帰宅と出発4
ウェイがキレてしまった。場の空気が重くなった。
「何で今さら、戻ってきた?」
「そんなの俺の勝手だろ?自分で分かってんじゃん。俺は世界一のめんどくさがり屋だから、やりたい事しかやんねーの」
セネルは言い切った。そしてニヤッと笑った。それを見てウェイは、何を言っても無駄だと分かった。
「さっさと終らせよう、こんな事。先生、もう行っていいですか?」
「いいけど、忘れないで。ウェイ、君、あそこじゃ魔法使えないから」
ウェイはびっくりして固まった。師範は必死で笑いをこらえた。ウェイのこんな顔、初めて見る。セネルは気付いてない。
「え?」
「結界が張ってあるんだって。壊せば大丈夫だけど、それまで魔法は使えないよ。つまりそれまでは、君は戦力にならない」
セネルはわざと大きな溜息をした。ウェイが使い物にならないと知ってがっかりしたのだ。てか、めんどくさい。役立たずと一緒に行動するなんて。
「あと、もうひとつ。魔術師が一人、捕らえられているらしい。助けてあげて」
「嫌だ」
セネルが即答した。
「他人のことなんか知るか。そんな事してたら時間かかるし」
「ボーナス出るよ」
「よし、ちょっと頑張ってみるか」
セネルは張り切りだした。ウェイは呆れた。
行く前に床を拭いていると師範が言った。
「それから、敵のボスの名はバンドラ―ね」
「どうでもいいや、名前なんて。じゃあ行ってきます」
「ちょっと待ってよ、仕切るの僕」
席を立ったセネルを、ウェイが止めた。そしてそんな事を言われたセネルはぽかんとしている。
「何でっ!?」
「年上だから」
「それだけ?早く生まれたから偉いとかあるの?」
セネルには常識がない。師範は、2人がこれ以上ケンカしませんようにと願いながら皿をてきぱきと片付けていた。
その後一つ提案した。
「出発する前に着替えなさい」
「そうですね、特にセネル君は」
「何でだよ?」
「「ダサいから」」
ウェイと師範が同時に言った。セネルに何か言われる前に、ウェイは自分の部屋に戻った。
シャツもズボンもモノトーンで統一する。その上に白いローブ。片手には木でできた長い杖。最後に道具を入れるポーチの付いた緑のベルトを腰に巻く。
「これでよし」
ウェイは鏡を見て、こげ茶の短髪にゴミなどがついてないか確認した。一応20歳、身なりに気を使わなくては。
さっきの食堂に戻ると、師範と知らない人が立っていた。
「どちら様?」
「俺だよ」
セネルのようだ。気が付かなかった。だって服が違う。
オレンジのタンクトップに、ダメージ加工された青いジーンズ。黒くてゴツいベルトとブーツ。手には革のグローブ、さらに腕輪がじゃらじゃら付いていた。




