向かっていても大丈夫だろう。何より気持ちが逸るのだ。


「Arata、五分くらいで着くって」


 志崎は俺にチャットを見せてくる。

 俺とYuuとArataでゲームをする際、専用のグループチャットがあるのだが、Arataはそこに到着時間と服装を記してくれている。


「じゃあ向かおっか」

「は、うん」


 慣れないせいで、先に「はい」が出かけた。

 志崎は一瞬じっと俺の目を見てきたが、何事もなさそうに先導し始める。

 道のりはそこまであるわけではなく、駅を出てからでも目的地ははっきりと見える。


「イベント帰りの人多いね~」

「そうだな」


 周りにはチラホラと、イベント会場でグッズを購入すると同時に配布されるオリジナルバッグを持って帰っている人たちを見かけていた。

 俺たちの前にも数組歩いているが、彼らもイベントへ向かっているのだろうか。


「やっぱり混んでるね」


 三分ほどで到着した。

 イベント会場は大型ショッピングモール。五階層で、上二層は駐車場となっている。

 ここには様々な商業施設がひしめき合っている。多いのは服飾関連だが、他にも本屋をはじめ、スーパーや飲食店などがある。さらには映画館すら入っている。

 時々移動露店が来ていたり、活気づいていたりする。

 二階の一角には様々なイベントが執り行えるブースがあり、俺たちの目指すイベントの他にも、二つ同時に開催しているようだ。


「でかい……」


 地元にもショッピングモールはあるのだが、ここまで大きくはない。

 全貌を外から見ただけで圧倒されてしまう。


「えっと、こっち。着いてきて」


 志崎はすごいな。こなれている。

 普段友達とよく遊ぶのか知らないが、マップも見ずに目的地へと向かっている。

 Arataは俺たちよりほんの少し早く到着したと連絡をもらっているし、待たせないためにも足早で進んだ。





「イケメンだ……」


 イケメンだ……。


「おーい、思ってることが口に出てるよ~」


 志崎のツッコミを受けてようやく我に返る。

 俺と志崎が目的地に到着すると、一人のイケメンが壁を背にしてスマホに視線を落としていた。

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