表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある王国の陥落  作者: みやぴー
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/10

宿屋の主人の独白


 そう、ちょっと前からその兆候(ちょうこう)はあったんだ。

 見て見ぬふりをしていた。

 いや、見なかったわけじゃない。

 ただ、不穏(ふおん)な会話を聞いていても、通報しなかった、それだけだ。


 通報したからって何か変わっただろうか?

 それでお(とが)めなしだったら、危なかったのは自分の方なんじゃないか?

 黙っていたから、一時的とはいえ、空前の繁盛をしていた。まるで祭りの週のように。


 だけどそう、今は、後悔している。

 燃え盛る、思い出の詰まったこの宿屋の主人は俺だ。もう涙すら溢れてこない。


 悪逆の限りを尽くす国王が討ち取られたと、この王都が大騒ぎになったのはつい最近のことだ。

 確かに、あの国王になってから、少しずつこの国は貧しくなっていたように思う。

 俺の目からみれば、噂になっているように、悪逆の限りってほどじゃあなかったように見えるがな。

 しかしまあ、誰か、国王のせいで苦しんでいる人がいたことは、きっと事実だろう。そんなのは、いつの世だってそうだ。

 

 それから数日、王都は熱狂に包まれていた。

 次の王が誰なのか、みんな気にはしていたが、誰も、どうやって決まるかなんて知らなかった。

 ただ悪が討ち取られた、しかも勇者によって。

 そのことが民衆を歓喜させた。具体的に何があったのかを、その目で見たわけではないのにな。

 今後の生活が良くなるだろうという、根拠のない楽観に包まれていた。

 討ち取った勇者が王にでもなるんじゃないかって、半分くらいの人はそう考えていたな。

 

 だがしかし、状況が悪化したのは数日前。

 隣国の軍勢が攻め込んでくるのだという噂が広がった。

 一気に不穏な空気が立ち込めた。


 買い占め、避難、暴動。王都は大混乱に見舞われた。

 そこでようやく気がついたんだ。攻め込んでくる隣国の、あの特徴的な発音。まさに宿が大繁盛していた時に、よく聞こえてきたものだった。

 嘘か本当かわからないが、隣国のスパイがたくさん王宮に紛れていたって、そんな噂も流れてきた。

 つまり、俺の宿に長期で泊まっていた、あの気の良さそうな男たちは……。


 でももう、手遅れだ。祭りの雰囲気から一変、貧困に(あえ)ぎ、手当たり次第に強奪をする暴徒たちは、熱狂の渦の中にいて、ついには目についた建物に火を放つようになってしまった。

 俺の店も、もうおしまいだ。

 せめて家族を避難させられただけでも救いか。

 しかし、これからどうやって生きていけばいいんだ。

 これから隣国の軍がやってきたら、我々も皆殺しにされるのではないか。

 そう思うと恐怖で震えてくる。


 頼みの勇者はというと、次の正義の鉄槌を下すために、もう王都を離れたらしい。

 誰か、俺にどうしたらいいか教えてくれ。

 家もなく、仕事もなく、これから武器を持った敵が攻めてくる。


 ここに留まるのが正解だろうか?それともどこかに向かうのが正解だろうか?


 守らねばならぬ家族を引き連れて、どこへ向かえばいいのか、誰も教えてくれない。

 王もいない。兵もいない。勇者もいない。


 

 これからやってくるのは、俺が泊めた連中が開けた道を進んでくる、奴らの軍だけだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ