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ある王国の陥落  作者: みやぴー
第三章

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7/10

路上の宴


 もう戦争も終わりだ。

 隣国が攻め込んできて、王室も貴族も、完全に崩壊したらしい。

 

 王都に攻め込んできた時には路地裏やらその辺の建物やらから、時折叫び声が聞こえてきたりしていたが、まあ俺には関係ねえ。

 比較的平和だったんじゃねえか?王都陥落にしてはよ。

 なんせ、もう崩壊しかけてたんだからな。

 スパイが大量に入り込んでいたって噂だし、やりやすかったんじゃねえか?

 おかげで無駄な争いが多発しなくてむしろ平和だな。

 

 その隣国も、何やらどこかから攻められてピンチとかで、兵士の大半はどっかに行っちまった。

 

 正直、お偉いさんがどうなろうと知ったことではない。

 また誰か、新しいお偉いさんが、俺ら民衆から搾取(さくしゅ)するんだろう。

 

 今は、束の間の自由ってやつか。

 大通りの真ん中で肉焼きに勤しんでも、今なら誰も文句を言わねえ。

 なんせそこらじゅうで焼けてんのは、肉だけじゃねえからな。

 それに、しばらくは税金も取られねえ。

 

 まあ、元から路上生活している俺には、なんの関係もねえけどな。

 

 今日は祭りだ。

 どこぞの貴族の倉庫から強奪してきた肉をみんなで山分けだ。

 これを祭りと言わずになんというんだ。


 祭りってのは、みんなででっけえ火を囲んで、ご馳走を食う日のことをいうんだ。

 少なくとも、俺の故郷の村ではそうだったぜ?もうとっくの昔に、滅んじまったがな。


 平等ってのはいい。

 みんな仲良く底辺だ。

 こっち側にウェルカムだ。

 仲良くやろうぜ。

 俺は気前がいいんだ。(ふところ)が暖かい時にはな。

 今なら分前もやるよ。


 貴族街は宝の山だ。今やこの民衆の食糧庫だ。

 昨日も祭り、今日も祭り、明日も祭りなら、きっと明後日も祭りだろう。

 食いもんがなくなったらどうすんだろうな?

 

 いやわかってる、みんな薄々感じている。

 今後どうやって生活していけばいいんだなんて不安は、全員が思っているところだ。


 今はまだなんとかなっている。

 腐っても王都だからな。

 だが物乞いをやろうにも、乞う相手がいねえんじゃ仕方ねえ。


 これまで通りの生活はできねえだろうよ。

 田舎に逃げていったやつもたくさんいるな。

 

 だがよ、今ここで何かして、なんになる。

 結局、国は滅んじまったんだ。

 どうしようもねえじゃねえか。


 隣国だか誰だか知らねえが、いずれここを支配して治める奴が出てくるさ。


 それまで、束の間の自由を楽しもうぜ?


 


 ……そうだと思っていたのに。


 ああ、俺らは甘かった。

 この街に残った全員が、甘かったんだ。

 

 お偉いさんが変わって、少しずつ王都も復興して。

 俺らはできることをして暮らしていく。

 底辺だった俺も、どこかで仕事を見つけて、いずれは所帯でも持てたら万歳だ。

 

 そんなふうに、想像していたんだがな。

 

 吊るされた首、荷台へ無造作に積まれた隣人、すっかり聞こえなくなった女たちの声。俺はそれを、なるべく見なかったことにした。

 

 奴らも人間だ。

 人間だが、言葉もわからない、風習も違う、信じる神すら違う者たちがやってくる。そんな奴らが、俺らの上に立つことの意味を、そこで初めて知ったんだ。

 

 いや違うな。

 俺は奴らも人間だと思っていたけれど、奴らはそうでもなかったみたいだ。


 

 それに。

 そもそも……人間じゃねえ奴までやってくるなんて、そんなの一体誰が想像できたんだ?

 

 長く、平和すぎたんだよ。この王国、だったところはな。




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