帰宅と出発2
――王立武道道場――
師範は誰よりも早起きであった。
「ウェイ、起きなさい。今日はセネル君が来るはずだよ」
まるで自分の息子を起こすように、師範はウェイの部屋に声をかけた。
ウェイは自分の寝室から出てきた。
「なんだ、起きてたのか!」
「あいつ、ほんとに来るんですか?」
道場の隣にある師範の家で、二人はセネルを待っていた。本当なら、セネルは昨日の夜に着くはずだった。ウェイがイライラしているのも当然だ。
「来るでしょ。一応、王様の命令なんだからね。君も一年ぶりに会えて嬉しいでしょ?」
師範の質問を無視し、ウェイはトイレに入った。師範も返答に諦め、着替えるために部屋に戻った。大体、聞かなくても分かるし。ウェイの本音は常時以心伝心だ。
「懐かしいな。セネル君、16歳になってるのか」
「すいませーん」
セネルの声だ。玄関から聞こえる。
ウェイのトイレを待っているわけにはいかないので、師範が出た。
玄関前には、細身で筋肉質の少年がいた。この女の子っぽい顔、セネルで間違いない。
「よっ、来たな」
「お久しぶりです、先生。あいついる?」
敬語とタメ語を両方使ってセネルは聞いた。
「トイレに引きこもってる。」
「よりによって、そんな臭いところにか」
「僕はヒッキーじゃない!!」
ウェイのご登場だ。セネルは手を振ってあいさつした。
「あっ、いきなりだけどさ、部屋貸して。寝てないから眠いんだよ。昼に起こして」
徹夜で歩いて遅れるなよ、とウェイはツッコミたかった。が、すでにセネルはウェイの部屋に直行していた。まだ貸すなんて一言も言ってないのに。いつもすぐいなくなる奴だ。
「自分勝手な奴」
「何も変わってないね、彼。道場にいたころから、勝手に休んで、ご飯食べて、
バスケし始めるとんでもない弟子だった。でも不思議なことに、彼が弟子の中で一番強かった。」
師範の独り言でウェイはむっとした。
「どうせ聖術師の僕なんかじゃセネル君にはかなわないよ。それとも攻撃系の戦闘職になってた方が良かったですか?」
「何言ってるんだ、ウェイ君。サポート系の人間は、長期戦の時必要な存在だよ」
ウェイは無言で、歯磨きをするため洗面所に行った。




