路上の宴
もう戦争も終わりだ。
隣国が攻め込んできて、王室も貴族も、完全に崩壊したらしい。
王都に攻め込んできた時には路地裏やらその辺の建物やらから、時折叫び声が聞こえてきたりしていたが、まあ俺には関係ねえ。
比較的平和だったんじゃねえか?王都陥落にしてはよ。
なんせ、もう崩壊しかけてたんだからな。
スパイが大量に入り込んでいたって噂だし、やりやすかったんじゃねえか?
おかげで無駄な争いが多発しなくてむしろ平和だな。
その隣国も、何やらどこかから攻められてピンチとかで、兵士の大半はどっかに行っちまった。
正直、お偉いさんがどうなろうと知ったことではない。
また誰か、新しいお偉いさんが、俺ら民衆から搾取するんだろう。
今は、束の間の自由ってやつか。
大通りの真ん中で肉焼きに勤しんでも、今なら誰も文句を言わねえ。
なんせそこらじゅうで焼けてんのは、肉だけじゃねえからな。
それに、しばらくは税金も取られねえ。
まあ、元から路上生活している俺には、なんの関係もねえけどな。
今日は祭りだ。
どこぞの貴族の倉庫から強奪してきた肉をみんなで山分けだ。
これを祭りと言わずになんというんだ。
祭りってのは、みんなででっけえ火を囲んで、ご馳走を食う日のことをいうんだ。
少なくとも、俺の故郷の村ではそうだったぜ?もうとっくの昔に、滅んじまったがな。
平等ってのはいい。
みんな仲良く底辺だ。
こっち側にウェルカムだ。
仲良くやろうぜ。
俺は気前がいいんだ。懐が暖かい時にはな。
今なら分前もやるよ。
貴族街は宝の山だ。今やこの民衆の食糧庫だ。
昨日も祭り、今日も祭り、明日も祭りなら、きっと明後日も祭りだろう。
食いもんがなくなったらどうすんだろうな?
いやわかってる、みんな薄々感じている。
今後どうやって生活していけばいいんだなんて不安は、全員が思っているところだ。
今はまだなんとかなっている。
腐っても王都だからな。
だが物乞いをやろうにも、乞う相手がいねえんじゃ仕方ねえ。
これまで通りの生活はできねえだろうよ。
田舎に逃げていったやつもたくさんいるな。
だがよ、今ここで何かして、なんになる。
結局、国は滅んじまったんだ。
どうしようもねえじゃねえか。
隣国だか誰だか知らねえが、いずれここを支配して治める奴が出てくるさ。
それまで、束の間の自由を楽しもうぜ?
……そうだと思っていたのに。
ああ、俺らは甘かった。
この街に残った全員が、甘かったんだ。
お偉いさんが変わって、少しずつ王都も復興して。
俺らはできることをして暮らしていく。
底辺だった俺も、どこかで仕事を見つけて、いずれは所帯でも持てたら万歳だ。
そんなふうに、想像していたんだがな。
吊るされた首、荷台へ無造作に積まれた隣人、すっかり聞こえなくなった女たちの声。俺はそれを、なるべく見なかったことにした。
奴らも人間だ。
人間だが、言葉もわからない、風習も違う、信じる神すら違う者たちがやってくる。そんな奴らが、俺らの上に立つことの意味を、そこで初めて知ったんだ。
いや違うな。
俺は奴らも人間だと思っていたけれど、奴らはそうでもなかったみたいだ。
それに。
そもそも……人間じゃねえ奴までやってくるなんて、そんなの一体誰が想像できたんだ?
長く、平和すぎたんだよ。この王国、だったところはな。




