邂逅と正体
案の定というべきか、街はクリスマス一色だった。
右を見ても左を見ても、昼前だというのにネオンがきらめき、カップルや家族連れが行き交っている。
……少し、早く出すぎただろうか。
まあ無理もない。
誰かと遊びに出かけるのは初めてだし、普段は無頓着な服装にだって気を遣ったつもりだ。
白のハイネックに、砂色のダッフルコート。下はシンプルなジーンズに、紺のショルダーバッグ。
我ながら、無難すぎる組み合わせのコーデだな。
こうして早めに家を出たのは、久しぶりに外食でもしようと思ったからだ。
普段自炊しかしないのだから、今日くらい特別でも罰は当たらないだろう。
なかなかの浮かれ具合で、自然と足取りが軽くなる。
集合は十二時半。イベント会場への入場は十三時。
現在時刻は十一時。
今から昼食を取って電車に乗れば、ちょうどいい時間になるはずだ。
マップを開き、慣れない飲食店探しを始める。
思った以上に店は多い。
喫茶店や居酒屋、ラーメン、丼、カレー――選びきれないほどだ。
「あれ~? 幸村くんじゃん。こんなところでどうしたの?」
背後からの声。聞いたことのある、というか直近で話したことがある声だ。
振り向くと、そこにいたのはクラスメイトの女子――志崎紗奈だった。
「もしかして誰かと待ち合わせ? あ、デートだったりする?」
軽い調子でそんなことを言いながら、にこにこと笑っている。
……この人、本当に何を考えてるのかわからない。
「まあ、そんな感じですね」
曖昧に返すと、篠崎は変わらず笑みを浮かべたままほんの一瞬だけ、目を細めてみせた。
丁度そのタイミングで。
ポケットの中のスマホが、微かに震える。
「幸村くん、スマホ鳴ってるよ」
「あ、はい。すみません」
取り出して確認すると、チャットの通知。
送り主はYuuだった。
『@Arata 今日の服装は、グレーのオーバーサイズニットに膝丈の黒いプリーツスカート。アウターは少し短めの紺のウールコート。あとタイツ履いてるよ~。全体的に黒いから、待ち合わせ場所にいればすぐ分かると思う』
なぜか、Arata宛て限定のメッセージ。
まあ、現地に行けば分かるんだろう。
――いや、違う。
違和感はそこじゃない。
俺のコートは冬用の厚手である。
ポケットの中の振動なんて、俺ですらほとんど伝わらなかったはずなのに。
なのに、少し離れた位置にいた志崎が、それに気づいた?
このクリスマスで浮かれた街の騒がしさの中で?
……それに今のメッセージの内容。
スカートにタイツ。どう見ても女性の服装なのに、なぜか、頭の中でその恰好が鮮明に浮かび、結びつきかける。
意味がわからない。
思考が追いつかないまま、スマホを握りしめていると。
「どうしたの?」
くすり、と笑う気配。
「ムー。何か変なものでも見た?」
――その声。
通話越しで、何度も聞いてきた声と。
寸分違わず、同じだった。




