第一章16 お釣りで飛んで、バグに呑まれて
――キィィィィィン……ピピ、ガガガガガガガガッッッ!!!
百匹近いバグ魔物の大軍勢が四方八方から襲いかかる中、俺はアリアを胸元へと抱き込み、右手のフリクションペンを引き抜いた。
「アリア、耳を塞いで目を瞑ってろ。2周目の俺の、お会計のスケールを舐めるなよ。」
カチリと音を鳴らした俺は、ペンの後ろのラバーをバグ魔物たちのいる地面へと押し当て、『素早さ:941』のトリガーを引き絞る。
「ちょっとカナタァァァッ!?命がけの死闘の真っ最中に、何で地面に向かって必死に大掃除を始めてるのよおおぉぉぉっ!?」
――シュババババババババババッ!!!
およそ文房具を動かしているときには鳴り響かないはずの、凄まじい超音速の衣擦れの音が路地裏に爆ぜる。
爆音となって響き渡る俺の超高速駆動に、周囲を取り囲んでいたバグ魔物たちが一瞬ピクリと動きを止めた。
アリアのキレのある絶叫ツッコミが俺の耳元で炸裂するが、今の俺にはブレーキを踏んでいる余裕なんて1ミリもない。
左腕でアリアの華奢な身体をこれ以上ないほど強く抱き寄せ、その柔らかい体温を胸元に感じながら、俺は右手の「素早さ:941」のトリガーを完全に引き絞っていた。
残像なんてレベルじゃない。
俺の右腕はすでに何百本もの千手観音のごとくブレて空間を埋め尽くし、路地裏の古びたレンガの床を猛烈な勢いで「ゴシゴシ」と大掃除し続けている。
ルネさんの店で貰ったばかりの『精霊の落とし物』の摩擦抵抗ゼロ膜。
それが、俺の放つデタラメな腕力とペンの半透明ラバーに巻き込まれ、俺の周囲にだけ局地的なバグ中和領域を作り出していた。
ガガガガガガガッ!と、時間軸を完全に無視した不規則なコマ送りのワープで飛びかかってきた、バグ狼の鋭い爪が俺の頭上わずか数センチを切り裂く。
だが、その爪が俺の肌に届くことは絶対にない。 なぜなら、俺がペンを走らせるたびに、地面の石畳、レンガの隙間、さらには空間にドロドロと漂う赤黒いノイズの粒子にいたるまで、異常な摩擦熱によって瞬時に「透明化」され、真っ白な虚無の領域へと還元されていたからだ。
──ジュワァァァァァァァッッッ!!!
凄まじい白煙と、現代日本のフリクションインクが熱で消滅するときの、あの独特な化学反応の匂いが路地裏に立ち込める。
「な、何よこれ!カナタが床を擦るたびに、襲ってきた魔物の足が、下から順番に消えていってるわ……っ!?」
アリアが驚愕に水色の瞳を血走らせる。 百匹近いバグ魔物の大軍勢が、四方八方から物理法則を無視した噛みつきを繰り出してきていた。
しかし、彼らの着地先である地面のデータは、すでに俺の手によってことごとくデリートされていた。
空間がドット単位で四角く欠損していた影這い狼が、空中で前足からサラサラと灰色のチリになって消えていく。
上空から残像を左右に激しくブレさせながら滑空してきたエラー変異種の怪鳥も、俺の生み出した摩擦熱の暴風に巻き込まれた瞬間、羽のモザイクごと全消しされて虚空へと溶けていった。
「そこだ!どんどんいくぞ!」
俺はさらにフリクションペンの速度を加速させた。右手のラバーがレンガの地肌を捉えるたび、パチパチと音を立てていた赤黒いエラーノイズが、まるで消しゴムで消されるように跡形もなく消滅していく。
歩くたびに物理演算をバグらせ、地面を泥のように陥没させていた巨大な岩石の魔物が、俺の足元へと地響きを立てて迫る。
だが、その巨大な質量が俺に触れるより早く、俺の「素早さ:941」による神速の往復運動が、魔物の足元の地面のデータを根こそぎ消去した。
「グル、ル……ガガッ!?」
支えを失った岩石の魔物は、不気味なノイズ音を上げながら、存在の根底からサラサラと灰色の砂へと還り、そのまま虚空へと吸い込まれるように消え去っていく。
圧倒的な、数の暴力に対する概念的な全消し無双。 アリアが腕の中で驚愕のあまり絶叫する中、あれほど路地裏を埋め尽くしていたバグ魔物の大軍勢は、ものの数十秒でその九割近くが足元から綺麗に消去され、光の塵すら残さず消滅していった。
周囲のレンガの壁を覆っていた赤黒い光の壁も嘘のように霧散し、澄んだ五月の爽やかな青空が、再び路地裏の隙間から覗き始める。
「ふぅ……よし。大体片付いたな、アリア。」
俺はフリクションペンをカチリとノックしてペン先を引っ込め、満足げに不敵な笑みを唇の端に吊り上げた。
腕の中のアリアを見つめると、彼女は涙目で口を金魚のように開閉させ、完全に思考停止していた。
「……信じられない。百匹のバグ魔物が、ただの『地面の大掃除』で全滅するなんて……。でも、よかった。本当に、これで助かったのね……?」
アリアは今日何度目になるかわからない溜息を漏らしながらも、本当に心底ほっとしたように胸を撫で下ろし、掴んでいた俺の黒い上着の袖から、少しだけ強張っていた力を抜いた。
ここまでは、完全に俺たちの優勢。
理不尽な『オール941』のステータスと、現代日本の文房具のバグパワーが、世界の不条理を完璧に上書きしてねじ伏せた、最高のハッピーエンド……のはずだった。
──ピキィィィィィンッッッ!!!
突如として、俺たちの足元から、これまで聞いたこともないような、心臓を直接冷たい氷の刃で突き刺されるかのような不気味な電子エラー音が鳴り響いた。
「……え?」
アリアの白い顔から、一瞬で血の気が引いていく。
見ると、俺が猛烈な勢いでフリクションペンを擦りつけ、バグ魔物ごと「全消し」してしまった路地裏の地面――。
そこは、単に汚れが落ちて綺麗になったわけではなかった。
俺の「素早さ:941」という理不尽な不条理と、摩擦抵抗ゼロの膜が、世界のシステムデータを削り取りすぎてしまっていたのだ。
──ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!
レンガの床の、俺が擦ったまさにその中心点が、限界を超えた負荷によってボロボロと四角くモザイク状に崩壊し始めた。
それは魔物が湧き出る時のノイズではない。
世界という名のプログラムそのものが、そこに存在するはずの「地面の座標データ」を見失い、底なしの『エラーの穴』を形成し始めている音だった。
「カナタ……っ!?床が、床のデータが完全に消えて、下に見えるはずの地下水道じゃなくて……真っ暗な虚無が広がってるわよ……っ!?」
アリアが恐怖に水色の瞳を血走らせ、俺の黒い上着の首元を、千切れるほどの力でギュッと掴んで離さなくなった。
崩壊の連鎖は止まらない。
俺たちの立つわずか数センチ後ろの石畳が、ベキベキと音を立てて四角いモザイクへと変わり、そのまま底のない暗黒の深淵へと吸い込まれるように崩れ落ちていった。
「やべえ、やりすぎた……!地面のデータを根こそぎ消去しすぎて、世界のシステム自体に致命的なクラッシュの穴が開いちゃったわ!」
「開いちゃったわ!じゃないでしょおおぉぉぉっ!?だからノックもトントンもダメって言ったのに、地面ごと世界を消し去ってどうするのよバカカナタァァァッ!!」
アリアのキレのある絶叫ツッコミが響くが、床の崩落の速度は、俺たちの想像を遥かに超えていた。
ガシャァン!!!と、俺たちが立っていた最後のレンガの一画が、ついに音を立てて完全に崩壊する。
「ひゃぅっ!?」
足場を完全に失い、俺とお姫様抱っこされたアリアの身体は、重力の法則に従って、その真っ暗な世界の裂目――奈落の深淵へと、真っ逆さまに落下していった。
周囲の景色が、もの凄い速度で上へと流れていく。
上を見上げれば、旧区画の路地裏の青空が、みるみるうちに小さな四角い光の破片となって遠ざかっていくのが見えた。
「カナタ……っ!!」
アリアが恐怖に怯え、俺の胸元に必死に顔を埋める。
手首の深海真珠のブレスレットが、激しい落下の風圧の中で、悲痛な音を立ててシャランシャランと鳴り響く。
真っ暗な虚無の底からは、ゴオォォォという、魂を凍らせるような冷たい風の音が、俺たちの肉体を容赦なく吸い込もうと吹き上げてきていた。
だが、本当のピンチはここからだった。
──ピピ、ピピピピピピ……ガガガガガガッッッ!!!
落下していく暗黒の空間の壁面から、またしてもあの悍ましい電子ノイズが鳴り響いたのだ。
「嘘……、まだいるの……っ!?」
アリアが顔を上げ、絶望に満ちた声を漏らす。
暗闇のあちこちで、チカチカと不気味に赤黒く明滅する三つの眼球が、一斉に開き始めた。
それは、さっき地上で全消ししたはずのバグ魔物たちの、さらに下層に潜んでいた『第二陣』――いや、この世界の底なしのエラーデータの塊そのものだった。
それも、地上にいた奴らとは格が違う。
全身がバグのモザイクで肥大化し、もはや原型を留めていない巨大な多頭のバグ蛇や、空間を不規則にワープしながら俺たちの落下軌道を先回りする、エラー変異種の巨大な蜘蛛たちが、暗闇の中から無数に這い出てきている。
空中という、俺の『素早さ:941』のステップが全く使えない最悪の状況。
しかも、落下速度はどんどん増していく。
キィィィィィンッ!と、先回りした巨大なバグ蜘蛛が、落下してくる俺たちを目がけて、赤黒いエラーノイズを帯びた粘着糸を網の目のように放射した。
触れれば肉体データごと侵食され、一瞬で消滅しかねない最悪の罠。
「カナタ、危ない……っ!」
アリアが叫ぶ。
俺は咄嗟に、自分の身体を空中で反転させた。
左腕でアリアの頭をしっかりと抱え込み、彼女の身体を自分の胸の下へと完全に隠す。
俺の『防御力:941』のバグ補正が、俺の肉体を世界で最も頑丈な盾へと変える。
──ズガァァァァァンッッッ!!!
背中に、エラー蜘蛛の糸が直撃し、強烈な衝撃と赤黒い火花が爆散した。
激しい寒気と、脳を直接かき回されるようなノイズの不快感が背中から全身へと駆け抜ける。
いくら防御力が神話級の数値に固定されているとはいえ、世界の不条理そのものであるエラーノイズに直接触れ続ければ、徐々にそのステータスすらも泥のように重く侵食されていくのが感覚で分かった。
「ぐっ……、この、しつこい泥棒猫どもが……っ!」
「カナタ!?大丈夫!?背中が、背中の服がノイズでチカチカしてるわよ……っ!」
アリアが俺の胸の中で、涙目になりながら本気で俺の身を心配して叫ぶ。
彼女の白いキュロットスカートや淡い水色のブラウスが、風圧で激しくバタバタと音を立てていた。
空中では、フリクションペンで地面をゴシゴシ擦る大掃除の裏技も使えない。
足場がないため、摩擦熱を発生させる対象がどこにもないのだ。
さらに悪いことに、下層からは巨大な多頭のバグ蛇たちが、大きな顎を限界まで広げ、落下してくる俺たちを一飲みにしようと、暗闇の奥から一斉に突き上げてきていた。
上からは無数のエラー蜘蛛の糸、下からはバグ蛇の巨大な顎。
空中での自由を完全に奪われ、世界のシステムクラッシュの穴の中で、俺たちは文字通り逃げ場のない完璧な包囲網の中へと叩き落とされようとしていた。
1周目の俺のログにもない、完全な初見の絶望的ピンチ。
俺のポケットの中の『幸運:941』すらも、この空中という因果関係を構築できない空間では、連鎖事故を起こすための小道具が一つもなく、完全に沈黙してフリーズしていた。
――ガガガ、ギギギギギッッッ!!!
奈落の闇を、エラー魔物たちの咆哮が埋め尽くす。
上からは視界を塞ぐほどのバグ蜘蛛の糸、下からはすべてを噛み砕かんとするバグ蛇の顎。
自由を奪われた空中での落下という最悪の状況で、俺の『防御力:941』の防壁すら、まとわりつくノイズのデータ肥大化によって徐々にエラーを起こし始めていた。
「カナタ……カナタっ!だめ、これ以上私を庇ったら、カナタのステータスまで完全に壊されちゃう……っ!お願いだから私を放して、カナタだけでも上へ……っ!」
胸元で、アリアが俺の黒い上着を涙で濡らしながら必死に叫ぶ。
怪我をしているはずの細い両腕で、今度は俺の身体を突き飛ばそうと、健気にもありったけの力を込めて押し返してくる。
世界がどれほどバグに侵食されようとも、どこまでも他人の心配ばかりする、優しすぎる俺の相棒。
その小さな手のひらの温もりが胸に伝わった瞬間、俺の脳裏の、手帳のログのさらに奥にある、魂の領域がゴウッと怒りの焔を燃え上がらせた。
「放すわけねえだろ。お前を忘却の底から見つけ出すって、昨日約束したばかりだぞ……!」
だが、現実は非情だった。
下から突き上げてくる多頭のバグ蛇の巨大な顎が、ついに俺たちのすぐ足元にまで到達する。
赤黒いノイズを放つ無数の牙が、俺たちの肉体をデータごと噛み砕こうと、一斉に閉じられようとした。
足場はない。
ステップも踏めない。
連鎖を起こす小道具も存在しない。
完璧な、詰み。
世界のシステムが、不正データである俺たちを完全に『消去』しようと、最後の審判の如きエラー音を最大ボリュームで響かせる。
その時だった。
俺の『幸運:941』という理不尽のバグが、この逃げ場のない奈落の底で、あり得ないピタゴラスイッチの最後のピースを強引に引き寄せた。
──ジャララララララララッッッ!!!
激しい落下の風圧の中、俺の左手に下げられていた、あの黄色いホンペン柄のホン・キホーテのレジ袋から、何かが激しく飛び出した。
それは、さっき中央大通りの両替所で、幸運バグの自動収納によって袋の底へと弾丸のように吸い込まれていった、あの大銀貨941枚の詰まったずっしりと重い大袋だった。
激しい風圧によってレジ袋の口が大きく開き、大銀貨の袋の紐が偶然にも、上空から降り注いでいた無数のエラー蜘蛛の糸にガチリと絡みついたのだ。
「……え?」
アリアが驚愕の声を漏らす。
上空の蜘蛛の糸に引っかかった大銀貨の袋が、俺たちの落下速度による凄まじい引っ張りエネルギーを受けて、その場でパァァァン!!!と派手に爆裂した。
中から解き放たれたのは、最高純度の銀で作られた、ずっしりと重い大銀貨941枚の大雨。
それが、重力の法則に従って、俺たちの周囲を並走するように凄まじい速度で落下し始める。
「大銀貨が……お釣りが、何でこんなところでバラ撒かれてるのよおおぉぉぉっ!?」
「アリア、文句は後だ!1周目の俺のやらかしを超えた、2周目の大盤振る舞いのお会計といこうじゃねえか!!」
俺の視界が、瞬時にスローモーションへと切り替わる。
周囲を凄まじい速度で落下していく、大銀貨941枚のきらびやかな輝き。
足場がないなら、今ここで、このお釣りの雨を足場にしてハッキングしてやるまでだ。
「いくぞ……『素早さ:941』、限界突破ァァァッッッ!!!」
俺は右手に握りしめていたフリクションペンのノックを、カチリと本日最大級の音で鳴らした。
迅速に思考を加速させ、空中で並走して落下する大銀貨の1枚へと、右足のつま先を伸ばす。
──キンッ!!!
俺の足裏が銀貨に触れた瞬間、世界の物理演算を書き換える『幸運』の補正により、ただの硬貨が神話級の質量を持った完璧な空中足場へと固定された。
そこからの俺の挙動は、もはや生物の領域を完全に逸脱していた。
空中を落下する941枚の大銀貨を、一歩、また一歩と超高速のステップで踏み締めながら、俺はアリアを抱いたまま、奈落の闇の中を縦横無尽に跳躍し始めたのだ。
──キィィィィィンッ!シュババババババババババッッッ!!!
弾丸のような速度で暗闇を駆け、先回りしていた巨大なエラー蜘蛛の顔面に回り込む。
俺は右手のフリクションペンをひっくり返して、その半透明のラバーを蜘蛛の頭部のバグ文字へと力任せに叩きつけた。
「オラァッ!まとめて全消し大掃除だぁぁぁッッッ!!!」
──ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシッッッ!!!
空中を激しくステップしながら、何十本もの残像となった俺の右腕が、エラー蜘蛛の顔面を猛烈な勢いで擦り上げる。
凄まじい摩擦熱。
局地的な太陽の如き熱量が暗闇を真っ白に照らし出し、無敵を誇っていた巨大蜘蛛の肉体が、頭部からジュワァァァァァッ!と煙を上げて透明化し、そのまま存在ごと消滅していく。
「嘘……嘘でしょカナタ!?お金を踏み台にして空中を走り回りながら、ペンで魔物を消し去っていくなんて、お会計のスケールが不条理すぎて意味がわからないわよおおぉぉぉっ!?」
アリアのキレのある絶叫ツッコミをBGM代わりに、俺はさらに銀貨の雨を蹴り上げた。
上空の蜘蛛たちを瞬時に全消しデリートすると、今度はお釣り硬貨のステップをさらに加速させ、下層から大きな顎を広げて迫る多頭のバグ蛇の群れを翻弄するように空中をジグザグに飛び回る。
だが、さすがは世界のシステムエラーそのものであるバグ魔物の大軍勢。
上層の蜘蛛が消されたことを感知したのか、多頭のバグ蛇たちがさらに赤黒いノイズを激しく明滅させ、その巨大な質量を歪にうねらせながら、逃げ場のない空中を完全に埋め尽くそうと一斉に触手を伸ばしてきた。
チカチカと不気味にエラーを爆ぜさせる無数の牙が、俺たちの全方位から完全に逃げ道を塞ぐように包囲網を狭めていく。
いくらお釣りの雨を足場にできるとはいえ、魔物たちの密度そのものが、俺たちの回避ルートを力任せに潰しにかかっていた。
──グル、ル……ガガガガガガッッッ!!!
世界の処理落ちによる泥のような重圧が、再び俺たちの肉体を強烈に締め付け始める。
まだ下層に潜む主のような巨大な影が、奈落の奥底でその悍ましい三つの目をギラリと開くのが見えた。
空中のお会計無双によって一時的に優勢に立ったものの、底なしに湧き上がるバグデータの真の恐怖が、今まさに俺たちを本当の窮地へと追い込もうとしていた――。
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